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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
29/101

遺跡調査

大発見です。

 本日はいよいよ、長い間先延ばしにしていた遺跡調査だ。領地改革で忙しくてそれどころじゃなかったのだが、新しい日常にも慣れて来て少し落ち着いたので、時間を有効利用しようと思い予定をねじ込んだ。出来るだけ素早い行動がしたかったので、今回は自分とリュンヌだけだ。馬に乗る練習をしていて本当に良かった。


 余裕を持って三日間の旅程だ。トゥルーネに保存の魔道具を貸してもらい食料をつめ込み、筆記具を持って朝早くに出発した。これでも必要最低限の二人分だが結構な大荷物になってしまったので、よくあるアイテムボックスがあれば異世界生活は楽なのだが……冒険者でもなければ無理だろうな。というかこの世界に冒険者などが存在しているのかすら怪しい。

 一応魔獣は出るらしいのだが、特定の場所にしか生息しておらず普通に生活していて脅かされるということはないらしい。

 ダンジョンが存在しているという話は聞いた事がないし、やはり魔法以外は意外とファンタジー要素はないのかも知れない。


 遺跡までは半日もかからないほどで、街の外れにあるらしいが実際見たことないので地図を頼りに向かうしかない。そう思うとグーグルアースって凄く便利だったな。ナスカの地上絵も未発見のものすらグーグルアースで発見されたらしいのだから遺跡の発見も出来そうだ。人工衛星は流石に無理としてもドローンで空撮くらいは出来れば良いな。


「あ〜久々の外出やな!」

「そうだな、ここのところ仕事ばかりで忙しかったしな」

「今日は勉強せんでもいいし、他のやつからなんか文句言われたりもせんし気が楽やわ」

「俺は今日はお前と常にいると思うと頭が痛いがな」

「か〜っ! そう言いなさんなやロウゼの坊っちゃん」

「黙れ」


 リュンヌの戯言に適当に相手をしつつ、遺跡へと向かった。

 日が丁度真上に来た辺りで、遺跡が見え始めた。


「あれか! デッカいな〜」

「うむ、かなり大きいな」


 遺跡は洞窟の中にありその入り口には白い石が積まれた門のようなものがある。崩れかかり苔むしてはいるが立派な石だ。ストーンヘンジのような感じだとパッと見で思った。


「クンクンッ……獣の臭いがするな」

「獣? この近くにいるのか?」

「いや、中からや。寝床にでもしとるんちゃうか?」

「確かに獣が寝床にするには丁度な場所かも知れないな」

「まあ、俺がいるから心配せんでもええで」

「だろうな、お前が獣みたいなものだ」

「誰が獣や!」

「獣がいるなら安全な場所で今のうちに入る前に飯にしよう」

「おい! 無視かよ!」


 リュンヌを無視しながら昼食の用意を始める。コンロなどは持ってくることは出来ないし大した料理も作れないので作り置きのものを保存できる魔道具に入れただけの黒パンのホットドッグもどきだ。地味に屋敷で流行っている。パンの酵母の作成の温度調整が微妙に難しくて白い柔らかいパンの開発には成功していないのが実際のところだ。


 ケチャップはトマト、厳密にはトマトに味や食感は似ているが茶色に近い赤のトマトっぽいやつと、タマネギをミキサーにかけて塩と砂糖、胡椒で味付けすることでぽいものを作ることに成功したので料理の幅は広がった。

 ポムドテルのフライを食べている時にケチャップが欲しくなったので作った。


「それにしてこのケチャップは素晴らしいな! 何にでも合うわ」

「何にでもかけるのは流石にどうかと思うが」


 マヨネーズ作ったらこいつマヨラーになりそうだな。


「味がついてない飯が多いから濃いと嬉しいやろ」

「まあ、一利ある」

「遺跡結構デカそうやけど一日で回れるかなあ」

「規模に関しては分からんからな、無理そうだったら途中で帰るぞ」

「へい〜」


 ホットドッグを食べ終わり、片付けを終えて出発の準備を整える。馬は近くの木に繋いでおいた。


「さあ、行くか」

「おう」


 遺跡の中へ入ると、ヒンヤリとした空気が漂っており涼しかった。

 灯りは松明だけだが、所々壁が光っていて思っていたよりは暗くなかった。

 バクテリアか何が発光しているのだろうか……?


 火の玉を魔法で作り遠くに投げ飛ばす。


「よっと」

「何してんねや」

「空気があるか確かめているんだ」

「それと何の関係があるんや?」

「火は空気が無いと燃えないから、消えれば空気がない事が分かる。ガスが溜まってたら危険だしな、ガスが溜まってたら爆発するかも知れんから一応念の為にな」

「ほーん、流石貴族の坊っちゃん、物知りやな」

「勝手に言ってろ」



 しばらく探索していると、その先には、やや大きな空間が広がっていた。体育館くらいの大きさはありそうだ。


「止まれ」

「ん?」


 リュンヌは左腕で俺を制し、歩みを止めた。


「おるな……」

「魔獣か」

「俺から離れんなよ」

「分かっている」

「……出てきたな」


 壁の横穴から出てきたのは大きなイノシシ?のような魔獣だった。長く伸びた牙が4本なのでイノシシではなさそうだが、姿はそっくりだった。3メートルほどあることを除けば。


