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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
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ディパッシが王都で見たもの

たまに1日2回投稿しようと思います。今回はやや短めです。 第一話にてロウゼのキャラデザを後書き部分に追加しました。良かったら確認してみてください。

 ロランと新たな事業の打ち合わせをした次の日に領主の執務室にディパッシ族を全員集めた。

 何事かと全員が警戒しているのは明らかだった。


「それで、何やねん急に全員集めて」

「お前らは王都で他の貴族と会い何を見て何を思ったのか、それが聞きたい」


 それぞれが互いの顔を見合わせ困惑しながらもポツリポツリと言葉が出てきて次第にザワザワとし出した。

 リュンヌが手を挙げると他のディパッシ族は静かになった。


「俺は、とにかく気に食わんと思った。蜥蜴のやつらの村行った時は恨んでるような目で見たり怖がってるのが分かった。でも、それは俺らがあいつらを殺したりしてるからや。仲良くしようってのが無理な話や」

「…………」


 ディパッシ族は軽くうなづいたりしながら黙ってリュンヌの言葉を聞いていた。


「でも貴族は全然違う目やった。親父……ガルグイユのガキもそうやった。馬鹿にしたような見下したような目で見とった。あのガキは俺らがディパッシであること、生きてること自体が気に食わんようや」


 差別、というものをまともに感じたのだろう他のディパッシ族も憤りを顔に表していた。


「それが身分の差だ」

「何やねんそれ、貴族に生まれたら偉いんか!んな訳あるか!阿呆らしい!」

「そうや!貴族がなんぼのもんじゃ!調子に乗りやがって」

「殺したろうか思ったわ!」


 口々に貴族に対する不満が出てくる。


「そうだ、そんな訳ないのだ。貴族もディパッシ族も関係ない。俺はそう思う」


 貴族であるロウゼ・テルノアールからその言葉が出るとは思っていなかったのか全員え?という顔になってこちらを見つめている。


「なら、亜人とディパッシ族、どちらが優れている?」

「そんなんディパッシ族に決まってるやろ!獣風情と一緒にすんなや!」

「当たり前やろうがボケ!」

「やめろ!」


 リュンヌが怒鳴りつける。ディパッシ族はまた静かになる。


「ロウゼが言いたいのは俺らが亜人とは違うって言うてんのが貴族が俺ら見下してんのとおんなじやってことや」

「なっ!?」

「そ、それは……」


 そう、差別というのはされる側でもするものなのだ。

 しかも差別しているという自覚は無く、自分達が優れており、相手は劣っていると当たり前のように思っているので何の悪気もないのだ。


「あの目が気に食わない。なら、まずはお前たちが他の種族や人間を見下すのをやめろ」

「でも、俺らがやめたところであっちは見下してくるから意味ないやろ!」

「そうやそうや!」

「だったらお前たちの見る目を変えろ。貴族の意識を変えるのは簡単ではない。まずは同じ身分の亜人や平民を変えろ」

「そんなんどうしたらええねん!?」

「ふっ……ディパッシ族が皆の役に立てばいいのだ」


 意識を変えるにはそれしかない。存在意義を示し認めてもらうしかない。文明や社会が発展した現代では人種や生まれで大差はないということはまだ理解されるかも知れない。しかし、この世界で道徳を説き伏せても効果はないだろう。


「役に立つ……?」

「お前たちは出来ることはなんだ?」

「俺たちは戦うことしか知らん」


 顔を落としながら悲しげにリュンヌがポツリと言う。


「十分だ」


 リュンヌに続いて皆が顔を落としたが一斉にバッと顔を上げる。


「ディパッシ族の強さは国の中でも貴族の騎士に劣らない。それはもう武闘会を見ていて分かっただろう。お前たちは強いのだ。それも圧倒的に。では、何故戦う?」

「……生きる為や。食いもんが無くなったら奪わなあかん。縄張り荒らされたら守らなあかん」

「そうだ。自分たちが生きる為には戦う必要がある。領地全体で生きるには他の領地の人間に侵略されないように守らなくてはならない。何もなければ戦って奪ってでもしないと生きれない。だったらお前たちディパッシ族がこの領地を守ってくれ。敵が攻めてきたら迎え撃ち、こちらが攻めなくては行けない時は最前線に切り込む。他の民を守る事が出来ればお前たちは必ず認められる」

「戦うことが出来る上に俺らが認められる……?」

「ホンマにそんなことが?」


そんな都合の良い話があるのかと皆疑いながらも僅かな希望を感じているのか、高揚している。


「それに美味い飯がもっと食えるぞ、どうだ?今はまだ貴族と平民の差を急に無くすことは出来ないがそれでも未来の為に俺の下について共にこの領地を変えていかないか?」


「お前ら、俺はロウゼについていこうと思う。一緒にやってくれへんか?」

「おう!!!」

「ったくしゃーないな」

「村にいてディパッシ同士でやるのも飽きてたところやし丁度ええかもな」

「飯いっぱい食えるなら俺はええわ」

「貴族のやつらに一泡吹かせられるやったらなんでもするわ!」


「で、リュンヌの勝った報酬なディパッシ族に渡すのは1割な」

「ん?イチワリってなんや?」

「あーだから、全部の量がこれくらいだとしたら、ディパッシ族はこれくらい」


 大きな山を手で描きその一部に小さな山を描いて説明した。


「はあ!?ふざけんなや!」

「少な過ぎやろ!」

「それが『差別』ちゃうんか!?」

「俺らが難しいこと分からんからって騙すな!」

「殺すぞ!」


 ブーイングを浴びながらも領地として必要であること、これまでディパッシ族は税を納めてないことなどを説明してそれでも大金であることをアピールして何とか収まった。


 この日からロウゼにディパッシ族はついていくようになり後に国を大きく動かすほどの信頼関係が築かれたのだった。

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