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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season2 ダンジョンマスター
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孤児院と学校に向けて

 ダンジョンをプレオープンしてしばらく経った頃、魔石や魔獣の素材が始まり珍しさもあって収益も順調な滑り出しとなり金がどんどん入ってくるようになった。ダンジョン街の経済もよく回っているようで全体的に景気が良い状態だ。噂を聞きつけて訪れる者も少ないないという。

 魔石はオルレアン領でしか殆ど採掘出来ずしかも国の北側に位置しているので、南側からの仕入れは非常にコストがかかるので南にあるテルノアールから魔石を調達出来るのはありがたい話らしい。

 最近国境では不穏な動きがあって小競り合いが多発しており軍事力を高める必要が出てきて魔石の需要が上がった。オルレアン領だけでは供給が間に合わないということもあり国全体で品薄となっていたところに我が領で魔石が出たのは思わぬ幸運だった。

 魔獣の素材としての質の高さからギーズ領からは大量の買い付けがあり武器や防具として軍の底上げをしているようで、その判断の素早さには流石と言うほかない。

 王への影響力が高い領地は戦前に立たされるので大変だ。まあ、大領地クラスの規模じゃないと国を守ることは出来ないだろうし、うちじゃ軍となって戦うのは熟練度的にも厳しいので戦争の手助けをすることしか出来ないだろう。


 まずは領地の底上げが急務だ。旧フィッツ領とのこともまだ解消出来ていない。正直、扱いが難しいのだ。一応犯罪者の家族なので対外的には処罰という態度を見せておかなくてはならないが、実務的には彼らに仕事を振って領地を変えていかなくてはならない。

 息子のオーガという男は有能そうだったし、彼を上手く使っていくことが出来ればフィッツとのやり取りもスムーズになるのだが……

 取り敢えず仕事を与えてみて考えるか。やることは大量にあるし税収の調査や商業の状況、領地の問題の聞き取り調査、孤児や奴隷の扱い、軍事力ここらへんはあちらで調査してもらって報告をしてもらおう。それなりに時間がかかるはずだが、何か仕事をやらせて領地運営に関わっていると他のフィッツ領の貴族に印象づけをしないとついて来ないだろう。

 後は目先の餌か……ポムドテルはすぐにでも広めていった方が良いだろうし他には何があるだろうか。


「ロラン、改革を始めてから助かったことは何かあるか?」

「そうですね……衛生面の改善ですかね。執事なので綺麗にしておきたいという気持ちもありますしそれが街全体に広がり体調を崩すものも減りましたからその穴埋めなどをしないで済んでいるので」

「うむ、おかけで疫病なども今の所流行っていないし病人も減ったというからな、衛生面の改善は効果ありだったな」

「しかし、元他領でそれが受け入れられるかどうかは別問題ですね」

「確かに、習慣を変えるのと同じことだからな。当然反発はあるだろうし効果がすぐに現れるものでもないからフィッツの貴族をついてこさせるにはやや弱いか」

「ですね」

「リュンヌ、お前はどうだ?」

「んー、飯やろそら。俺らもちょっと前までは奪うくらいしか出来んくらい食うもん少なかったけど今は満腹まではいかんでも誰でもそこそこは食えるやろ。後は戦う場所が出来たからそこで力発散させられることかなあ」

「やはり食糧事情の改善は大きいか」

「そらそうやろ食っていかないやってられへんしな」

「しかし、貴族と平民両方に利点があり即効性のあるものが欲しいな」

「それは知らんわ」


 うーん、貴族の性質上平民の暮らしが豊かになったからと言って大して喜ぶとは思えない。平民の生活が向上すれば回り回って自分たちの税収にも影響を及ぼすということは理屈では分かるのだろうけど歓迎されなさそうだ。

 その後エッセンに聞いてみると


「そりゃロウゼ様が新しい商品をどんどん思いつくのでそれを売ることですよ」

「ま、そうだろうな」

「後は労働条件の改善です」

「ん?」

「余裕を持たせて作業ペースを考え、休憩を取る、報酬の適性価格どれも最初は稼働率が下がると思ってましたが皆やる気が上がって利益も上がりました、これは地味に凄いことだと思うのですが」

「なるほどな参考になった」


 労働法を定めた効果も出ているか。しかしそれこそ貴族には理解されないだろうな。平民も奴隷も限界まで働かせた方が良いと思っているだろう。平民の労働環境改善なんて鼻で笑われるに違いない。

 次はゲオルグに聞いてみるか。まあ、ある程度予測は出来るが。


「良くなったことですか?研究がいっぱい出来るように予算を回してくれることでしょう」

「まあ、そういう回答は予測していたがもっと個人的ではなく全体的な話で頼む」

「うーん、料理の幅が広がったことではないですかね、味付けはどれも味わったことが無かったものですし、様々な料理に応用することが出来るので素晴らしいかと」


 確かに料理は自分の口に合わないものが多かったので色々手を加えた。今ではそれが定番になっているし料理のレシピは交渉材料としては有用そうだな。


「あっ、そう言えばこんなものを思いついたんですけど……」

「なんだ?」

「望遠鏡ってありますよね?あのガラスのおかけで遠くのものが見える訳ですが、そのガラスを利用すれば遠くのものではなく小さなものが見えるようになるんじゃないかなと思ったんです」


