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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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鎮圧

 全速力で関所に向かいながら近くにいる兵に連絡を取る。クシーの兵に警戒して他の兵士を援護するように伝える。じきに周辺に配置した兵の応援が来るだろう。


「くそっ内側から攻撃されるとはな」

「それにしてもなんで裏切られたんやろうなあ」

「分からん、一体何を考えて自領の兵に攻撃など……」

「お前のことが嫌いなんちゃうか」

「馬鹿な、嫌いだからと言ってやるレベルの話ではないだろう!」

「じゃあ何か良いことあるんかな」

「フィッツで良い地位に立てるとかそういう話を持ちかけられたとかそんなところではないか?」


 貴族は体面を気にするのだから一方的な裏切りは信用も傷つくしメリットがない。俺が誘拐したというのが気に入らず、救い出すためフィッツに手を貸したといったシナリオか?仮にそれで奪還が成功すれば領地の娘を救った立役者だ。


 しばらくすると関所から少し離れた場所に集まる兵の群れが見えてきた。高度を下げて状況を確認する。


「私だ、どうなっている」

「ロウゼ様!」


 全員が膝ついて整列する。


「挨拶は良い、状況の報告をせよ」

「はっ! 関所の兵士が奇襲を受けた為に数人死亡、残ったものが逃げて連絡をしてきました。今は兵を集め体制を立て直しております」

「やはり犠牲者は出たか……それで関所はどうなっている?」


「クシー卿が兵を連れてフィッツに向かおうとしているところ、出入りに注意するよう連絡を受けていたので理由を尋ねました。通せと言うのでロウゼ様に確認を取ると言うといきなり兵が攻撃しだして一時場は混乱したのち我々は撤退。そしてクシーの兵が関所を占拠、開門してその後続々と兵が集まりだし、あと少ししてあちらの体制が整い次第攻撃を仕掛けてくるかと思われます」

「フィッツには攻撃されてないのだな?」

「はい、鳥人族の報告では軍が関所に向かって進行中とのこと。貴族を乗せた馬車があることから出迎える準備をしているのではないかと。生き残った兵士からはクシーの兵がクシー卿からフィッツ卿を出迎える準備をするようにと指示を受けていましたので確実ではないかと……」


「ふむ、やはりレモンド嬢奪還の名目で侵攻するつもりか」

「では戦争が始まるのですか!?」

「いや、その前に終わらせる。お前たちは関所の兵を鎮圧せよ。ディパッシ族の応援があれば可能なはずだ。同士討ちを避けるため撤退して指示を待ったのは正解だったな、良くやった」

「ロウゼ様はどうされるのですか?」

「私はこれからクシー卿とフィッツ卿を拘束する。フィッツ領へは下手に大人数で入ったら侵攻扱いされるから人数は少なくて良い。こちらはあくまで守っているだけという姿勢を崩すな。これより其方たちは私の命により関所の兵を攻撃する。同じ領地の兵士に対して攻撃しても問題はない。ただし殺すな、貴族の面倒ごとで平民が死ぬのは私としては好ましくない」

「はっ!」


 関所の兵士にはまだ服は与えていなかったし訓練も出来ていなかった。それが間に合っていれば無駄な死者を出すことも無かったが完全にしてやられたな。身内に切られるとは思わなかっただろうし油断もしたはずだ。

