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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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合宿 後編

 日の出とともに起床し、ダンジョンへの準備を始める。兵士や亜人には何とも言えない緊張感が漂っていた。皆武器の手入れを念入りにしている。

 皆、1人1つは武器を支給したのだが武器がかなり高くてここ最近の中で最も高い買い物だった。エマはディパッシ族みたいに素手で戦えって怒ってたけどそれは流石に無理だろう。

 ディパッシ族だけは楽しみにしているようでワイワイと朝から騒いでいる。元気な奴らだ。


 今日は取り敢えず1番最初の階層のみで様子見をしようと思う。班で行動し、索敵や役回りを確認して安全マージンをしっかり取りながら確実に1体を倒すことが出来るようになることを目標とする。


 ディパッシ族は放っておいても死なないだろうけど、半分は他の兵士や亜人たちのサポート、もう半分は自由に狩りをするということで合意した。


 点呼を取り異常が無いことを確認して、いよいよダンジョンに初挑戦だ。


「ここからは真剣にやれ、安易な油断が命取りだ」


 ダンジョンの前の大きな入り口で最終の注意をする。


「おいおい、どうしたぁ!? お前ら、ここに何しに来たんや! 美味い魔獣の肉を取りに来たんやろうが! 気合い入れろや!」


 それはお前だけだって。


「よーし! 肉取りまくんで!」

「よっしゃぁああ!」


 ディパッシ族は活気付いた。略奪されて領民殺されるよりは全然良いので、頑張って取りまくってもらいたい。


「では、出発、1班から8班が先に行き、しばらくした後9班から16班だ!」

「「「応!」」」


 最初に出発する8班が先頭で隊列を組み、警戒しながらダンジョンに入っていった。自分はその少し後ろからダンジョンに入り、様子見だ。


 リュンヌは自分の護衛なのですぐ横にいるが他のディパッシは自分を囲むように輪になっている。絶対大丈夫だろうなという安心感がある。


 先頭の方から魔獣発見の声が上がり警戒態勢を一層強める。自分も一応いつでも魔法を発動出来るように準備をしておく。


 2班合同で、この間出たイノシシの様な魔獣を囲み油断しないように隙を見ては斬りかかることを繰り返していた。魔獣が追い込まれてパニックになったのか1人の蜥蜴人族の男の方向に突進してきた。彼は胸の前で腕をクロスして衝撃に備えたがドンッという音がした後宙に吹き飛んだ。


「危ない!」


 仲間の1人が叫んだ時に、マノツァが彼をキャッチしてくれて、地面に叩きつけられずに済んだ。

 ホッとして良かったと思ったがリュンヌがすかさずに怒鳴る。


「油断するな! 獣は弱ってる時が一番危ないんや! 死ぬぞ!」


 最後の力を振り絞り反撃を仕掛けてくる獣相手に隙を見せてはいけない。魔獣の力は人間を一撃で殺してしまうほどの力がある。僅かな油断が命取りだ。


 皆、再び気を引き締めてダンジョンに挑む。


「あー! 俺も戦いたい!」

「待て待て、護衛だろう」

「分かっとる! 分かっとるけど戦いたいんや!」

「皆の訓練が終わってからだ」

「いつ終わんねん!」

「今日は無理かも知れんが」

「そんな……」


 リュンヌは絶望の表情で頬を抑えて小さな声を漏らす。


「お前はレベルそもそも高いし、肉が目当てなら他のやつが取ったのをもらえばいいだろう」

「嫌や! 俺が取った肉を俺が食べたいんや!」

「肉なら同じだろうに訳がわからん……」

「全然違うわ! 俺が人のおこぼれもらうなんてダサい真似出来るか!」

「おこぼれって言うか、役割分担しているから正当な報酬だろう。あいつらが魔獣にだけ注意していられるのはお前たちが俺を護衛しているからだろう。ならば、お前の護衛も魔獣を倒すのに必要な仕事だからおこぼれではない」

「むっ? むー……んん?」


 完全に混乱している様で一生懸命考えて眉間にシワを寄せているのだが理解できていない。


「まあ、お前が守ってくれるおかげで、あいつらが頑張れるから。お前無しには肉は取れないってことだ。だから気にせず食えばいい」

「なるほど! 俺のおかげで肉が食える!」

「そうだ」


 その後は順調に魔獣を倒していき、皆も連携に慣れてきたようで1番奥まで進んでいけた。


「ん? 前こんな場所なかったよな?」

「あ、ああ……ダンジョンを起動したせいだろう」


 1番奥には大きな扉があり物々しい雰囲気だ。

 これはボスの部屋か?


