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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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訓練の始まり

「美味いっ!!!美味っ!!」


 そう言ってリュンヌがガツガツと口に放り込んでいるのはポップコーンだ。簡単に作れて量が稼げるものは無いかと思案していた結果だ。

 コーンには大まかに二種類がある。いわゆるスイートコーン、甘くて柔らかいやつだ。恐らくコーンを食べると想像するのはこちら。そしてもう一つは爆裂種というもので、乾燥するとカチカチになり豚の餌なんかに使われるもので、爆裂種じゃないとポップコーンにはならない。幸い、ここにはスイートコーンという贅沢なコーンはなく家畜の餌に向いた爆裂種しかなかった。


「この香ばしい匂いとサクッとした食感、ほんでしょっぱいのがたまらんな」

「そうかそんなに美味いか、遠慮しなくていいたっぷりあるし無くなっても簡単に作れるからな」

「へえ〜、そういえばこれ何なんや? こんなん見たことないけど」

「ああ、豚の餌だ」

「ブーッ!!! お前これ豚の餌なんか!! ふざけんなよ」

「豚の餌でもあるだけだ、人間も食べる」

「嫌な言い方すんなや!」

「からかっただけだ」


「ったく、ふざけやがって。で、俺にこれ食わす為だけに呼んだ訳ちゃうやろ?」

「ほう、鋭いな」

「ちょっとずつお前のこと分かってきたからな。お前が優しくする裏には何かあるんや。この前の貴族の話し合いでも悪い顔しとったわ」

「ふん、俺が求めることは結果的に皆の為になる事なのだからやってもらうのは構わんだろうに」

「それで、なんなんや」

「兵士と集団での戦いと防衛の訓練をしてもらえ。そしてお前たちは個人での戦い方を教えろ。それが終わったら亜人たちに指導だ」

「はあ〜!? なんで俺らがあいつらに教わるんや! 教わることなんかないやろ。それに亜人ってなんや」

「お前たちは個人では強い。しかし領地や屋敷、俺の防衛護衛という観点から言えばまだまだだ。今は守るものもなく無責任に攻められる訳ではないんだぞ」

「守るものか……」

「既に兵士たちからは許可は得ている。それに……忘れているかも知れんがディパッシ族はその兵士たちを殺している」

「ッ…!」

「仲間を殺された兵士たちに立場上そう簡単に頭を下げられない貴族であり領主である俺が頭を下げて頼んだのだ。彼らは要求を飲んでくれた何故か分かるか」

「そら貴族の命令には逆らえへんからやろ」

「それもある。しかし、一方的に仲間を殺され俺を護衛出来なかった彼らは同じ事を繰り返したくない。だから更に力が欲しいと、守れる力が欲しいと涙ながらに訴えた」

「……そうやな、俺らが悪い。自分たちで嫌われるような事を好き勝手やって来たんや。分かった、俺から他の奴らには言い聞かせとく。そんで亜人ってのは?兵士にするんか?」


「いや、別のことをしてもらう。諜報部隊として働いてもらうつもりだ。お前が分かるように言うならば斥候か?」

「斥候? 今更そんなんいるか? テルンが出来るけど、あいつじゃあかんのか」

「一人では意味がない。俺は情報が欲しいのだ。各地に諜報部隊を張り巡らせ誰にも気付かれず、あらゆるところに侵入し情報を集めてもらう部隊を組織する。その役目に亜人の能力はうってつけだ」

「情報なあ、お前情報足りんばっかり言うとるけどそんな大事もんかいな。で、亜人の能力?」

「情報は重要だ。例えば100人住んでいて食料は少しの村と10人住んでいて食料は多い村どちらを攻める?」

「そら後の方や」

「それが情報だ。簡単に攻められて、かつ大量の食料を得ることが出来る。そちらを攻める方が得。そういう判断をして楽に利益を上げることが出来る」


「……なるほどなあ、そら大事やわ。それが国レベルになったらもっとデカイ利益あるってことやろ」

「そうだ。そして亜人の能力だが種族によって得意な事が違うのだ。例えば蜥蜴人族、リザードマンだが彼らは暗闇の中でも、音を聞かなくても生き物がどこにいるか分かる」

「そんな凄い事出来んのか、俺らが気配を察知するのとは別か?」

「まあ、似ているが察知しているものが違う」

「他の奴らはどんなこと出来んねや」

「犬人族なら嗅覚が優れている。僅かな匂いでも嗅ぎ分けて追跡したり、危険を察知出来る。猫人族なら耳が良い。人間には聞こえない音まで聞こえる。それに狭い場所にも入ることが出来る。鳥人族は空を飛べるし目が人間の何倍も良い」

「へえ〜、そら凄いな。獣やと思って舐めてたけど俺らには流石に出来ひんわな」


 素直なやつだ、自分には出来ないことを認められるのはリュンヌの美点だな。


「人によって得意なこと苦手なこと、出来ること出来ないことがある。ならば自分が出来ることをやって出来ないことは出来るやつに頼めばいい」

「そらそうやわ。ディパッシ族でも弓使うのが上手いやつもおれば、石投げるのが上手いやつもいる、俺みたいに素手でやるのが強いやつもおる。気付かんかったけどやってたな」

「それで、秘密裏に殺したり忍び込んたり気配を消す事が得意なやつは亜人たちの指導を頼みたい」

「ええんやけど、あいつらが俺らを受け入れるかどうかやな」

「まあ、簡単ではないだろう。それでもやるしかない。泣き言は言ってられんのだ。ジュアンドルが知られ、お前が優勝した今、テルノアールが危険と思われいつ潰されてもおかしくない。なるべく早めに警戒しておいて損はない」

「最近はやる事なくて暇やったから丁度ええわ。よっしゃ! やったろか!」


 その後、決して友好的な雰囲気という訳にはいかなかったがディパッシと兵士による合同の訓練が始まった。

 兵士はディパッシ族と組手をしてボコボコにされながらも必死で食らいつき徐々に強くなっていると報告を受けた。

 ディパッシ族は、特にリュンヌだが俺を守る。という事が意識的になり動きが洗練されてきた。一応主を立てるという形が出来始め、不遜な態度に嫌悪感を示していたロランやエマによる風当たりは少しマシになった。


「おいロウゼ、また何か美味い飯食いたいから考えろや」

「リュンヌ、 ロウゼ様に向かって命令なんてしてはいけません 」

「はあ? お前こそ俺に命令すんなや!」

「なんですって!?」


 エマは基本的に大人しく金勘定が入るだけは活き活きしてるのだが、リュンヌと口喧嘩している時はかなり感情的だ。

 はあ……次はディパッシ族に敬語を教え……いや無理か……

 リュンヌとエマの声が屋敷に響きながら頭を抱えた。

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