 自分の落ち度に苛立ちを覚えながら兵たちに指示を与えて関所に反撃をしかける準備を整えさせる。その間にニンジャに連絡を取る。


「私だ、誰か空を飛べるものはこちらに向かっているフィッツの兵の偵察をしてくれ、状況を確認したい」

「こちらフォールス、現在上空にて待機中……確認しました。丘の上で停止しています」

「関所の準備が終わって連絡を待っていると言ったところか」

「どうやらそのようです」

「よし、では引き続き空から偵察を続行せよ。ただし存在に気付かれるな」

「了解」


 まずは、クシーを拘束して事情を聞くか。それ次第でフィッツにどういう対応するかが変わってくるな。


 ホウキに乗って関所に向かうと半数はテルノアール側に、半数はフィッツ側にいた。そして境界上で騒いでいる人物がいるのが目立った。


「どうなっている! 何故入れないのだ!」


 クシー卿が透明な膜に向かってバンバンと叩きながら大声で怒っている。

 一度境界を超えて、フィッツ側からテルノアール側に向かって着地する。


「結界が作動していると言うことは私に反意があるようだな、クシー卿」

「なっ!? ロウゼ……様! 何故こんなところに!?」

「何故だと?貴様が騒ぎを起こしたからここに来たのだが?」

「そんな……早過ぎる! 馬車で半日はかかるはず」

「馬車ならそうであろうが、私はホウキに乗っているのでな」


 そう言ってホウキにまたがり宙を自在に浮いて見せる。


「空を飛ぶ乗り物だと!? 魔道具か!」

「その通りだ、そして貴様は領主の私に逆らった罪で拘束する」

「貴様こそフィッツの娘を誘拐しているだろう!不義理な真似をした其方を懲らしめるべく私は」

「よく言う、そんな事実はない。フィッツに騙されたとは言うまいな、侵攻の手助けをして手柄をもらおうという算段だろう」

「ぐっ……」


 図星か、なんて単純な思考回路なんだ。


「お前につくよりはマシだ! 領地を勝手にどんどん変えよって! 気に入らんガキだ!」

「では今のまま民が困窮していて良いというのか?」

「知るか!私が貴族としての暮らしが出来ていれば民などどうでも良いわ!」

「なんだと?」

「お前のやり方は今の貴族社会を揺るがす危険がある、民に力がつけば反逆の意思が生まれる、それは望むところでない」

「自分さえ良ければいいと言うのか」

「民とは貴族の為にあるものだ、民の為に私が働くなど御免被る」

「……貴様はこの領地の貴族してはふわしくないな、自領の兵を殺害した罪、軽いと思うなよ」

「たかが兵の数人で騒ぎよって馬鹿が」

「そのたかが数人が集まって領地は成り立っている。軽い訳がない」

「ふん、話にならん」

「それはこちらのセリフだ」


 両者睨み合っていたその時先に仕掛けてきたのはクシーだった。手をかざして呪文の詠唱を始める。


「キャンセル」


 指をパチンとならして発動を阻害する。


「なっ!? 魔力が断たれた!?」

「リュンヌ、やれ」

「おう」


 一瞬にしてリュンヌはクシーの背後に回り込み地面に叩きつけて取り押さえた。


「其方たち、まだやるつもりか?貴族どもと戦って勝った男とやりあって生きてられる自信でもあるのか?」


 クシーを守るために応戦しようとしたがリュンヌの迫力に気圧されて戦意を喪失した。


「それで、クシー卿よ、フィッツの狙いはなんだ? ジュアンドルの原料か?」

「……何を言っているのだ?テルノアールそのものだ、急激な改革を領地の規模にあっていない速さで進めている貴様に代わってフィッツ卿は統治してくださるのだ!そして私は腹心の部下としてテルノアールを治めるのだ!ワハハ!」

「……都合良く利用されただけか、愚かな」

「何っ!? 私は利用などされていない!」

「では、この周辺の畑をフィッツのものが荒らしているのは知ってるのか?大方ジュアンドルの原料でも探していたのだろう」

「な、なんだと?」

「恐らく奴はジュアンドルの利益欲しさに娘を利用して侵攻する口実が欲しかっただけだ。それを其方には伝えていないとすると、利用した以外の理由はないな」

「そんな……」

「自分の娘を犠牲にして、権利を得ようとし、其方を利用する人間が約束を守る訳がないだろう」

「くっ……」

「テルノアール側にいる兵士も我々の部隊がじきに鎮圧する。お前は既に詰んだのだ」

「フィッツ卿め……」

「味方にする相手を間違えたようだな……おいお前たち、処刑されたくなかったら縛りつけておけ、リュンヌ行くぞ」


 クシーが縄で拘束されているのを確認してフィッツが待機している丘に向かった。

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