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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
32/101

結界の起動装置

 俺たちは日の出と共に目覚め、魔法で顔を洗い、朝食の準備を始めた。


「ふぁ〜……」

「リュンヌ眠そうだな」

「警戒しながら寝るのは疲れるんや。お前に見張りさせる訳にもいかんからな。というか敵が接近しても気付けんやろ」

「それは……悪かったな。カズは、眠らないか」

「ああ、睡眠は必要ないが姿を維持するのに無駄な魔力を消費する訳にはいかないので消えていたが」

「眠りというより省エネモードか」

「ショウエネモードとは?」

「いや、気にしないでくれ」

「ええからはよ飯にしようや」

「ああ、そうだな」


 朝食は黒パンとベーコン、それに生卵を焼いた石の上に乗せて作った目玉焼きだ。


「へー! 結構美味いな」

「あるもので出来るのはこれくらいだがな、朝食には丁度いいだろう」

「ふむ、中々悪くない」


 カズキュールはまた味覚の共有をして食事を楽しんでいる。もしかして俺が不味いと思うものでも美味しいと感じることはあるのだろうか?それとも感覚を共有しているから俺が美味いという感覚が伝わっているのだろうか?不味いと思うものを食べてくれと言われたら最悪だな。


「カズ、ものを特殊な空間に収納出来るような魔法はなかったのか?」


 アイテムボックス的な魔法があればいいなと思い聞いてみた。


「まーた魔法の話か、どんだけ好きやねん」

「いや、無かったはずだ。それに空間に関する魔法は私の専門ではない」

「専門ではないって事は空間に関する魔法もあるのか」

「あるが、仕組みなどは知らない」

「へえ、ならその石版も読んでみたいな」

「なら、その石版のある神殿に行く必要がある」

「どこにある?」

「知らない。私が知っているのは基本的に自分に関することと、私に関わった人間に関することだけだ」

「そうか……なら他の色々な遺跡、いや神殿にも行かなくてはならないんだろうな」

「君が求めるならそうだろう」

「いやいや、結界の神殿先やぞ! ダンジョン行けへんやんけ」

「分かってる分かってる、先の話だ」

「ならええわ」


 食事を終えて、馬に乗り神殿へと向かった。


「あー長い時間馬に乗るのがこんなに辛いものだとは……尻が痛い」

「まあ、貴族は馬車なんて調子に乗ったもん乗るから無理もないな」

「調子には乗っていない。貴族は自分で生活に必要な事はしてはいけないからやってるだけだ。従者の仕事を奪う訳にもいかんだろう」

「そんなもんかねえ」

「俺だって一々身の回りの世話をされるのは気を遣って楽じゃないから好まん」

「そうやったんか」

「普通に自分でやった方が早いことも多いからな面倒な時はある」

「まあ、せやな。屋敷なら飯の用意自分でしたらあかんとか着替えもやってもらわなあかんとかダルいな」

「ここだけの話にしてくれよ」

「はいはい、分かっとるて」


 愚痴をこぼしつつもどんどんと神殿へ進んでいき昼になる前に到着した。途中何度か尻が痛くて休憩したのだが数時間でたどり着けたのだから距離はそんなに遠く無かった。


「ここだ」

「おーやっぱりデカイなあ」

「これは一部だ。地面に埋まってしまっている」

「地盤の影響か……?」

「長い間放置されていたようだ。神の創造物が酷い姿だ」

「流石に全部掘り返すってのは無理だろうしな」

「魔法を使えば出来るだろう」

「いや、既に地中で崩れてたら掘り返したら崩壊するだろうから、やめておいた方が無難だ」

「そうか……なら仕方ないな。入ろう」

「おい! こっから入れそうやで!」


 いつの間にかリュンヌは神殿の周りを探索して入れる場所を見つけていた。

 天井部分と見られる場所に穴が開いていた。


「墓荒らし……いや、神殿荒らしか」

「ここは墓もあるので間違ってはいない。過去の土地の代表者はここで眠っている」

「そうなのか、まあ俺たちは宝が目当てで来ている訳ではないから良しとするか」


 天井から地面へは3メートルほどしかなく頑張ればジャンプしても大丈夫そうだったが流石に怖かったので風の魔法で衝撃を反発させて着地した。

 風の魔法があれば空を飛べると何となく思っていたが、これが意外に難しかった。

 身体の状態を常に固定していないと風の受ける影響が変化してしまい、安定して飛べないのだ。しかも長時間身体を固定するのは無理なので現実的では無かった。今のように一瞬の衝撃を和らげる程度だ。

