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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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魔道具の作り方

トゥルーネ視点です。

 私はトゥルーネ・アヴェーヌ。アヴェーヌコンテ伯であるルークの妹です。今まではアヴェーヌの屋敷で文官仕事として兄の執務の手伝いをしていました。実務は私で兄は最終確認という感じですので兄にはもう少ししっかりしてもらいたいものです。お人好しなので他の貴族に付け入られる隙を与える事も多々あります。

 ロウゼ様に文官として働くように命じられ、アヴェーヌから離れました。兄は仕事が増えるから行かないでくれと頼まれましたが、本来コンテ伯である自分でやらなくてはいけない仕事です。私は魔道具の研究が好きなのでそちらが出来る方に行きたかったのです。というのは半分建前です。

 先代の領主様が亡くなられ、新たにロウゼ様が領主となった途端領地は大きく動き出しました。ロウゼ様より2つ歳下の私は幼い頃からロウゼ様を知っていましたが、歳上で領主の息子である割にボンヤリしたお方だと思っていたのですが葬式で倒れて以来別人のようにお変わりになりました。

 ディパッシ族を率い、新たな商品を生み出し、料理の開発、領地の改革など、全て今までのテルノアールでは考えられないことです。テルノアールは領地も小さく土地は痩せていて作物は中々育ちませんし、木があるくらいで木の輸出くらいしか特色、と言えるほどではありませんが、無かった土地です。

 ジュアンドルという嗜好品は薬の効果もあり同様の効果があるケシなどは中毒性が高く、重症の怪我人や病人の気休めにしかならないものですが、中毒性が殆ど無く服用出来るというのは画期的です。ディパッシ族が作っているというのは信じられませんし何か裏があるのではと思っています。

 そして料理ですがポムドテルという野菜を取り入れられました。痩せた土地でも収穫出来、栄養価も高いというものを王都で見つけたというのですがこれも信じられません。他のコンテ伯の方々はその味に大層感心していらっしゃいましたが、私が気になったのはそこではありませんでした。調理方法が既存のものとは全く違ったのです。料理は大体、焼くか煮るかですが高温の油で『揚げる』というものです。今までなかった食品を今までなかった調理方法で料理するというのは明らかにおかしいです。

 ロウゼ様の急激な変貌、突飛な行動の裏に一体何があるのか。それを私は見極めなくてはならないと思いこちらに来る提案を受けました。


 屋敷や使用する部屋の紹介、使用人たちとの挨拶を終えた私は早速ロウゼ様と開発する魔道具についての打ち合わせを始めました。


「まず魔道具の基礎的なところから教えてくれ。前提知識となるもの物理的に可能なこと不可能なこと。この共有が出来ていないことには話は進むまい」

「そうですね……まず基本となる五大要素は知っていると思います。火、風、水、土、光です。それぞれ出来る事が違います。ですので魔道具の目的によって使う魔法は異なり、単純なものほど少ない属性で作ることが出来ます」

「なるほどな、前から思っていたのだが光に対して闇属性があってもいいと思うのだが……」

「闇属性ですか?闇は光がない状態のことなので属性と呼べるか分かりません」

「ああ、そういう解釈の仕方も出来るか」


 闇属性?一々属性に疑問を持つ人など初めて見ました。


「属性ごとのおおよその性質は以下の通りになります」


 火 力 燃焼 熱 浄化 膨張 破壊

 風 動き 成長 軽さ 停止 中断 気体

 水 潤い 癒し 流動性 結合 縮小 液体

 土 固定 重さ 保存 大地 固体

 光 輝き 不可視 対魔 雷 吸収


「そこら辺は問題ない」

「そして、作成には素材が必要です、素材にもそれぞれ属性がありその属性を意味する呪文を詠唱しながら魔力を注ぐと反応があるので属性が分かります。そして魔力を注ぎ続けると溶けますので異なる属性のものと混ぜ合わせ再び魔力を注ぎながら目的の効果を与える為に呪文を詠唱すると結晶化します。これを魔結晶と呼び、魔結晶が魔道具の本体です。魔結晶をものに取り付け魔力を注ぐことで効果が発動し魔道具となります」

