表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

恋愛以外 まとめ

私の聞いた噂と知っている真実

作者: 湊 紅菜

学生妊娠及び未成年の妊娠についての話です。この単語が不快に感じられましたらお読みになるのをおやめください。

このお話は、フィクションである事をご理解の上、お読みください。










思春期の学生にとって『噂』というのは、日常を彩るスパイスと言ってもいい。


「ーー」


聞こえてきた声に耳を傾けると、違う『噂』が聞こえてくる。また親友に聞かなければいけない。聞こえてくる『噂』を聞き漏らさないようにしなければ。



私は、この学校で『噂』を守っていると言われている。私が『噂』を流している『噂』があるらしい。それも私が流しているという『噂が』、長くなるからやめておこう。


別に好きで噂を調べているわけではない。私の席は窓際で、外の階段にある踊り場がよく見える。教室ではできない話も踊り場ではするらしく、風に乗って聞こえてくるのだ。それを親友に聞くだけ。クズと罵られた事もあるが、私は真実か聞いただけで広めようとした悪意なんてなかった。



そうして過ごしている時、学校を揺るがしかねない事件が起きた。

皮切りは、後輩ができて二週間ほどの事。親友から聞かされた一つの『噂』だった。


「有名な先輩が、あの彼女と付き合いだした」


有名な先輩とは、ある有名企業社長の長男で三年の首席であり、容姿端麗で女子人気の高いお方。

あの彼女とは、入学して早々イケメンに纏わりついている女子のこと。中学の時からその兆候はあったらしく、友人の彼氏を自分の荷物持ちにしている姿を見せつけ、尚且つ激怒した友人に無視されたことをイジメられたと嘯き男どもに慰められるように差しむけたらしい。同中の子が『先輩はあの女の手口にはまらないように、気をつけてください!』と事細かに教えてくれたそうだ。

今回も同様の手口でイケメンどもを誘惑し、一番有望株である先輩と同じ部活に入りアタックしまくったらしい。


彼が彼女と付き合いだして、女子も男子も呆れた。『後輩の手口もよくある事なのだから、それぐらい見分けろ』っと。彼と仲の良い人も忠告したらしい。彼女が他の男と歩いている。彼女は他の男の誘いに喜んでのった。彼女は食堂で、男子10人に囲まれて食べている、などなど。

それでも彼は信じなかったらしい。『彼女は運命の人。だから、馬鹿にするのは許せない』そう吐き捨てたそうだ。それでも、仕方ないと付き合いを続けている先輩方は尊敬できる。


五月ごろだっただろうか。『彼女と先輩が距離をおいた』という噂を聞いた。なんでも、成績優秀者の先輩様は国家最高峰の大学か他国の大学に行くように脅された(勧められた)そうだ。そのため、進路が決まるまでに彼女と会わないようにしたらしい。彼女はこれ幸いと男遊びに励んでいた。




そして、一つの事件が起きた。長い夏休み、登校したら彼女の名前は留年扱いとなっていた。先生に聞いても家庭の事情しか言わない。彼女の事が嫌いな私の後輩達が、その疑問に答えてくれた。


『彼女は彼の子供を身篭ったらしい』


一緒に遊んでいるとき、吐き気や頭痛やめまいに襲われ度々途中で帰っていたそうだ。医者の娘の後輩に、『お腹の風邪に効く薬はないか』と聞いていたそうで、その後輩は『悪阻の初期症状とソックリよ』っと笑いながら『無責任な事は言えないから病院に行って』と家に送り届けたそうだ。

病院に行けば夏のインフルにかかっていたらしく、薬を飲んで一時マシになっていたらしい。




ところが、『なんかお腹が出てきた気がする』という連絡とともに、彼女とは音信不通になった。一度、家にお見舞いに言ったら、インターホン越しに怒鳴られたそうだ。


「アンタも私を笑いにきたのね!」


彼女の声の後ろから聞こえてくる、『怒鳴ったら子供に』の言葉に後輩達は思わず息を呑んで帰ったらしい。

決定打となったのは、後輩が姉君の付き添いで産婦人科に行った時に、彼女の姿を見かけた事だろう。



誤解しないで欲しいのだが、彼女達も笑い話では無いのだから心に秘めておこうと約束したらしい。だが、母親達の間で彼の母親からの爆弾発言がその気持ちを無くさせてしまった。


「別に好きでもない男の子供を孕んだ。これから先の人生ぶっ壊しやがって。お前の家だって姉がいるのだから気持ちはわかるだろ。そんなに子供だけが欲しいのか。認知もいらない。金だけ寄越せ。そう言われてしまったの」