 望遠鏡から顕微鏡を思いついたか、こいつの発想力は恐ろしいな。


「それで?」

「小さいものが見えたら研究が捗るんじゃないかと思いまして予算の工面して頂けないかと……」

「書類を提出したら許可してやろう。それは重要な機材になるだろうからな」

「ありがとうございます!流石ロウゼ様分かってらっしゃる。これほどまでに薬学に理解を示される貴族に出会えるとは思ってませんでした」

「まあ、魔法の方が上だと思ってる貴族が多いだろうからな実際は補い合う関係のはずだが」

「素晴らしい!ああ、ここに来て良かった!」

「それはそうと、そろそろ助手をつけたらどうだ、手が回らんことも増えてくるだろう」

「それはそうなんですが、薬に詳しいものとなると……」

「自分で育てれば良いだろう先のことを考えたらその方が楽だと思うぞ」

「それはそうですね、考えておきます」


「という訳なんだがトゥルーネはどう思う?」


 結局、こういったことはトゥルーネに聞くのが一番ということでトゥルーネの部屋に来た。


「そう言ったことは貴族同士の私に最初から相談するべきなのでは?」

「いや、まあ、そうなんだが一応他の視点からの意見も欲しくてな」

「参考になるというのは分かりますが……」

「で、どうすれば良いと思う?」

「貴族の利益という点で言えば私は魔道具だと思いますね」

「魔道具か」

「あれは基本的に貴族の生活が更に豊かになるもので平民の生活の規模となると大変なものです」

「確かに、街規模の導入は難しいものが多いな」

「しかし今与えると犯罪者に対して甘いと思われるのでおススメは出来ませんね。後々税収が上がる方が良いのでは?」

「確かに今は処罰として目に見える形でのエサはまずいかも知れんな。後々巻き返せる利益があるので今頑張らせた方が賢いかも知れない」

「フィッツから来ている冒険者の利益の一部をあちらの税ということにすれば十分かと」

「たしかにダンジョンの売り上げの一部は税として徴収しているしそうした方があちら側からも冒険者志望を増やす後押しをしてくれるかもな。よし、それで行こう」

「となると、後々他領からの冒険者による売り上げは他領の貴族に渡す必要がありますが……」

「いや、ダンジョンはテルノアールのものだからその利益をテルノアール内でどうしようがこちらの勝手だ。後から難癖つけられて金をせびられては困るからな。旧フィッツもテルノアールの一部なのだしフィッツにその配当を出すのは何もおかしなことではないだろう」

「そう、ですね」

「そうだ、孤児院についてだが……」

「本気で孤児院を作るおつもりですか?」


 トゥルーネは明らかに孤児院を歓迎してない様子だ。


「ああ」

「しかしあまりにこちらに得のない事業じゃありませんか」

「むしろ逆だ。得のないことは商人はやらない。しかし得がないからと言って無くなっては困るものは我々がやらないといけないと思う」


 公共事業、インフラなどは無くなってはいけない。生活を保証する最低ラインを民営化すると利益の為に暴利をむさぼったり、赤字でサービスが止まってしまった時のことを考えると税で運営した方が良い。

 特にこの世界ではそれがより顕著だ。


「そういうものですかね……」

「貧しさを放置するのは良くないだろう。負の連鎖を生む。貧しい家の子は貧しいままだし、果ては犯罪者か奴隷だ。街の治安の為にも行き場のない人間の居場所を作ることも大事だ。後々、領地の運営に関わる仕事をさせていきたいし先のことを考えても孤児院と学校は作るべきだ」

「ではそれを作れば犯罪者や奴隷が減ると?」

「ああ、犯罪者も結局は貧しくて普通に暮らせないから苦肉の策として犯罪に手を染めるのだから普通に暮らせるようになれば治安は良くならはずだ」

「まあ、ロウゼ様の土地ですので最終的にはロウゼ様の思うようにやっていただく形になりますが平民の中でも最下層の者に気を配るというのはどうにも分かりませんね」

「失敗したとしても問題はない。知識は誰からも奪えない財産だ、最低限の学があれば生活も向上する可能性があるはずだ。その道を示せれば良い」

「失敗するにしては予算があまりにも膨大ですが」

「先のことを考えればこれくらいは必要だ」

「ま、まあ今の収益から言えば無理ではない額ですが」

「じゃ、後はよろしく、私は孤児院と学校の工事の打ち合わせがあるので頼んだ!」

「ちょ、ちょっとロウゼ様!?」


 トゥルーネに事務処理を任せて打ち合わせに向かった。教室に黒板や机や椅子の寸法の確認、トイレやプールの水回り、グラウンドの整備や遊具、やる事はいっぱいだ。

 そう言えば自分は立場的には校長先生になるのか。長い挨拶をするのはやめておこう。あ、ということは孤児院長にもなるのか忙しくなりそうだ。

 後は教師が欲しいところだな。体育の先生はディパッシ族で良いとして教養がそこそこあって人に教えられるとなると新たに雇わなくてはならないか。

 あ、ゲオルグに理科の先生は……無理か、子供にはレベルが高過ぎるな。

 うーん、よしいっそ募集かけて見るか。次は面接官だ。就職活動する前に終職っていうか死んだけど。領主って色んな仕事やれて楽しいな。馬鹿みたいに忙しいことを考慮しなければ。

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