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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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キャンセル魔法

 電話の発明をしていて気になったことがある。魔法、魔術ともに魔力の流れを利用するものだ。力を根元となる場所が違うだけで、世界の法則を改変するという点では違いはない。では、その流れを意図的に遮断することが出来れば、魔法を消すことが出来るのか?という問題だ。

 カズキュールに質問してみる。


「それは理論上可能だが、発動した後に起こった現象に関しては消すことは不可能だ」

「というと?」

「例えば木に火をつけたとする。すると木は燃える。この際、元の火種を消すことは出来ても、燃えている木から火は消えない」

「なるほど、では発動する寸前に何らかの方法で干渉して妨害することが出来れば火はそもそもつけることが出来ないというわけか」

「その一瞬であればな」

「いや、相手の虚を突くという点では十分有効だと思う」

「しかし、そんな事をやっている人間は見たことがないし、私が教えることは出来ない」

「魔法の仕組みそのものを詳しく調べる必要がありそうだな」


 実験するにはトゥルーネの協力が必要か。しかし出来るだけ秘密にしておきたいな。


「おい、俺の勉強は」


 部屋に勉強を教えてもらいに来たリュンヌが放置されることを察知してツッコミを入れる。


「あ、ああ1人でやっとけ出来たら見せろ」

「教えてくれるんちゃうんかい!」

「教える、と言っても暗記するだけの範囲だからお前の努力次第としか言えんのだが」

「だーかーら、その暗記の方法教えてくれや、なんかないんか」

「えー、じゃあ体を動かしながら覚えるとか? その動きのイメージで覚えられるんじゃないか?」


 正直、リュンヌレベルの根本的な問題でつまづかれても指導のしようがなく分からん。逆にどうしたら覚えてくれるのかこちらが教えて欲しい。


「動きながら覚えるか……こうか! こう! 人! 屋敷! 鳥! 右!」


 単語を唱えながら暴れ出した。しまったな、外でやってくれないかな。


「リュンヌうるさいんだが外でやってくれないか」

「お前が動けって言ったんやろうが!」

「今ここでやられたら困るんだが」

「じゃあ庭でやってくるわ!」

「覚えたら確認はしてやるから戻ってこい」


 リュンヌはややふてくされながら部屋を後にする。


「さて、魔法を阻害する方法だが……」


 魔力を作用させる場合、必ずその空間の法則を改変する為に空間自体に魔力の影響を与える。その空間に外部から影響をどうにかして及ぼすことで可能というのは分かる。


「分からん、魔力というものの概念自体が漠然としていてどうしたらいいのかサッパリイメージ出来ない」

「魔力をどう捉えるのか、というのは人によって様々だ。昔でも家ごとに違ったりしていた」


「ふーん昔でもそんなもんか。因みに種類としてはどう捉えていたんだ?」

「空間にあるので空気のようなものとか、小さな粒とか、炎のように広がるとかそんなところだな」

「粒か……かなり科学に近い認識だな」

「魔法を至近距離で同時に発動させれば互いに干渉して上手くいかないということは知っているな?」

「ああ、それは知ってる。しかし至近距離でってのが問題だ。遠くでも干渉出来るようにしたい」


「攻撃は君の方が早く出来るのだから先に攻撃してしまえば良いのではないか?相手を無効化するには十分だろう」

「いや、こちらが攻撃しなくても無効化出来るのが理想だ。そういう手段が欲しいと考えている」

「私はお手上げだな、魔法に関する知識はあるが閃きは君の方がよっぽど上だ。デンワのように突飛なアイディアは私には思いつけない」

「電話は先人の知恵を利用しただけだから別に突飛って訳ではないんだがな」


「いや、音を波として捉えるとはかなり斬新な発想だと思うが」

「いや、誰でもよく観察したらあれが振動ってことくらいは……そうか」

「どうした?」

「振動……波だ。魔力の波が空気中を伝播していき空間に事象改変をもたらす。こちらが魔力の波を相手にぶつければ相手の魔力の場が揺らぐイメージでやれば出来るかも知れない」


「ほらな、君には魔法の才能がある」

「いや、知識だ。魔法は知ってることをどうやって魔法に応用出来るかという話なだけだ。魔法自体の才能があるわけじゃない」

「何を言ってるのか良く意味が分からんが思いついたのだろう?」

「ああ、早速術式を組んでみる」


 カズキュールとの会話で波で波を打ち消す対消滅のイメージが思い浮かんだ。魔法はイメージが重要で明確にイメージが出来ていないと効果が思うように働いてくれないというアバウトな代物だ。


 微妙に大きさや波長の異なる魔力の波を連続して発生させ相手に高速でぶつけることで相手の魔力場とでも名付けようか、魔力場に干渉して妨害する。

 波の大きさを範囲の制限した値で乱数にして連続して打ち出す術式だ。上手くいけば魔道具にも転用さて誰でも使えるな。


 いや、これは貴族の魔法を無効化して戦う術が生まれてしまうということになってしまうのではないか?

