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異世界メディア論〜外れ領地でも情強なら無双〜  作者: ⅶ
season1 小領地の領主
15/101

一族の裏切り者

下書きが消えて書き直しに泣きました。

リュンヌの父であり炎の軍団の師範役、フラームの話です。

「ガルグイユ……何故……!!」

「ガルグイユだ!」


 どうやらフラームはリュンヌの父親のようだ。

 しかも名前がフラームではなくガルグイユらしい。

 テルンやマノツァ、他のディパッシの人間も驚いているようだ。


「フラーム知り合いか?」


 ギーズ卿がフラームに問いかける。


「いえ、知りませぬ」

「何!?俺が分からん言うんか!?俺や!リュンヌや!」

「お前など知らぬ」

「ッ……!!一族を捨てて知らんとは言わせんぞ!!!」


 怒声をあげ、まずい!と思った時にはすでにリュンヌはフラームに飛びかかり攻撃を繰り出そうとした時だった。


「おいおい、お前の相手は俺だろう?」


 リュンヌは自分の攻撃を抑えられたことに驚く。自分も驚いた。まさかリュンヌの速さに対応出来るとは。


「ぶっ殺すぞお前!」

「ほう、お前に出来るかな?」


 互いに睨み合いの膠着状態となり一触即発の空気が漂う。両者の迫力に一瞬硬直してしまったその時ギーズ卿が声を上げる。


「やめんか」

「ハッ!」


 エヴァンタイユが直ぐさま我に返り下がる。

 リュンヌは腹の虫が収まらないようでまだ動こうとしない。


「リュンヌお前も下がれ。ここは戦いの場ではない。ギーズ卿、大変失礼を致しました」


 先に手を出したのはリュンヌだ。フラームとの関係がどうであれこちらに非がある。


「いや、構わんよ。こちらこそ部下が騒いで申し訳ない」

「いえ……ところでフラームさんはディパッシ族なのですか?」

「……何かの勘違い、いや人違いしているのではないか?フラームは私の部下であり騎士だ。ディパッシ族などではないが」

「そう……ですか。私はそろそろ失礼致します、これ以上ご迷惑をお掛けするわけにはいきませんので」

「ああそうだな、では決勝で会おう」

「おい!何勝手に話つけとんねん!こっちはまだ終わってないぞ!」

「黙れ!いいから来い!帰るぞ」


 気が立ったままのリュンヌを半ば無理やり連れて帰りながら色々と考えを巡らせる。

 ディパッシの人間が皆反応しているということは人違いというのは考えにくい。

 そしてギーズ卿がそれを知らなかった、フラームがガルグイユの身分を隠しているという点も不自然だ。

 ディパッシ族は貴族社会に馴染むのは不可能だろう。

 そもそもの考え方や生き方が違うし正体を偽って通せるはずがない。

 となると、ギーズ卿はディパッシと分かっていて意図的にフラームを抱えているはずだ。

 しかし何故、知らないと嘘をつく必要があるのか。

 どうにもきな臭いな。ギーズ卿、何を考えている?


「リュンヌ、フラームはお前の父親であるガルグイユで間違いないのか」

「間違える訳ないやろ。顔が変わっててもあいつの気配は忘れることはない。俺だけやない。他の皆も分かる。なあ、そうやろ?」

「ああ」

「そら分かるわ」

「気配というのが分からんがお前らがそういうのならそうなのだろうな。フラーム……いや、ガルグイユは何をした?一族を捨てたというのは?」

「あいつは20年前に村を出た。村の長の癖にや、長が下のもん見捨てて出て行った。しかも止めようとした他の奴ら殺して出て行ってるんや、あいつは裏切り者や」

「村の長はザンギじゃないのか?」

「ジジイは前の長やった。ガルグイユが長になって出て行った後にまた長になったんや」

「そうだったのか。それで何故出て行った?」

「知らん。狩りに出てしばらくして帰って来てから突然や。村の長が急に一族見捨てたもんやからそのせいで村は混乱して殺し合いまで起こった」

「なるほど」

「エヴァンタイユとかいう俺の攻撃を止めたやつは多分ガルグイユが育てたんやろうな、ディパッシの動き方に近いわ」

「ガルグイユが炎の軍団と呼ばれてる部隊の師範役でその隊長ならありえる話だろうな」

「あいつは殺す」

「殺すなよ。後々面倒だ。だがボコボコにしてこい。お前が負けたら領地ごと舐められる。ディパッシの名を国中に広めてやれ。それとガルグイユの件については俺が探ってみる。貴族が関わっている事だからお前が戦ってどうこうなる問題ではない。お前は勝負に勝て。今はそれだけ考えろ。強い奴と戦えそうで良かったじゃないか、あれだけ弱い弱いと文句言ってたんだから」

「……まあ、せやな。しらばっくれてたからいくら聞いたところで何も言いよらんやろうな。俺は俺のやれる事で力使うわ、俺に舐めた口聞いたこと後悔させたるわ。あのガキめ」


 もっと突っかかってくるかと思ったが意外と素直に引いてくれた。こんなに聞き分けのいい奴だったか?

 やはり父親と思わぬ形で再会したのは本人にとっても刺激が強かったようで口では強がっているが少し落ち着いた今は動揺しているようでいつもほどの元気は無かった。


 部屋に戻り昼食を取った。リュンヌは静かに飯を食いながらも何か考えているようだった。他のディパッシにも動揺があるようで、ガルグイユの話を口々にして落ち着きがなかった。


「さあ、行こうか、準備はいいな」

「ええで」

「リュンヌ負けんなよ裏切りもんが教えてるような奴に負けたら一族の恥やぞ」

「分かってるわ、分かってる」


 考え事をして大人しかった様子から静かに自分に言い聞かせるように返事をした。ゆっくりと目を閉じて深呼吸をした後カッと目を開き戦いのモードに切り替わった。


「行こか、ロウゼ」


 武闘会、決勝戦の始まりだ。

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