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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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夜営

第5話の後書きにリュンヌのキャラデザを追加しました。

「外に出るのか」

「外に転移出来なければ不便だろう」

「それもそうなんだがな。転移の魔法まであるとはな、是非研究して実用したいものだ」

「あー! 俺の肉置いてきた!!」

「肉は諦めろよ……」


 外はすっかり暗くなっていたので今夜は夜営して神殿へは朝に向かうことにした。

 夕食の準備をしていたのだが、リュンヌはどうしても肉が諦めろられなかったらしく、ダンジョンに入って肉を取り戻してきた。


「さあ、肉食おうや!」

「食おうやって言われても大したものは出来ないが……」

「何でもいいから焼いてくれ、火つけろ火!」

「俺は人間マッチじゃないんだがな」


 人使いの荒いリュンヌに急かされて串焼きを作っていった。塩と胡椒だけ僅かに持ってきていたので味付けをして完成だ。


「ガツッ! カァ〜!! めっちゃ美味いやんけ戻って取ってきて良かった〜!」


「カズキュール……言いにくいな、カズって呼んでいいか?」

「私を呼んでいると理解出来る言葉なら何でもいい」

「じゃあカズで」


 和名っぽいけどむしろ自分的にはその方がしっくりくる。


「カズも食べろよ」

「いや、私は生命活動はしていないので食べる必要はない」

「食べなくても良いのか、便利だな」

「何が便利やねん! 美味い飯食わんでも良いってことは損やろうが!」

「ま、そういう考え方もあるか」

「味覚が無ければ損なのか。ロウゼと感覚を共有すれば味を認識出来るには出来るが……」

「へえ、そんな事が出来るのか、やってみてくれ」

「分かった」

「何も変わらないな?」

「君の感覚を私の方向に流しているのだ君自体は何も変わらない。それよりも君は病気じゃないか?腹部に空白というか違和感があるのだが……」

「ああ、俺が腹減ってるからだろう。それが空腹という感覚だ。食事を取らないとそうなる」

「気分が良くない、早く治せ」

「食えば治る」


 串焼きの肉にパッパッと塩と胡椒をつまんでかけてやりパクりと食らいついた。


「あつっ……おお、結構美味いな魔獣って」

「やろ!? 取ってきた俺に礼の一つくらい言えや」

「ああ、ありがとうな」

「これが味覚か、なるほど。続けてくれ」


 どうやらカズキュールは肉の味が気に入ったらしい。

 その後も次々と肉を焼いてたらふく食べた。


「はあ〜、腹一杯や。久しぶりやわこんなに肉ガッツリ食えたんわ。ダンジョンってええところやな〜」

「確かに肉の心配が無くなる可能性があるのは大きいな。それに倒せば魔石も手に入るしな」


「あのさあ、それでちょっと思ったんやがディパッシの奴らダンジョンに連れて来られへんか?」

「ディパッシ族をか?」

「ああ、あいつらやったら余裕で魔獣も倒せるやろ。肉も取れる魔石も取れるで俺らが無駄に略奪する必要無くなるやろ。それにこれが一番大事なんやが、暴れる場所が必要なんやと思うんや」

「暴れる場所?」

「せや。今は街におるディパッシも訓練はしとるけど実践はしてへんやろ?俺らは戦いを求める一族やからそういう気持ちを発散させるような場所があれば良いと思うんや。今のままではどっかでキレて大暴れして人殺しかねんからな」


