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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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ディパッシズ・ブートキャンプ

ビシバシ鍛えられてます。

 ディパッシ族によるスパルタ指導は今日も行われている。俺はこれを脳内でディパッシズ・ブートキャンプと呼んでいる。

 平民の兵士とスパイの卵の亜人達をビシバシ鍛えて領地の戦力の底上げを行なっている。

 ディパッシ族は単にパワーが人間より上というだけでなく、戦闘に対して深い理解を示し、それぞれの適性を見極め、何をどう伸ばせば良いのかを正確に把握出来るのだ。

 しかし、戦闘に関しては最高のプロなのだが指導のプロではないというのが問題だ。言語化があまり上手くない奴が多い。言ってる事自体は正しいし、本質を突いているのだが擬音語がやたらと多い。人に教えるというのは自分たちが無意識に行なっている動作を意識的にし、更に言語化するという高度なプロセスが含まれているのでディパッシ族には一番勉強をしてもらう必要があるかも知れない。逆に、自分たちの動きを他人に説明出来るほどに理解出来れば更に強くなる可能性もある。良い傾向だ。

 一生懸命説明しているのだがガアッーとやれとか、スッスッや!とかそれじゃあ伝わらんだろうと言う教え方で亜人たちも分からねえよ!とキレ気味に返事し、ディパッシ族も伝わらないことにイライラして毎日訓練場は騒がしい。

 亜人たちはディパッシ族に自分たちの代表がボコボコにされて以来、自信喪失してしまったかと心配したが逆にディパッシ族という共通の敵が出来たことから、いつかあいつらをギャフンと言わせてやると団結力が高まっていて良い雰囲気だ。ディパッシ族のやつらは別に亜人に対して悪い感情を抱いている訳ではないのだが、いつでもかかって来いとか、まだまだやなとか無意識に煽りを入れて更に亜人たちの訓練に力を入れさせる一因となっていた。


「どうだ、調子は」

「皆そこそこ上達してきていい感じちゃうか? ちょっと気になることはあるけど」

「ああ……しかしこればかりは時間がかかるだろうな」


 問題があるとすれば種族間での結束が強くなり、その反面種族同士で固まり過ぎというか壁のようなものを感じる。

 特に兵士と亜人たちは仲が良いとは言えない。

 内側で派閥を作ってやっていく余裕などないのだが……一丸となって戦うにはまだ時間がかかりそうだ。


「まあ、亜人間での壁の対策については少し考えている。上手くいくかどうかは分からんがな」

「へー、どうすんねん?」

「学校の準備が出来れば教える」

「ガッコウねえ、よく分からんけど勉強するんやろ?」

「お前も勉強してもらうぞ」

「ゲッ!?」

「部族の頭が馬鹿では話にならんだろう。お前がやらないと下の者はついてこないぞ」

「それはそうなんやが……勉強かあ、文字覚えたりしなあかんのやろ?出来る気がせんわ」

「出来る出来ないではなく、やれ。戦い方が増えると思えば少しはやる気が出ないか」

「戦い方が増える?」

「知っていることが増えればその分考えることが増える。弓の持ち方を覚えれば遠くからでも獲物が狙えるのと同じで、違うことが出来るはずだ」

「言うてることは分かるんやが勉強したら戦いで活かせるってのがイマイチ分からんわ」

「活かせるかどうかはお前が活かす気があるか次第なんだから真面目にやれ」

「はあ……」

「教わるだけなら良いだろう、俺は馬鹿なお前に初めから教えないといけないと思うと頭が痛い」

「馬鹿ちゃうわ! 知らんだけや!」

「あー……そうだな、はいはい」


 まあ、戦闘センスや本質を見抜くことは出来るので間抜けではないのは知ってるが馬鹿なんだよな。

 すぐキレるし、感情で動き過ぎてるのがもう少し落ち着いてくれたら助かるが俺の教育にかかってると思うと荷が重いな。


 さて、カリキュラムだが……訓練は体育として後は国語算数の読み書き計算とプラスで礼儀作法か。

 専門的なスパイ訓練はそれが出来てからだな。

 というか正直自分も良く分からないから専門的なスパイとして必要な技術についての検討もしておかないといけないがそれは後回しで良いだろう。

 午前中は勉強、午後は訓練と言った感じでやっていくか。後は規則か、始業、終業の挨拶はまあ当然として遅刻に関する概念、連帯責任くらいは最低限か。

 制服……は要らないな。服装や髪型の規定は必要ないが身だしなみを整えると言うのは覚えてもらおう。

 潜入活動として貴族に関わる情報となれば貴族に近いものとして変装する必要なども出来そうだし訓練しておかなければ咄嗟に普段の振る舞いが出てしまうだろう。


 そして種族同士の壁だが……この機会だ、班制を導入するか。それぞれの欠点を補えるバランスの良いチームを構成することが将来的な理想だ。今のうちから信頼関係を作っていけば危険な時でも助け合える。