 悪用されれば相当危険なものになる可能性があるな、魔道具の開発は慎重に行う必要があるな。社会を揺るがしかねない発見だ。


 貴族を恐れる大きな理由の1つは魔法が強いということだ。人知を超えた力の魔法があるからこそ戦ったところで勝てないと平民は思っているし、だからこそ貴族に従う構図が出来ている。貴族も平民はいつでもその気になれば殺せるという、自負があるからこそ尊大な態度を取れている。それを無効にして戦えるとなったらどうだ?そんなものは絶対に貴族は平民に与えようとはしない。


 厳しい生活をさせているのだから、そのパワーバランスが崩壊すればたちまち反乱が起きる。非常に危険な存在であり危険な道具。つまりそんなものを作り、貴族社会を崩壊させる危険性のある俺が不穏分子、反逆者として潰される。

 それに反発出来るほど、自分には力がない。仮に世に出すとしても、本気で貴族社会を壊そうとする時が来ればというくらいだ。

 貴族の自分が個人でそういう魔法が使えるということと、誰でも魔石さえあれば使える魔道具というのでは意味が大きく異なってくる。


 まあ、魔道具すら現状平民は持つことはほぼない高級品だが。それもあって領内の各地に平民の村にすら電話を非常用の連絡手段として設置すると言った時には大騒ぎになった。というかトゥルーネが大騒ぎした。

 平民に魔道具と魔石を与えるのは特別扱いし過ぎたとか、過ぎた待遇だとかで文句が大きかった。

 個人でトゥルーネに持たせてやると言えば怒りながらもちょっとニヤケながら許可してくれたことには気付いている。

 後は班ごとに持たせるべく材料の仕入れを手配して順次作成中だ。

 毎日この作成でかなり忙しくなってしまったが自分で言い出した手前やるしかない。


 しかし、貴族と自分の兵が戦闘する場面になった時にやはり奥の手としては欲しいかも知れない。魔法は殺傷能力が高いので一瞬で死んでしまう。誰も死んで欲しくないというのはこの世界では甘い考えかも知れないが、それでも死なない越したことはないと思う。


「よし、出来た」


 そんなことを考えながら術式を構築して完成だ。

 魔力の波を起こすイメージのトリガーとして音に見立てて指パッチンから振動が広がり魔力場に干渉する仕組みだ。登録名は『キャンセル』だ。何かカッコいいし、英語なのでこの世界では何を言っているか意味が分からないというので相手に悟られる心配もない。


「出来たのか、では私に使ってみろ」

「え? カズに?」

「私は魔法で現れている。妨害することに成功出来れば私は一瞬消えるはずだ」

「大丈夫なのかそれ」

「石版を破壊しない限り私は問題ない」

「じゃあ……キャンセル」


 パチンと指を鳴らすとカズキュールは揺らいでからフッと消えた。


「おお、成功だ!」

「……上手くいったな」


 しばらく消えた後、また姿を現したカズキュールも褒めてくれる。


「魔法に作用するかを確認したいなトゥルーネのところに行ってみて試そう」


 ドタドタと音がしてリュンヌが部屋に駆け込む。


「ロウゼ!」

「どうした、もう覚えたのか効果はあったようだな……」

「違う違う! ネフェルとフォールスとライカの班が何かしとるなと思って見てたらあいつら美味い料理の作り方のやつお前にテストしてもらう練習してたんや! ヤバイ! あいつらに肉取られる!」


 何事かと思えばそんなことか、力が抜けてしまう。


「まあ、昨日の授業の内容から考えればそろそろ出来るはずだからな」

「セベックももうちょい言うてたしヤバイって!」

「ヤバくはない、出来て当然だ。むしろディパッシ族は一体何をしているんだ全く」

「あいつらはダンジョンで肉取れた方が良いとか言ってダンジョンの魔獣の戦い方の訓練してた、勉強は全然やる気ない!」

「はあ……まあそれも勉強といえば勉強だが。お前もダンジョンの肉食べれたら良いと思ったが」

「違う! お前の考える料理の方が美味いに決まってるねん、あいつらそれが全然分かってない! 協力してくれへん!」

「リーダーのお前がそこはやる気を出させるしかないなお前の頑張り次第だ」

「無理やって、勉強で精一杯やって!」

「しかしお前に直接教えてるだけでも既に公平では無いのだから他の者が単純に頑張ったというだけの話だろう」

「そんな冷たいこと言うなや〜」


 コンコンとノックをする音が聞こえる。この音はロランだ。


「入れ」

「失礼します……ロウゼ様に課題が出来たので試験して欲しいという連絡がネフェルから入りましたが如何致しましょう」

「あー!!!!」

「リュンヌ黙れ。うむ、夕方私の部屋に来るように言っておけ」

「承知しました」


 ロランは用事はそれだけのようですぐに部屋を退室した。


「ほら見ろ! もう来たで!」

「頑張ったんだから仕方ないだろう、別に肉の量が減るだけでお前の分が無くなった訳ではないだろうに」

「いーや! 俺の肉が減ってるのと同じや!」

「じゃあ今から読み上げられるようにするしかないな」

「そんなん無理に決まってるやんけ〜」


 悲しそうな顔で無理だと言ってなんとかして欲しそうにこちらを見ている。これ以上甘くはしないので、無視だ。


「俺は忙しい、これから新技の試しをトゥルーネにしにいくんだ」

「え〜そこをなんとか〜」

「だめだ」


 ぐずるリュンヌを無視してトゥルーネに会いにいく。アポを取れと叱られるのは毎度のことだ。


 簡単な攻撃の魔法を唱えてもらいキャンセルを試みたが上手くいった。トゥルーネは何をされたのか分からず混乱していた。

「何をしたのですか!」という質問攻めにあったが出来ればそれで良いと質問には答えなかった。それが気に入らなかったらしく何度も何度も質問されるようになった。

 会う度に聞かれて少々うんざりしたので、新技の実験をトゥルーネでやるのは厳禁だと心に誓った。

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