「デカっ……」

「デカイな、こんなデカイ獣始めてみたわ、面白いやんけ」

「勝てるのか」

「……あのなあ、自分より強いか弱いかくらいは見たら分かるやろうが」

「いや、ディパッシ基準で言われても分からん」

「あ〜、弱過ぎると逆に分からんのか」

「弱過ぎるとか言うな、頭脳派なんだ俺は。さあ、いいから肉体派やってくれ」

「あーはいはい」


 リュンヌは踏み込み、こちらにその衝撃の風が伝わって来たその一瞬で間合いを詰めて、イノシシみたいな魔獣の眉間に拳を叩き込んだ。


「プギッ……!」


 大きな鳴き声を上げる暇もなく生き絶えた。拳を叩き込んだと言ったが、拳が眉間にめり込んで陥没していたから脳が破壊されたのだろう。


「怖…お前怖いわ」

「今更やろうが、てかお前と会ってから生き物殺してなかったしこれくらいでビビられたら困るわ」

「あ、ああ……ん?」


 魔獣はゆっくりと半透明になっていた。


「何だこれは」

「うわっ!? なんやこれ」


 ジッと観察していると、とうとう透明になり肉体が消えていった。そして残ったのは二つに割れた拳より少し小さいくらいの石のような塊。


「これは……魔石じゃないか」

「魔石ぃ? お前らが大好きな魔石か」

「別に大好きという訳ではないが……魔獣を倒すと魔石が得られるのか。それにこれは結構質が良いな、ありがたい」

「魔石って……俺はこいつの肉が食えると思ったんやけど」

「確証は無いが、この魔石は額についていただろう、お前がそれを殴って破壊したからじゃないか?」

「俺のせいかよ」

「次は魔石を破壊せずに殺してみろ。違いを調べてみたい」

「……まあ、肉食えるならええか」


 更に進んでいくとまた魔獣が出た。今度は魔石を破壊せずに倒してみたのだが。


「ああ! 消えていく!」

「どうやら、死んだらここに吸収されていくようだな……殺した瞬間に魔石近くだけ切り離せば消えなくなるかも知れないな」

「じゃあ殴るんじゃなくて切った方がええってことか?」

「かも、知れないだけだ。ほらまた来たぞやってみろ」

「よしっ」


 リュンヌは素早く腰にかけているカーブした剣で魔獣の首をはね落とした。

 首は地面に落ちた後、ジワジワと透明になっていくのに対して、胴体は消えて行かない。


「おお! 消えへんぞ!」

「ふむ、魔石のある部分と切り離されていればその部分は魔獣と認識されずに吸収されないといったところか……? そして魔石だけ残ると」

「何でもええわ、肉食えるやんけ!」

「肉より魔石の方が良いぞ。この魔石でどれだけ肉が買えると思ってるんだ馬鹿だな」

「何!? 魔石で肉買えるんか!早よ言えや」

「前から言ってるのだがな、お前が聞いてないだけだ」

「言ってたか〜?」

「言ってる、魔石は価値があると、金になると」

「あー、だから肉が買えるんや!」

「もういい、疲れる」


 更に先へ進むとより大きなホールに出た。コンサートホールくらいはありそうな巨大な空間だ。

 そして奥には大きな碑石のようなものが佇んでいる。その真上から光が差し込み、そこだけ光っているように見える。


「これが遺跡か……やはりお前の身体に書かれたものと同じ記号が彫られているな。父の本にまとめてあった通りだ」

「で、何て書いてるんや?」

「分からん。知らない記号が多過ぎる」

「は〜!? ここまで来て何も分からんじゃ意味ないやんけ」


 バシンとリュンヌが俺の背中を叩く。前につんのめってバランスを崩し碑石に手をついた。


「おおっと……! 痛いぞ! 意味がないことはない。新しい記号が知れたのだからその分解読の難易度も下がるし、魔法の研究だって……」


 ガコン!


「え?」


 手をついた部分が凹んでいた。その部分の石から魔力が吸われていくのが分かった。

 碑石はゆっくりと光を出し始めカッ!! と光り視界は真っ白になった。

 再び、目を開けると先程とは違う空間にいた。どうやら転移させられたらしい。

 巨大な石で作られた神殿、とでも言うのだろうか一目で神聖な場所なのだと直感した。

 ゴシックの教会は神の存在を意識させることを考えて作られているというが、まさにここはそうだろう。

 建築というものを通して神を伝える、建築物もまたメディアの一つだ。神の威光のメディアとしての建築。ここはそういう場所だと感じた。


 中央には、いくつも記号がびっしりと書き込まれた円柱の上に不思議な事に浮いているタブレットサイズの石版があった。


「これは一体……」


 ゆっくりと手に取るとまたもや魔力が吸われているのを感じた。しかも先程よりも大量の魔力を吸われている。


「おいっ! また勝手に触って……」


 またもや光に俺とリュンヌは包まれた。

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