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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season2 ダンジョンマスター
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戦後処理と鑑定の石板

「今回の戦い大変な功績であり褒めてつかわす……それでは、申し開きを聞こうじゃないか」


 センタクル城内のお祭り騒ぎから、一夜が明け報告会が開始された。そして、素晴らしい戦果ではあるが『明らかに』やり過ぎた者たち、それをコントロールするべきだった者への懺悔の時間だ。

 一応領主として配下のコントロールを出来てなかった自分にも落ち度はあるので当然反省した。

 森の火事の件は、ガッサム将軍をめちゃくちゃして怒った兵の報復だろう。互いに一線を超えた戦いとなりそれなりの損害が出てしまったのだ。


「大変申し訳ありません。現場の指揮をしていた私の責任でございます」


 オーガが前に出て跪き、謝罪をする。神妙な顔をしているが本当は何を考えているのやら未だに分からない男だ。


「この戦いの背景に何があるのかを探るべく、情報を入手するのに向いた者を送りました。ロギー、ズギーはやる気を見せていたので、こちらも小手調べとして命令致しました。具体性のない命令であり、何をするのかに関して事前の打ち合わせを入念に行うべきでした」

「……良し、では今後はどうするべきか、どうしたら良くなるのかについて述べてみよ」

「はい。作戦の実行をする前には連絡を取り、上層部への確認、そして指示系統の整備と命令通りの行動をするように教育を徹底します」

「では次からはすぐに私に何かあれば連絡して確認を取れ。失敗は許す。挑戦も許す。しかし失敗を隠すことは許さん」

「ご容赦くださいまして、ありがとうございます」


 何故、失敗が起こったのか。それを言語化させる必要がある。そして失敗に対しては注意はするが理不尽な態度を取ってはいけない。失敗を恐れ、及び腰になり隠蔽される方が困る。失敗してもリカバリー出来るようなシステムを作らないといけない。


 この辺りの問題はオーガは元々フィッツの人間であり、テルノアールのやり方をしっかりと教えていなかったという忙しさにかまけて、やるべきことの先延ばしをしたことに問題があった。

 これからは、より優れた組織を作るという下地の部分をゆっくりと確実に育てていきたい。


「ロギー、ズギー、何か言いたいことはあるか」

「いえ、ございません。おっしゃる通りであり、我々は些か調子に乗りました。今までの個人レベルの仕事と他国との戦争中への対応の仕方、影響の範囲などを考慮していなかった結果であり、甘んじて処罰を受け入れます」

「うむ。二人がもたらした情報は非常に貴重だ。今後のテルノアールの影響力にも関係するほどのものを持ち帰った。しかし、多くの味方を危険に晒し、実際に被害を受けたというのも事実。公平な判断をする為、専属の部下を与え、医療部門を担当させるつもりであったがその件に関しては保留とし、報酬も罰もなしとする」

「寛大な処置に感謝します」


「そして、テルン、コンテヌ」

「ほい」

「……はい」

「二人のお陰で多くのテュロルドの民が救われた。もう少しで城が落ちるところだったと聞いた。その点については感謝する。だが、もう少し他の兵たちと連携を取れ。いきなり戦場に飛び出すな。味方すら混乱させてどうする」

「はは……すんません」

「反省している」

「久しぶりの戦闘に血が滾ったのは分かるが、個人ではなく軍としての戦いだ。なんでも好き勝手にやって良いわけではない。その点は頭に入れておいておくように」


 オルレアンも参加しているので、ある程度目上の領地の顔も立てておかないといけない。オルレアンも多くの敵を倒し、戦線の維持に努めた。先方をテルノアール、後方支援をオルレアンが行い、両者の協力によって撃退に成功したということで話はついているが、実際はかなり怒られた。

 テルノアールが好き勝手し過ぎだと。国の安全に手柄の取り合いかよとうんざりしたが、兵のバランスが変わってオルレアンの方に集中などしたら危険だったと言われた時は冷や汗ものだった。

 そこら辺の配分なども考えて布陣を敷いているのだからいきなり飛び出すのはリスクが高く、影響力を考慮出来ていないとお叱りを受けた。全くもってその通りだ。

 彼らもディパッシ族がいることで有利になると分かっていたし、死んでも構わないという算段もあって捨て駒のように前の方に配置させたのだろうが、予想よりも強く、通信の魔道具による迅速な対応などもあり一方的な戦いとなってあちらの戦況への対応に迷惑をかけた。

 しかし、結果的には多くの民と城を守り敵を撃退出来たので、貢献度は半々ということで落ち着いた。公にはあのオルレアンと同等の戦果を上げたことになるのだから十分だろう。


「では、数日はここで難民や損害の対応の手伝いだ。それが終わり次第、王都に帰還するのでそのつもりで」

「ロウゼ様はどうするおつもりで?」

「私は領主としてのあらゆる雑事だ。これでも後始末が大変なのだ」

「それは……申し訳ありません」

「いや、これも領主の務めであり下のものの失敗は私の失敗だ。自分の責任は自分で取る」


 とか偉そうなこと言ってるけど石板取りに行きます!







