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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
23/101

ディパッシ族vs亜人 前編

キリの良いところで切ったので前後編に分けました。

 亜人を諜報部隊として起用する為に各地の亜人の村や街に触書きと連絡をさせた。若く、訓練が可能なやる気のある者を募集、村から来た人数によって農作業の負担が増えることから税収を減らし、給料も出すという旨で募集をかけた。

 そして屋敷の庭に各地から集まってきた亜人たちが集まった。


「一体どんな仕事をやらされるんだろうな」

「聞いた話じゃ奴隷並みにこき使われるらしいぞ」

「本当かよ、うわあ来なきゃ良かったな」

「税収が少しでも減って村のためになるならと思ってきたが……」

「領主様がディパッシ族を従えてるのは本当だったんだな」


 など、様々な話を不安の表情で交わしていた。

 俺はこの作戦の立案者、責任者としてこの説明会の場を用意した。


「静かに! テルノアール領、領主であるロウゼ様より挨拶と説明があります」


 ロランがガヤガヤと騒いでいる亜人たちに静かにするように注意をする。


「私がロウゼ・テルノアール。テルノアール領の領主だ。招集に応じてくれたこと感謝する。其方達には、特別任務に参加してもらう」

「特別任務……? 戦地に駆り出されるのか!?」


 特別任務と聞いて危険な仕事をやらされると思った亜人たちは次々に不安と後悔の声を上げる。


「静かに! 戦争に借り出したり奴隷として働かせる訳ではない、安心せよ」


 じゃあ一体何をやらされるんだ? 警戒の表情を浮かべながらも貴族の命令に怯えながら慌てて黙る。


「この中に……自分たちの村がいつ他国や他領に攻められるか分かるものはいるか?」


 そんなの分かるわけがないと言いたげに互いの顔を見合わせて困惑しながら首を振る。


「誰も分からないか。では、今この瞬間に侵略されていたら何が出来る? そこのお前、答えろ」


 目の前にいた、犬人族の男に問う。


「……何も出来ません」

「では、1ヶ月後に攻められると知ったらどうする」

「戦う準備をするか、逃げます」

「その通りだ! 知っていれば対策が出来る。その知っているということがなりより重要なのだ。そしてその情報が自分たちの身を守る武器となるのだ」

「情報が武器……?」

「何の話をしているんだ?」


 よく分からないという顔を全員している。


「重要な情報を手に入れることが出来れば戦いを避けることも利益を得ることも出来る。情報は食べ物や金と同じくらい価値があることを知れ。そして、其方たちを呼んだのは、これから情報を集める任務についてもらうためだ。何か質問があるものは手を挙げよ」


 一人の猫人族の男が恐る恐る手を挙げる。


「はい……あのそれは危険なものですか?」

「危険だ。場合によっては死ぬかもしれないし捕まれば奴隷落ちするかも知れない。戦う必要もあるだろう」

「そんな……俺たちにはそんな経験ありません」

「ふむ、ではこの中に戦闘の経験がある者、手を挙げよ」


 手が挙がったのは100人ほどいる中でおよそ10人。


「では、文字の読み書きが出来るものは?」


 これはもっと少なく2人。


「少ないな。何かあった時どうやって身を守ることが出来る?」

「俺らは農民です、そんなお貴族様のようなことは出来ませんです」

「では、其方たちにその両方の教育の機会を与えよう」

「あの、働かされるのでは?」

「ああ、だからまずは勉強と訓練が仕事だ」

「勉強が仕事?」

「任務を遂行するには知識と訓練が必要だ。任務に必要なことを覚えるのも仕事だ。やるからには徹底的にやるぞ。いいか、私は領主として領地を守らなくてはならない。領地を守るというのは其方たちの住む村や町を守り、其方たちの身を守るということだ。其方たちは自分たちの大切なものを守る為に働いてもらう。守りたければしっかり仕事をしろ、いいな?」


 しばしの沈黙の後ハッとしたように声が上がる。


「俺たちの村を守るために働く……」

「確かに村を襲われたら俺たちは何にも出来ねえな」

「勉強なんて農民がそう出来るもんじゃねえぜ!? しかもそれが仕事だってよ?」

「凄えぜ! おい!」


 俄かに活気があふれ始めた。


「では、まずは実力を測らせてもらう。リュンヌ後は頼んだ。絶対に殺させるなよ」

「分かってるわ。これからは同じ土地守る仲間やろうが」

「分かってるならいい」


 俺は一歩下がり、リュンヌが一歩前に出る。


「俺はディパッシ族のリュンヌや! ここにいるディパッシ族を仕切っとる。種族は違うし俺らが嫌いなやつがいるのも分かってる。せやけど、これからはお前ら全員同じ土地守る仲間や! よろしく頼む!まずはどんぐらい戦えるのか知りたいからディパッシ族と戦ってもらう。武器はなんでも良い、俺らは武器ぐらいでは死なんから遠慮せんでもええで! さあ並んで好きな武器持って来い!」


「ディパッシ族と戦う!?」

「死んじまうぜ!?」


「どうした!? 早くしろ! 明日にでも敵は村襲ってくるかも知れんぞチンタラしてる時間はないで!」


 それぞれのグループでお前が先に行けと押し付け合いが始まりながらも実力テストが始まった。

 前に出てきたのは4人の亜人たちだ。

 どうやらそれぞれの種族で一番の実力者を最初に選んだらしい。


「おいおい、偉そうにしてるけど何故ディパッシ族がデカイ顔するかなぁ?」


 リュンヌの前に出たのは鳥人族のフォールス。鳥の中でも種族で言えば隼だ。隼なら飛ぶのが速いだろう。


「たしかにディパッシ族にしては偉そうね」


 テルンの前に出たのは猫人族のネフェル。唯一の女性で並んでいる時点で目立っていた。種族で言えばオセロットだろうか? しなやかな筋肉がついていて軽やかな動きが出来そうだ。


「俺がいく。俺が勝てないなら誰も勝てねーわ」


 直接話したことはないが見張り役らしいコンテヌの前に出たのは犬人族のライカ。種族で言えばドーベルマンだ。ピンと短い耳が立っている。嗅覚と目が良さそうだ。


「力なら負けねえ…噛みちぎってやるぜ」


 マノツァの前に出たのは蜥蜴人族のセベック。蜥蜴人族というより爬虫類族と捉えた方が適切かも知れないが顔はワニだ。確かに顎の力も筋力も凄そうだ。


「へえ、結構根性あるやつもいるんか。お前ら! ほどほどにしといたれよ!」

「リュンヌ一々大声を出さなくても聞こえる」

「ははっ元気やなぁ」

「うむ……加減が難しいな」


 ディパッシ族はそれぞれの前に出た亜人たちに挑発とも言えるような態度をとる。


「行け! ライカ! お前が頼みだ!」

「ネフェルは村で一番運動神経が良いんだ! ディパッシ族になんか負けるな!」

「フォールスの速さについていけるやつなんている訳ねえ!」

「セベック! バラバラにしてやれ!」


 ディパッシ族の舐めたような態度に亜人たちは腹を立てたのか自分たちの種族の代表を応援し始めた。


「ほんじゃ、始めよか」


 ディパッシ族対亜人の勝負が始まる。

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