『我が息子ながら情けないわぁ』とため息をつく彼の母親に、後輩達の母は怒りを覚えたらしい。その夜に酒を呑み、酔っ払って後輩達に口を滑らせてしまうほどには。



そして、その後輩も怒り狂っていた。彼女達の家も、一般的には裕福で貞操観念もしっかりしていた。『身体を許しといて、好きでもないとはどういう事だ』と文句を言い合ったそうだ。

その秘密は、部活の罰ゲームの時に『絶対に学校中が騒ぎになる秘密』というお題で思わず言ってしまっていた。

真偽は別れたが、彼のキラキラとした容姿に翳りが見られた事で真実だと受け取られた。



そして彼女が出産した時、事件が起きた。

その日の彼は、荒れた様子で登校した。髪も少しボサボサで目が充血している。彼の友人が揶揄うと彼は怒鳴ったそうだ


「子供は、金髪の灰色の瞳だ!」


その言葉で、全校生が動揺した。彼女は黒髪黒目で、彼は茶色がかった黒の髪と瞳だった。どうあっても、金と灰色ではなかったからだ。

学校の対応も早かった。彼女を退学処分及び除籍処分とし、彼を少し早めに卒業させた。


『彼女の浮気』の噂は、彼の再従弟が留学してきた事によって有耶無耶にされた。

彼は、その大学先で年上の女性に見初められ婿入りしたそうだ。










さて、これから語られるのは私が知っている真実であり、この出来事の裏話だ


実は、私は彼に襲われた事がある。人が寝ているすきに服をひん剥かれた。違和感を感じれば彼がいて、とりあえず殴って彼をどかし、彼の両親と私の両親に泣きつきに行ったのは覚えている。そのあと、彼から私への接触禁止令が出され、色々あった彼が私を忘れていて安心した。この秘密は、彼以外の当事者しか知らない秘密である。


そして、彼女の子供は本当に彼の子供であった。これは、秘密裏にDNA鑑定したので間違いない。彼の祖母が他国の方でその人が金髪に灰色の瞳だったからだ。彼もその話は知っているのに、自分の子供ではない断言したか。彼女がその金を見て『まさか」と言ってしまったらしい。その言葉に彼が怒り、自分の子供ではないと断言したそうだ。


そして、彼女について。彼女は彼の後輩を狙っていたらしい。その後輩と彼女との接点はないため、彼との接点を使って落として行くつもりだったらしい。後輩には彼女がいたから、接点が無くて良かったと思う。

身体を許した理由は優越感に浸りたかったそうだ。どちらかというと、生娘の方が喜ばれると思うのだが、まぁ私には関係のない話だ。

彼女にとって、彼は遊び相手であったそうだ。金は持っていたが、性格が好みでなかったらしく、コイツと生涯をともにするのは嫌だと思ったらしい。金だけ請求し、あの手口で違う金持ちを誘惑する気だったらしい。

結果としてみれば、裕福な家の奥方や娘達に悪影響を与え、自分の浮気疑惑で誰ともわからない思われている子供を養っていく事になった。しかも、彼女の家は裕福とは言えないのでこれからどう過ごすのだろうか。




最後は私の事。どうして、彼が私の寝ている部屋に侵入できたか。どうして、そこまで裏事情に詳しいのか。

私は彼の再従妹であり、彼の家より巨大な企業の社長の娘であったというわけ。おば様おじ様が家に来られた時、早く寝た私の部屋に彼が侵入してきやがったのだ。彼は、その下半身の緩さから跡取りを外され、私との接触禁止令が出され婚姻話も無くなった。

そのため、彼は下半身の教育を諦められ、彼女の手口に引っかかってしまった。だから、引き合いに出され跡取りの彼の姉や私にとっては、彼女の貞操観念も問題なのである。彼の姉はそういう事には厳しいので、例え話は通用しなかったのだ。そして、怒り狂った彼の姉によって、彼女の思惑は丸裸にされた。権力持ちの気の強い女性は怒らせるべきではないと改めて実感した。

噂を消した彼の再従弟とは私の可愛い双子の弟である。弟も、その顔の良さから他人を弄るがあるのだが、彼よりはマシだろう。



彼が去り、彼女が消えた学校はいつも通りになる。私は気にせず噂を聞いていた。




例え、私が聞いた事で何か被害にあったとしても、その隙間を見せたその人が悪い。決して、私は悪くはない。






そう思い、弟や親友に噂の真偽を聞き続ける。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