 改善が必要だ。


 リュンヌは普通にジャンプして軽く着地していた。

 俺もレベル上げしようかな……そっちの方が早そうだ。


「お? 中は意外と綺麗やんけ」


 リュンヌの言う通り中は砂などがあまり入っておらず綺麗でヒンヤリとしていた。大理石のような素材で作られた床と壁は神殿と言うのに相応しい内装であった。


「こちらだ」


 カズキュールの案内のもと神殿を歩いていく。ここが使われたいた時代に想いを馳せると何か不思議な気分になる。元の世界で子供の頃にお城を見た時に観光地となってしまったが、昔はここで人々が生活していたのかと感慨深い気持ちになった。それに近い感覚だ。


 リュンヌはデケェ! ここに住みてえ! など馬鹿なことを言っていてムードが台無しになってしまった。


「この階段を登れば起動装置がある」

「この奥か……」


 階段を登り、その一歩ずつ足を前に送る度に謎の緊張感が増してくる。

 登った先にあったのは、魔法記号が彫り込まれた台座のようなもので、荘厳な佇まいをしており、神の創造物というものを嫌でも実感させられた。


「これが起動装置か」

「そこに魔力を注げばいい」

「こうか」


 カズキュールの指示のもと起動装置に魔力を流す。

 装置の溝の部分が発光し起動していることを教えてくれる。


「ここを押せ」

「ここか……これは……」


 そこに現れたのは空中に投影された地図、いや地図ではなく空中から撮った写真のようだった。


「衛星写真……」

「君の領地はどの範囲だ」

「え、ああ……えー、この辺りだ。この川と山が境界になっている」

「なんだ、これだけか?」

「小さくて悪かったな」

「……いや、君1人ということを考えるとむしろ好都合かも知れない。これなら君だけで充分賄える範囲だ」

「そうなのか、それでどうすればいい?」

「まずは魔力の流す土地の範囲を囲め」

「指でなぞればいいのか?あ、出来た」

「次に結界を張る範囲を先ほどと同じにすれば君の土地にだけ魔力が流れ、君の土地にだけ結界が張られる」

「あの、人間は通れるのか?」

「ああ設定を変えれば通れなくなるが魔獣を防ぐのだろう?」

「そうだ。人間が通れる事が分かればいい」

「ならば神に祈りを捧げながら魔力を流せ」

「祈りを捧げるってどうすれば」

「感謝の気持ちを持ちながら魔力を込めればいい」

「分かった……ハッ!」


 神に祈りを捧げながら魔力を注入していく。


「ぐっ……!? クハッ! ハアハア……」


 結構魔力を持っていかれて疲労感がどっと溢れる。


「後は私にダンジョンの起動を命令しろ」

「ハアハア……カズキュール、ダンジョンを起動しろ」

「了解」


「これで終わりか?」

「ああ終わりだ」

「よっしゃ! なら早速ダンジョン行こうや!」

「ハアハア……今日は勘弁してくれ……」


 神殿を後にして、屋敷へと帰っていく。


「ロウゼ、こいつどうするんや?」


 リュンヌはカズキュールを見て問いかける。


「取り敢えずは秘密だ。屋敷にいる時は姿を消してもらう。と言ってもロランには教えておくつもりだ。何かと動いてもらう必要があるだろうからな」

「あいつも大変やな、お前の我儘に付き合わされて」

「まあ、否定は出来ないな」

「あいつ、ビックリしよるんちゃうか!?」

「ビックリするだろうな。俺でも信じられん存在だ」


 馬を走らせ続け、街の門にたどり着いた時には既に夜になっていた。


「ロウゼ様、ご無事でなによりです。おかえりなさいませ」

「ああ、今戻った」

「それで、何か収穫はありましたでしょうか?」

「充分過ぎるほどにな」

「ほう、と言いますと?」

「話せば長くなる、湯浴みと食事をして今日は休みたい。留守にしていた間の報告とこちらの報告は明日にしてくれ」

「かしこまりました、準備が出来るまでしばらくお待ちください」

「分かった……ああ疲れた」

結界起動しました。領地が繁栄するといいですね


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