「ボスかもしれないな」

「ボス?何やそれ」

「この階層の主で1番強いやつがいるのだと思う」

「へー良いやんけ強いなら」

「皆!恐らくこの先はこれまでより強い魔獣がいると思われる。気を引き締めていけ!戦闘はディパッシ族がメインで、その他のものはサポートに回れ!」


 安全マージンをしっかり取りたいのでディパッシ族メインで戦おう。誰も死なせる訳にはいかない。

 重い扉を開けるとゴゴゴという地響きがした。

 そしてその先には真っ黒な10メートルはあろう巨大なイノシシ型の魔獣がいた。


「でっかあ……」

「何だこいつは!」

「絶対無理だって!」

「これまでの上位種と言ったところか」

「ブォアアアオオオオオッ!!!」


 魔獣は雄叫びをあげてこちらを睨みつけて臨戦態勢に入った。


「来るぞ! 警戒しろ!」


 ディパッシ族もまた雄叫びを上げた。強い敵と戦えることに興奮しているようだ。


「ヒャッホウ!」


 1人が飛び出し魔獣の背中にかかと落としを浴びせた。


「プギィイイイ!」


 攻撃されたことに腹を立てた魔獣からはダメージはまるで感じられなかった。


「効かへん!?」

「毛や! 毛が力殺しとるんや!」

「頭狙え頭! 毛少ないで!」


 野次なのか応援なのかさっぱり分からん声をかけながら作戦を組み立てていく。攻撃は簡単にヒラリとかわしながら喋っているので、やはりディパッシ族は強いのだと再認識させられる。


「他のものは可能な限り足元を攻撃しろ!」


 皆魔獣を囲んで攻撃していき、ジワジワとダメージを蓄積させていく。


「お前らぁ! 牙に気ィつけろよ!」


 魔獣の鋭い牙に突き刺されたらひとたまりもないだろう。1人のディパッシ族が注意をする。


「目やれ!」

「よっしゃやったるわ!」


 目を腰に下げた剣で切りつけると魔獣はさらに怒ったようでまた雄叫びを上げた。


「もう一個は俺がやったる!」


 先ほどとは違う男が魔獣に飛び乗り目をえぐる。魔獣は完全に視力を失った。戦力が下がってくれたかと思ったが視力を奪われたことでパニックを起こしたのかこちらに物凄いスピードで突進してきた。


「ヤバイ!」


 回避するには距離が近過ぎる、ぶつかる!と思ったその時リュンヌが飛び出して牙を掴み突進をストップさせた。


「す、凄え」


 兵士たちは呆然としてる。


「何してんねん! はよ殺せ!」


 リュンヌの怒声に皆ハッとして動きが止まった魔獣を切りつける。

 しばらく攻撃していると魔獣は断末魔のような甲高い鳴き声を上げた後にバタンと横になった。


「おおーやったあ!」

「凄え! こんなデカイ魔獣を倒した!」

「俺たち凄え!」

「リュンヌが止めてたからやろうがアホか」

「何っ!?」

「何やねん鳥野郎!」


 魔獣を倒して一息と思った隙にケンカが発生。


「おいおいやめろ、皆頑張ったから倒せたんだろう」

「はあ? お前命令すんのか?」


 手に持っていた剣をこちらに向けてディパッシ族の男はガンを飛ばしてきた。


「やめろ、ロウゼの言う通りや。ケンカしたところで肉は増えへんやんけ。何の意味があるケンカやねん。後な、こいつが鳥人族かどうかは関係ないで」

「……ケッ」


 男はバツが悪そうに背を向けて立ち去った。


「いや、助かったぞ。流石、村で1番強いだけあるな」

「どうでも良いわそんなん」

「それに鳥人族かどうかは関係ないって良く言った。偉いぞ」

「ガキ扱いすんなっての。ふん、ホンマのことやろ。生まれ持った見た目でどうこう言われんのが嫌なんは分かっとるからな。俺らが言われてんのに内側で他のやつに同じことしてたらあかんやろ」

「成長したなあ……」

「だからガキ扱いすんなって! ……それよりさ、これ食えんのかな?めっちゃ臭いんやけど」


 魔獣をガッツリ受け止めたリュンヌには臭いがついていたが鼻が曲がりそうなほどの獣臭をまとっていた。


「後で水浴びだな。味は食べてみないことには分からんが」

「よーし! 皆今日は引き上げや! そいつの血抜きしよか」


 魔獣の血抜きをした後に捌いてそれぞれ大きな肉の塊を担いでダンジョンを後にする。


 後続の残りの班はボスは無しで最奥の扉にたどり着いた後は引き返していくことにした。


 さて、皆を元気づけるアレをやりますか。

アレとは一体なんなんでしょうか……


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