「お、あったあった」


 しばらくして、鑑定の石板を取りに遺跡へ向かった。随分と長い間誰も入っていないようで、入り口は岩で防がれかけていたのでリュンヌに破壊してもらいながら進んでいった。相変わらずブルドーザーみたいな奴だ。

 そして、ようやく石板の置いてある空間に辿り着いた。テルノアールにあった計算の石板と似たような空間だ。


「で、魔力を流してっと」


 予想通り石板が光り、化身が現れる。姿は中性的なカズキュールと違い、かなり男性的で眼鏡をしていて学者ぽい雰囲気だな。服装はほぼ同じでディテールに差異が多少あるくらいだ。


「私はエクスパータ……随分と久しぶりに呼び出されたようですが……おや、あなたは計算の」

「やあ、鑑定の。私たちが活動してからは随分と時間が経つ。あらゆる説明が面倒なので情報を共有させてもらうが構わないな」

「ええもちろんですとも」


 カズキュールは目を閉じて、通信のようなものをして情報を送り込んでいるのだろう。石板の化身はお互いの司る能力の種類で名前を呼びあうのか。なんかカッコいいな。自分なら二つ名はなんだろう?今のところ他の貴族に陰で言われてるのは『変わり者』か、『うつけ』、『太鼓持ち』あたりか。最悪だな。絶対カッコいい二つ名を手に入れてやる。


「なるほど、変わりましたね人間の世界は」


 やり取りが終わって、エクスパータは現状を理解したようだ。


「なら私たちの目的や身分などは説明不要か」

「ええ、周囲ではなく個人のことならそもそもカズキュールに教えて頂くまでもなく、私が『鑑定』出来ますので、テルノアールの領主、ロウゼ・テルノアールよ。おお、随分と魔力量が高いですね、それにとなりのリュンヌ、あなたはかなり高い段階にいますね」

「段階?あ、レベルのことか?」

「エクスパータ、段階や身体能力は数値などで具体的に知ることが出来るのか?」

「数値?」

「ああ、客観的にどの程度なのかを君が伝えるには数値が必要だろう」

「なるほど、今までは私がどの程度までの段階なのかを伝える形でしたが、あなたは私の能力を自分で使えるように借り受けたいということでしたね」


 カズキュールの説明によってこちらの手間が省けて理解が早くて助かる。


「そうだ、数値に表す概念がないなら人間の我々にとっては漠然としていて分かりにくい。自分の力なら自分である程度分かるが他人の能力についても知りたい場合は数値で知るしかないだろう」

「なるほどなるほど……情報通り随分と人間にしては賢いようですね。カズキュールの計算処理による能力を使っているのでしたらその枠組みに私の能力も入れればいいでしょう。石板に記述された式や記号の意味は私が教えますので、今すぐは恐らく無理でしょうが技術的には可能ですね」

「それは良かった。ではそろそろ良い時間だし城に戻ろう……えーと、遺跡内の転移の呪文なんだっけか」

「エヴァジオンです」

「そうだそうだ……エヴァジオン」


 四人はその場からスッと消えて遺跡には誰も居なくなった。





「ロウゼ様、一体どこに行ってたんですか?」

「周囲の探索だ。私の雨の魔法でどれだけの影響が出ているのかの確認をしておきたかったのだ」

「そうですか……」


 テルノアールの兵に聞かれたが、探索ということにしている。まあ主人の行く先に一々文句つけてくるやつもいないだろう。ホウレンソウしろって言っておきながら急に姿を見せなくのはよろしくないが、序列の低いものに知らせるべきでない情報は山ほどあり、何をしているのかよく分からないってのはどこの領主でも同じだ。その辺りは弁えてくれているので文句は言われない。



「ロウゼ様、探しましたよ」

「ゲオルグ、どうした?」


 ゲオルグがバインダーに多くの資料を挟み何か書き込みながらやってきた。一般的には失礼なのだが、戦地ということもありギリギリ許される。


「患者のデータが随分と集まりました。これは今後の薬の開発にも大きく役立ちます。それと、怪我の消毒など衛生状況の改善によって当初見込まれた死傷者の数よりは随分と少なくなっています。些細なことですが、成果はかなり大きいですね」

「ただ、在庫の消耗がかなり激しいです。補填に関しては資料をまとめておきましたのでご確認を。あ、あとテルノアール製品の質の高さが注目されており住む場所を追われた住民がテルノアールに移住する可能性も出てきたのでそこら辺の配備も必要になってきます」

「エッセン、どこから現れたのだ」

「ずっと後ろに居ましたよ!ゲオルグに先を越されてしまったんです」

「これはすみませんねえエッセン」

「分かっていてやっただろゲオルグ!」

「おい、ケンカするな」


 直接戦闘に関わっていない二人も随分と頑張ってくれていたようだ。特にやらかしてはいないので何か褒美を考えてやらないとな。

 後は……戦ってくれた一般の兵への報酬も考えて、嫌な話だが亡くなった兵の家族に対する見舞金も必要だし……金がもっといるな。王からの褒賞でどのくらいもらえるかによって今後の懐具合が変わってくる。

 領地の地盤を固めるのにもかなりの金がかかるし会議で上手く交渉しないとな。抜け出して来てるからタスクは山積みだし、休まる暇がない


 2日後、センタクルも安定して復旧作業が出来るようになり街も少しずつ元通りになっていくのを確認したので、オルレアン、テルノアールによる応援軍は王都へ帰還する為、出発した。

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