「なるほどな、確かに魔獣相手ならいくら暴れても構わんし丁度良いかもしれん。ついでに他の兵士や諜報部隊の者も訓練させられれば一石二鳥だ」

「せやろ、せっかくやし使おうや」

「まあ、それも結界が張れてからだがな」

「あー! そうやった……」

「それに結界が張れたとしてもしばらくは無理だ。情報統制する用意が出来てからだ」


「なんやねん情報統制って」

「そうだな……例えば、お前が良い狩場を見つけたとする。それを他のやつらに教えるか?」

「アホか! そんなことしたらそいつらまで来て俺の分が減るし揉めるやろ!」

「つまりそういうことだ。ダンジョンを教えたらその旨みを欲しがるやつが湧いてくる。俺たちが圧倒的に有利な立場になってからだ、外部に漏らすとしてもな」


「なーるほどな」

「だからちょっと我慢してくれ」

「しゃーないな。あ、そう言えば川で水浴びせんか?ドロドロやろ?」

「ふ、お前が清潔にすることを覚えるとはな。入らなくても俺が魔法で水を出せるがな」

「おー! 便利やな!」

「水を出すのは魔力消費が大き過ぎて飲み水程度なら出来るが、水浴びの量となると無理だったが魔力の制限が無くなったから幾らでも出せる。何ならお湯にしてやろう」

「お湯? 熱い水で水浴びすんのか?」

「本当は浴槽に溜めてそのお湯の中に身体を浸けたいんだがな」

「ああ、風呂か」

「カズ知ってるのか?」

「私の知ってる人間の生活ではごく当たり前のようにあったな」

「へえー昔の人はやっぱり良い暮らししてんたんだなあ、どうしてこうなってしまったのやら」

「それは私も知りたい。何故信仰が失われたここまで文明が衰退したのか」

「まあ、追々調べていく」


 火と水魔法の合わせ技でリュンヌをお湯で丸洗いしてやった。浄化の要素も足せば綺麗になる。

 火と風の熱風でドライヤーも出来てしまう。


「おー気持ち良いやんけ!」

「これに誰もが浸かれる風呂、公衆浴場を作ろうとしているのだが聞いていなかったな?」

「貴族の仕事なんか一々聞いてられるかい」

「ま、訓練と勉強でいっぱいいっぱいか」

「そうや、勉強はホンマに辛いんやぞ」

「知ってる。お前の何百倍も勉強しているからな。だがある時面白くなってくるぞ」

「勉強がか!?考えられへんな」

「まあ、そんなものだ」


「勉強と言えば、カズは計算の石版?だったか、だよな?」

「ああそうだ。あらゆる計算に関する知識と魔法記号が記されている」

「へえ、なら関数とか変数も扱えたりしないか?」

「関数と変数とはなんだ」

「あーそうか、この言葉では通じないから……」


 カズキュールに関数及び変数の概念について説明をしてみた。別に理系ってわけではないので正直正確に理解出来てるとは言えないが、仕組みとして出来る限りの説明をしてみた。


「ああ、ならばこの記号だ」


 石版を指差し、それぞれの記号の説明をしてくれた。


「なるほどなるほど、という事は……」


 1時間ほどかけて魔法術式を組み立ててみた。

 多少普通の魔法よりも長い詠唱となったが発動してみる。


「よしっ……ハァッ!」


 火を起こし、その火力を大きく変化させる事に成功した。更に、自在に動かせるようになった。

 これまでの魔法はエネルギーを一方向に押し出すか物にエンチャントするしか出来なかった。

 ベクトルを変化させる事が出来るのは画期的なのだ。

 今までは詠唱の度にどこにどのくらいの強さでという加減を一々指定していたのだが、そこの値を変化させられるようにすれば自在に動かせるというわけだ。

 プログラミングの授業でカーソルを動かすプログラムを書いた時のことを思い出し魔法に当てはめてみたら上手くいった。


「出来たぞ! これは便利だ、魔法っぽいな」

「そんな使い方をする人間は初めて見た」

「昔の人でもこれはやってなかったのか。あれ、そういえば数値を自分の意思で変化させて自在に動かすことに成功してる訳だが、その計算はどこで行われてるんだ?」


 プログラムの計算はコンピュータが裏で自動的にやってくれていたが、よく考えたらここにはコンピュータはない。


「私が演算処理している。計算を関する魔法の情報は私に送られて私が処理して君の魔法として反映出来るようになっている」

「お前コンピュータなのか」

「コンピュータとはなんだ?」

「いや、いいんだ忘れてくれ」

「君は魔法の才能があるのではないか?この短時間で新しい魔法を創造するとは」

「うーん、いや、無いと思うが先人の知恵ってやつだな。しかしこれではあまり使えないな」

「何故だ?」

「呪文の詠唱が長過ぎる。実戦でこんなに長々と詠唱出来る余裕の方が珍しいだろう」

「なるほど」

「術式全部を一つの魔法として登録出来ればその魔法の名前出すだけで発動出来れば楽なんだがな」

「出来るぞ」

「え?」

「出来る」

「出来るのか……どうやって?」

「私にその処理を計算をさせる術式を組んでおけばいい。術式の中に私と繋げる記号を足し、特定の名前を出すことを発動条件として定義すれば可能だ」

「どうすればいいか教えてくれ」


 持ってきた筆記具をカズキュールに渡して術式を書いてもらう。初めて見た記号の発音はルビを振っておいた。


「これで可能なはずだ、やってみろ」

「……火よ」


 ボッ! と音を立てロウゼの手から火が生まれた。


「おお! 出来た! これは凄い! 唱えるだけですぐに魔法が発動出来るなら魔法勝負なら敵なしだぞ!」

「気に入ったのならそれでいい」

「これ、もっと応用出来るな。他の魔法も……」

「おい、そろそろ寝るぞ!明日早いんやぞいつまで遊んでんねん!」

「それもそうだな、明日にしよう。今日のところはもう寝よう」


 おかんみたいな事を言うリュンヌに叱られて研究したくてウズウズしながらも眠った。

明日は神殿に行きます。


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