「なるほどな、一つの魔道具でもかなり魔力が必要そうだ。それに使用するには魔力を注ぎ続けなくてはならないな」

「魔石が魔力を保存出来ますので魔石を使います」

「魔石についても基本事項は知っているが魔道具を扱うに関して必要な知識はあるか?」

「そうですね、魔石にも属性がありますので必要な属性が多いほど属性の多い魔石が必要になります。魔力の保存が魔石の最低条件なので必然的に一番属性が少ないものは土属性です。そして大きさが保存量に比例します」

「我が領には魔石はあんまり産出されないと聞いているがそうなるとこれからは魔石を大量に輸入する必要がありそうだな」

「はい……領地全体に張り巡らせるものとなるとかなり必要かと。それに定期的に魔力を補充しなくてはならないので魔力も問題です」

「出来るだけ低コストで出来るような工夫が必要だな。では仮に、飲用出来るほど水を綺麗にし、それぞれの場所に引いてきて使用されて汚い水を処理するにはどれぐらいコストがかかる?」

「水を浄化となると火の属性が必要ですし、その魔道具を通して来た水を出すとなると水の属性、それらを固定するための土の属性……3つは必要ですね。それに川の水の量を処理するとなると大規模な魔道具と魔力が必要ではないかと。貴族が沢山いて魔力に余裕のある大領地ならともかく、あまり現実的ではありません」


 考えは素晴らしいのだが現実的ではないし恐らく実現は出来ないだろう。使用する魔力があまりにも大き過ぎる。


「水を綺麗にするには……綺麗に……あ、濾過装置で良いのか。川か井戸に濾過装置をつけて、汚物や腐敗物やゴミは別に処理する場所を作り直接川に流すのではなく……」


 ロカソウチ? 聞いたこともありません。ロウゼ様は何やら独り言をブツブツと言い始め考え事をしているようです。


「あの、ロウゼ様?」

「ん? ああ、悪いな。だが良いことを思いついた。これなら魔力を使わずに水を浄化出来る」

「魔力を使わずにですか? そんなこと有り得ないと思うのですが……」

「いや、出来る。そうだな、茶を飲むときに茶漉しを使って作るだろう。あれと原理は同じだ。まず大きい不純物も取り除く目の荒い部分そして徐々に目を細かくしていけば綺麗な水となる。飲むとなると沸騰させて消毒せねばいかんがな」

「……」


 言葉が出ません。考えてみれば理解出来る話なのですが何か特別な問題を解決しようと思えば普通は魔法をどう使うかを考えます。それを使わずに解決する方法を思いつくとは信じられない衝撃でした。


「一体どうやってそんなことを思いつかれたのですか……?」

「うーん、いや、別に無理に魔法使う必要ないなと思ってな。魔力が足りないなら魔力以外の力で解決すれば良いだけの話だ、科学の力を使えばいい」

「カガクとは何ですか?」

「あっいや……なんでもない。魔法以外の力をそう呼ぼうと思っただけだ」

「そう、ですか」

「取り敢えず川の水を浄化するのは魔道具を使わないとして、使用されて汚くなった水を処理するだけなら可能そうか?再利用などは考えなくていい」

「それならば浄化の効果だけ与えれば済むのではないですか? 燃やすか、浄化の作用さえ使えば不要なものを消すことは出来ますが」

「うむ、当面は試験的にそれで行こう。より効率的な方法が見つかれば適宜追加していけばいいだろう。ああ、そうだ他にも作って欲しいものはあるのだが頼めるか?」

「カガクで出来るんじゃないんですか」


 魔道具にはそれなりに自信がありましたが思いつきで魔力も使わず水を綺麗にする方法を考えられては立つ瀬がありません。ロウゼ様の発想に嫉妬と呆れを抱いてしまい投げやりに答えます。


「いや、そんな万能ではない。考えることは出来ても作るのはトゥルーネにしかできないのだから頼みたいのだが……」

「分かりました、頑張ります」



 その後テルノアールからは奇妙で画期的な魔道具がいくつも生み出され、トゥルーネはその魔道具研究者として名声を得ることとなるのだがそれはまだ先の話。

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