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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
49/101

結界の強化

「それで、何で急に神殿に行く必要があるんや」


 ホウキの後ろに2人乗りをしながらリュンヌが聞いてくる。


「どうにもきな臭いことが起こっているのでな、結界を強めに行く」

「どういうことや?」

「俺が何故かレモンド嬢を誘拐したことになってるのだ」

「はあ? あっちが無理やり来させよったんちゃうんか」

「そのはずなのだがな、噂として流れているようなのだ」

「で、それと結界はどう関係するんや」

「フィッツが娘を誘拐したと言ってこちらに攻撃をしかけてきた場合、守れるのは屋敷とその近くの街だけだ。数で押されては戦えないとロランに指摘されたのでな、結界で侵入自体をある程度防げればと思ったのだ。まあ、保険だな」

「ホケンが良く分からんけど戦いに備えるんやな?」

「そうだ、意外と近いかも知れないぞ、お前も警戒しておけ」

「了解」


 本来1人用に無理やり乗せているのでかなり窮屈だ。リュンヌだけ乗せて移動ということもこれから増えるかも知れないのでサイドカー的なものも用意した方が良いかも知れないな。筋肉の塊なので強度がやや心配だが。


 高速で移動すれば数時間で到着出来た。向かってくる風が強いのでゴーグルをつけたいと思ったがガラスの加工が難しそうだ。プラスチックの様な素材もないし魔法でどうにかするしかないのだろうか。