 スパイとしてやっていくに当たって敵にその存在を知られるというのは最悪のパターンだ。よって死を選ぶという選択肢は許されない。スパイにおいて生き残るには見捨てるという発想はあり得ないだろう。その為にもチームワークは必須だ。

 亜人は4種族いるし、それぞれ一人ずつのフォーマンセル(四人一組)でチームを作り学校生活での成績もチームで評価しよう。

 日常生活だが今は種族ごとに寝る部屋を分けてるが班毎にするか、いや、人間じゃないんだ種族特有の生活に合わせて分けたままの方が良いか。


 色々考えた結果一日のスケジュールは以下の通りになった。


 7時:起床及び洗顔、歯磨き、着替え、部屋の掃除などの準備

 8時:学校の始業時間、連絡事項の共有いわゆるホームルーム、休憩時間及び授業準備

 9時:読み書き(50分で10分休憩)

 10時:計算(同上)

 11時:礼儀作法(同上)

 12時:昼食及び休憩

 13時:訓練開始

 18時:訓練終了、ホームルーム、休憩

 19時:夕食

 20時:夕食終了、水浴び

 21時:以降自由時間(宿題などもここでする)

 24時:就寝


 おおよそはこんな感じ。問題があればその都度修正いれて探りながらやっていくしかないだろう。

 テストとかもそのうちやってみるか。


 日常の生活に関する規範は兵士達と現状は同じで適宜学校は学校に合ったやり方が生まれてくるはずだし、規律と協調性をまずは身につけてもらいたいところだ。


「あー! 死ぬ! 水水!」

「マジでキツ過ぎる!」


 訓練に当たって、水分補給をルールに加えた。この世界では熱中症とかそういう知識が欠如していたし、水が飲めるほど綺麗でもないので問題だったが屋敷においては水はいつでも誰でも飲めるようにした。トゥルーネと共に開発して、まずは試験的にということで屋敷に濾過装置を設置して飲み水を確保した。基本的な汚れは濾過装置で浄化し細菌等の心配もあったので浄化の魔法で補助した科学と魔法のコラボレーション魔道具だ。

 流石に訓練中に酒などは飲めないし丁度良かったと思う。


 今日の訓練は終わったようで全員グッタリとしていたが会話は出来るのでかなり体力はついたと思う。

 最初は吐くものも何人もいたし、会話すら出来なかったのだから大きな成長だ。

 ディパッシズ・ブートキャンプは毎日が運動部の合宿のようなノリなので自分はついていける気がしない。

 護身も兼ねて多少の訓練は参加しているがそれ以外に領主としてする事があまりにも多いので本当にたまに、というレベルだが。

 因みに、最近は馬に乗ることが出来るようになった。

 貴族は普通は馬車に乗って移動するが覚えていて損はないかと思い練習した。



「最初はめんどくせえって思ったけど訓練終わりの水浴びは気持ち良くて結構良いもんだな〜」

「俺も逆に汗流さねえと気持ち悪くなっちまったよ」

「貴族みてえになっちまったな!」

「ちげえねえ!」

「「「ガハハハ!」」」


 皆水浴びが馴染んできたようで最初は不評だったのだが綺麗好きになったものだ、全員臭かったし衛生的にも問題あったのでこの調子で領土全体に広げていきたい。


 さて、戻って俺は教材と授業の準備をせねば……本当は自分の魔法の研究もしたいんだがなあ。先代の魔法書もまだちゃんと全てには目を通せていないし、魔法の記号に関しては誰も知らないようなので謎がかなり多い。かなり古い時代のものなのかもしれない。

 一体どこで覚えてきたものなのだろう。

 古い……そういえば遺跡がここにはあったが……遺跡に行けば古い時代の文字とかあるのかも知れないな。

 遺跡……ギーズ卿が興味を示していたしまずは自分が調査してからと断ってる手前見ておかないといけないがこの調子ではいつ行けるのやら。

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