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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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ロウゼのポップコーン工場

 エッセンがテルノアールで働くようになってからロウゼ商会を立ち上げた。そして最初の事業として安易に作ることが出来、量産可能でコストも低いということでポップコーンをジュアンドルに次ぐ商品として押し出していくこととなった。

 そして効率的なものをと考えた先に出たのが工場で、ポップコーン工場を作る事となった。


 最初に躓いた問題が保存だ。ポップコーンは湿気ると美味しさが半減してしまう。輸出というよりは店先で販売してその場で買ってもらいすぐに食べるのがベストだ。乾燥剤として思いつくのは生石灰、炒り米、珪藻土などだが米はないので無理。包装をどうするかというのがポイントとなってきた。


 そもそも、この世界は食品の保存技術がかなり低い。冷蔵庫もないし、真空包装も出来ないので塩漬けか燻製が良いところだ。


 トゥルーネによると貴族は保存の効く魔道具があるらしいのだが、それを持ってこさせればそれで解決すると言うのだが、それでも魔力は出来るだけ使わない方が良い。わざわざポップコーンの為に貴重な魔力を使うなんて奴は相当なもの好きだろう。

 元の世界では、保温できる事から魔法瓶なんて言われるものがあるが、この世界ではそれが比喩では無く、マジにあるのがちょっと面白い。


 色々考えた結果、そこで解決策として出たのがクズ同然の魔石をポップコーンと一緒に瓶の中に入れて保存する方法だ。

 吸水効果のある水の属性を持つ魔石を利用すれば湿気るのを回避出来る。

 クズ魔石でも瓶の中の水分をジワジワと奪うことは出来るので何とかなった。ただ、その分クズ魔石と言っても無料ではないので少し割高になるが遠くに持ち帰りたいなら多少根が張るのも致し方ないだろう。

というか、出来るならそんなに大量にある訳でもないので返してもらいたい。

 クズ魔石をポップコーンを食べた後に返してくれたら、次は割引みたいな制度があっても良いかもしれない。駄菓子屋とかで瓶を返したらちょっと安くなるシステムと同じだ。逆に、クズ魔石持参で割引もありかも知れない。


 話は最初に戻り、何故工場が最適と考えたかと言うと、それは歴史を見ても明らかで、産業革命やフォードの機械化によるライン生産方式が高い効率を誇り、歴史の転換点となるほどだからだ。

 一つのものを工程分けして部分ごとに担当するものを決めて、一人一人が同じ作業を続け、どんどんと違うセクションに渡していく方式を採用した。

 これは後々他の分野でも応用したいので出来るだけ単純な作業のものでテストしてみたかったという狙いもある。単純にしないと出来ないかも知れないという理由もあるがそれは後で話そう。

 トゥルーネやエマには自動化、ライン生産が最初は理解を得られず人員の無駄遣いだと叱られたのだが、作業効率を見れば今は誰も文句を言うまい。

 工場は職人の工房なんかよりも、めちゃくちゃ画期的なのだと熱弁を振るい許可をもぎ取った。


 そして、従業員だが真面目に働いてさえすれば正直、誰でも良かったのだが、皆それぞれ仕事がある為新しい産業の働き手として手の空いている人員は居なかった。ので、手の空いてる子どもを雇った。


 産業革命からの子どもと聞いてピンと来てしまった人がいるかも知れないが、もちろん、十九世紀イギリスのような過酷な労働はさせないし、ちゃんと労働基準法は守るので安心して欲しい。


 労働基準法についてもそのうち広げて皆が気持ちよく働ける平和な領地に出来たら良いなと思う。

 当初は来てくれるか心配していたのだが、ここは貧しい領地の為、子どもでも仕事があると聞けば街中の子どもたちが工場へ詰めかけてくれた。


 まずは食品を扱うので衛生管理について教えた。子どもは素直なもので、やるものだと教えたら何も言わずに実行してくれた。

 絶対に鼻くそを仕事中に掘るなとか具体的な注意までした。

 素直に首を縦に振り、言うことを聞くのは貴族である自分にビビっているというのもあるかも知れないがビビってでも衛生管理してくれるのは貴族で良かったと思う。いや、ビビってるのは後ろにいるリュンヌかも。リュンヌだな。


 そして、ポップコーンの作り方について教えた。コーンが跳ねてポンっと音がしたと思ったら白い綿のようになるのが面白いようで皆はしゃいでいた。

 ただし、絶対にこれをここにいるもの以外には、教えてはいけない。教えれば働けなくなるし、自分たちの給料が減ってしまうと言えば、先程まで楽しげだった子どもたちは、たちまち真剣な顔つきになり、そんな馬鹿な真似するもんかと言うものもいた。

 確かに、自分たちの仕事が無くなったら困るのは自分たちなので、元の世界の子どもよりもそこら辺は、しっかりしているのかもしれない。

 まあ、シビアにやってくれる分には良いだろう。仕事の有り難みをわざわざ説明しなくても分かってくれているのは手間が省ける。


 そして調理していると、欠食児童があまりにも多くポップコーンの匂いに刺激されて、ダラダラとヨダレを垂らし腹を鳴らして、食い入るように見つめている姿は流石に領主としても、大人としても心苦しく、心配だったので、給料も含めて出来た一部のポップコーンは食べていい事にした。

 人間食事が大事なので、美味い飯で釣るというのは効果があるものだ。甘いのでは無く将来的な領地の為に働き手を自ら育成しているだけなのだ。決して甘い訳ではない……ないのだ。

 塩は高価なので子どもたちが食べる分には使えないがそれでも満足らしい。バターを持参させてかけても美味しいかも知れないな。


 その後、交代や休憩、休日、道具の扱いや保管など諸々の運営していくなかで必要な注意事項を説明し解散となった。


 次の日は誰も遅刻欠席なしで集まり、いよいよポップコーン工場が始動した。クズ魔石の保存をせずその場で買うには比較的安いのだがそれでも商人や、やや余裕のある平民しか買えない値段ではあるし最初は他領からもよその土地からも買いに来ないのでそこまでは売れないだろうとタカをくくっていたのだが、工場始動の当日にロウゼ商会の店先で販売したら飛ぶような勢いで売れ出した。

 口コミが口コミを呼び昼前には行列が出来て工場の子どもたちにはドンドン作ってもらわなければ間に合わない程だった。

 初日の売り上げは上々、子どもたちは慣れない労働でグッタリとしていたがその分給料はしっかり払うので頑張ってもらいたい。


 来年にはポムドテルも収穫出来るだろうし、ポテトチップスも売ろうと思うけど大丈夫か……?新たにポテトチップス工場も作らないといけないかも知れないな。


 そしてポップコーンやポテトチップスと言ったらコーラが飲みたくなるのだが、コーラのレシピは流石に分からないので再現しようがない。コーラもどきの開発もしてみようか……コカの葉があれば出来るか……ってこれ以上麻薬を蔓延させようとしてはいけないか。


 コーラとポップコーンと言えば映画だが、将来的には映画館もやりたい。映像の原理や歴史は大学で専門としていた分野なので時間と技術さえあれば可能だ。魔法との合わせ技で4D映画みたいな体験も追加出来るかも知れない。


 映像か……まずはカメラとゾートロープから作らないといけないけど、知らない人が見たら魔法と区別がつかないかも知れないな。

 絵を動かすところから始めたいけど、絵師か誰かいれば良いのだが、絵師……絵描き……なんか嫌な予感という気配というか記憶が……一体誰だろう……

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