 神殿の中に入っていき起動装置にたどり着いたところでカズキュールが姿を現わす。


「カズ、結界の設定をしたいのだが、例えば他領の人間を侵入を防ぐようなことは出来るか?」

「人間を識別する方法がないので無理だ」

「そうか、神は人間の違いが分からないということか?」

「そうだ、君は違う動物の性別や見分けがつくのか?」

「いや分からないな」

「神も同じだ。だが、結界の外から来る人間を侵入させないようには出来る」

「それは可能か。いやしかし完全に侵入禁止にすると鎖国と同じだ。商業で人の行き来が出来なくなるのは困るな」

「出るだけならば可能ということも出来るぞ」


「しかしそれでは帰って来られないだろう」

「君が結界を作動させているから君自身に敵意を持つ相手であれば侵入を阻止することは可能だ。領地に敵意があれば大抵はその長に敵意が向くだろう」

「俺自身の敵意に対してか……では、テルノアールから出る事は可能で、俺に敵意のある者を外から入れないという複数の設定は出来るか?」

「ああ、それなら可能だ」

「本当は一度領地の中から出た人間は外から入っても戻れるという仕組みが1番良いと思ったのだがな」

「それは個人を識別することが出来ないので不可能だ」

「個人を識別出来る何かがあれば可能ということか?」


「理論上は可能だが」

「例えば数字を刻み、その情報をお前に送る魔道具のようなものを持たせていれば……」

「ああ、それなら私が識別して処理出来るのでその魔道具の魔力の反応から結界で弾く事は出来るな。別に数字はなくともこちらに魔力の反応が送れればそれで問題はないが」

「いや、領民を識別するのに個人を番号で割り振る方が良い。領地を出た人間が分かるのと、誰が領地を出たのかを分かるのではまるで情報の解像度が違う」

「なるほど。それは確かに良い案かも知れない」

「それは先の話になるが取り敢えずそれで、出る分には自由にさせておき入ってくる相手を絞れる設定で結界を起動しよう」

「では、前の通りに起動して操作しろ」


 結界の装置を起動して、目の前には様々なアイコンが宙に浮かぶ。


「ああ、空からの地形が見れるのだったな。ついでにフィッツの地形を確認しておくか」

「これまじでどういうことやねん、空からの景色が見えるって」

「神の力だ」

「ふーん」

「いや、それじゃまるで説明になってないだろ。何故納得出来る?」

「神やったら何でも出来るやろうなと思って納得やんけ。俺の力も神がくれてるんやろ?なら何の疑問も無いわ」

「生半可に神の力に触れてるだけあって妙に柔軟になってしまってるな」

「このでかい青いのはなんや?」

「海だ、そうかお前は見たことがないのか」

「海ってなんや」

「塩水で出来た水の沢山ある場所だ。塩はここから作られているのだ」

「へえー」


「なるほどな、他領から川が流れていて下流に汚い水が流れてくるから川は綺麗ではないのだな。うちは上流が領地にある分まだマシだ」

「木はいっぱいあるやんけ」

「確かに土地の傾向はうちと似ているかも知れない……遺跡もあるな」

「ああ、それは神殿だろう。あちこちにあるので不思議ではない」

「どこに何があるかは知らないのか?」

「私は私の担当する場所がある。それ以外のことは神に教わっていないので知らないな」

「そういうもんか、石版同士で情報が繋がっているわけではないのだな」

「私は神に直通だ。もっとも交信することは出来ない一方通行だがな」

「魔法の現象として発生するのが神の答えと言ったところか」

「まあ、そういう解釈もあろう」


 結界を再設定して警戒レベルを引き上げる。便利だが融通も利かないのが困ったものだ。識別の魔道具は領地の経営と領民の管理から言っても早めに必要だな。マイナンバーみたいなシステムを作って何かあればすぐに戸籍の情報と紐つけられるようにしたい。


「……これで良しと、一先ず侵略は防げるか」

「俺らもそれぞれの場所行って準備した方がええんちゃうか?」

「いや、レモンド嬢のいる屋敷を一番守備を固めておきたい。彼女を奪われることがあればそれこそこちらの都合が悪くなる。それにただでさえ少ない兵を分散させるのは良い手とは思えん。各地に配備したところで数で押されたら勝ち目がない」

「じゃあやられるまで待ってるって言うんか!」


「こちらから手を出せばこちらが悪くなる可能性がある。これは守る戦いだ、被害を最小限に抑える努力をするしかない」

「それは要するにちょっとくらいやられても良いって言ってんのか!?」

「良い訳がない。最善は事前に争いの火を消すことだ。だが、これがそもそも火がつく話なのか、どこから火がつくのかさえ分からない状態では何も出来んということだ。まだ情報が足りんのだ……」

「くそっ見えへん敵ってのは厄介やな」

「これがロランの言っていた力ではない戦い方だ。ディパッシ族も万能に戦えるわけじゃない」

「正面から戦ってくれたらこっちのもんやのに……」

「わざわざお前たちとやりあうやつなんているはずがない。こういう戦い方もしてくるのは想定のうちだ。だからこそニンジャを作ったのだが思っていたより早かったからな、後手後手に回っているのが悔しいな」


 その時、通信の魔道具が着信を通知した。

 ロランか、何かあったのか?


「私だ、どうした?」

「情報が集まってまいりましたので、報告です。複数ありますがまずは、見慣れぬ者が森で何やら探しているのを発見したとのこと。クシーでは噂がかなり広がっている様子。そしてフィッツのものが関所で暴れたのを衛兵が捕らえました。ロウゼ様の誘拐からレモンド様を助けるために義憤にかられ領民が勝手に動いたようです。それと、これは関係あるか分かりませんが境界近くの農村では畑泥棒の被害にあったようです」

「まずいな、ただの噂と放置出来る程度では無くなってきた。こちらは用が済んだのですぐに戻る。引き続き警戒を怠るな」

「はい、トゥルーネ様ですが、アヴェーヌ卿に連絡の手紙を使い烏で送っていました、この噂に関する情報をアヴェーヌから何か得られないかと連絡しているようです」

「危険な行動ではないようだな」

「はい、単に情報収集といったところかと」

「ならば良い。アヴェーヌの情報は私も欲しいところだ、連絡が返ってきたら私も確認しよう」

「では、失礼致します」

「ああ」


 通信を切り帰りの準備を始める。


「よし、すぐに屋敷に帰るぞあまり良い状態では無いらしい」


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