冒険者学校~一日目~
そして朝が来た。
昨日は緊張して寝れなかった、なんてことは全然なかった。
けれどいつもと違う点がひとつある。
「ウィータ、朝だぞ…。な、何?」
とパパさんが不思議がってる。
そう、今日俺は、自分の力で起きたのであった。
「ウィータ起こしてきた…。パパ、なにその顔は?」
とママさんが聞く。
「なんとママ、ウィータは僕が起こす前から起きていたんだよ…。」
と軽く青ざめている。
勿論ママさんも、
「なにかが起きる予感しかしないわ…。」
と何かを予言する人みたいになっていた。
いや俺がたった一回早起きするくらいでこうなってしまっては、二回目はどんな反応になるのやら、もしかしたら、奇跡だよ!、と二人して俺を敬ってしまうかもしれない。
これはこれで恐ろしい。
早起きしたので、いつもより早く朝御飯を食べることが出来た。
そして食べ終わったら、今度は冒険者学校の支度の確認だ。
「教科書よし。筆記用具よし。後は、その他もろもろよし!」
きちんと全部揃っていた。
内容は全てわかるけどね。ごめんちゃい。
「制服よしっ!」
とママさんが言った。
これに関しても言わせてほしかったが、仕方がないので譲った。
「模擬剣よし!」
とパパさんが模擬剣を指差して言った。
この模擬剣は昨日パパさんが買ってくれた物だ。
大切に使おうと思ってる。
そして全ての準備が整った。
「では…。」
「「ごくりっ…。」」
唾を飲むパパさんママさん。
「いってきます。」
「「いってらっしゃい!」」
と二人で俺を見送ってくれた。
そして俺は冒険者学校へと高ぶった気持ちで歩いた。
ちなみに昨日の試験の合計点数は、百点中百点である。
▲▽▲▽▲
そして冒険者学校に着いたらまずは職員室へ行った。
「編入生のウィータです!」
と言って職員室へ入ると、教員全員からは青ざめた様子で見られた。
「あ、ウィータ君。編入おめでとうこれからもよろしくね。」
と駆け寄ってきたのはベヨネ先生だった。
しかし顔の様子は依然として余り良くない。
笑顔を浮かべているが、教師スマイルであった。
こんなに俺のことを嫌っているのかよ、教員全員…、とちょっとショックに思った。
「では、あなたのクラスを案内するわね。」
とベヨネ先生が歩き始めたので、俺も歩き始めた。
階段を昇り二階へ。
更に階段を昇り三階へ。
そして廊下を歩き続ける。
そして一番奥の部屋に着いた。
「これがあなたのクラスの、二年よ。」
と二年のクラスに案内された。
「ちょっと待ってください。何で俺は二年の教室に行かないといけないんですか?」
と質問する。
ベヨネ先生はこう答えた。
「昨日の試験は、一年の課題だったのよ…。」
と呆れられた。
まさかあれが一年の課題だったとは到底思えなかったが、取り敢えず5年掛かるところを四年間で終えられることを素直に喜ぶしかない。
そしてクラスの中に入った。
中に入ると、少しヤンチャな子が沢山いた。
その中に一人、ヤンチャではない綺麗な女子生徒がいた。
青い海色の輝く目。
黄金の稲穂のような金髪、顔立ちはバランスがいい感じ に整っている。
そして、とても体は冒険者とは思えないほど膨らみのあるところがあり、絞まっているとこはとても絞まっている。
なんだあの先輩、と一瞬ドキッとしてしまった。
あんな綺麗な人、王都(昔の)にも余り居ないぞ、と思った。
ベヨネ先生が、
「では、二年生に編入する子を紹介します。」
といってくれたお陰で、我に帰ることが出来た。
「ウィータ、と言います。これからもよろしくお願いします。」
俺はベタな挨拶を噛ましたところで、さっきの先輩の隣の席が空いていたので座った。
「よろしく、ウィータ君。」
と耳打ち際で声を小さくして挨拶してくれた。
「先輩の名前は?」
と俺は先輩と同じように聞いた。
「私の名前はね、ラナって言うの。でもなんで先輩って呼ぶの?」
と不思議そうに聞いた。
「それはです先輩、編入で一年繰り越しされたんですよ。」
と俺は言った。
「普通にラナでもいいのに。」
「いやいや、一応1年先に入ってますから、ね。」
「そうなんだ、わかったよ。」
「ありがとうございます。」
「これからもよろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いします、先輩。」
とお互いにもう一度挨拶をした。
俺らのこの様子を邪険に見る男子生徒がいた。
「おい、ラナに手を出したら承知しないぞ。」
と言ってきた。
「何でですか?」
と返したところ、耳打ちで、
「俺はラナが好きだ。そして俺は強い。そしてラナも強い。だから手を出すな。」
と言ってきた。
ごめん、めっちゃ意味わからん。
「えっと、先輩の名前は…?」
と取り敢えず聞いた。
「俺の名前はファルコンだ。覚えておけ。」
彼はファルコンというらしい。
取り敢えずラナはこいつが好きということは知らないらしい。
ドンマイっ!、と心の中で言った。
でも強い、ということは。
「ラナ先輩。先輩のランクっていくつですか。」
と聞いた。
「私のランクはDだよ。」
と答えてくれた。
「ファルコン先輩のランクっていくつですか。」
と聞くと、
「俺のランクはBだぜ!」
と自慢のような言い方で言ってきた。
Bということは多分このクラスでは一番強いと思う。
多分まだ他の人はFとかE位だと思うから、二人は凄いと思う。
俺にとっては強くなさそうだけど。
そう考えながら一日はとても早く過ぎていった。
そして放課後になった。取り敢えず帰ろうとするとファルコンに、
「おい、ちょっと裏に来いや。」
と俺を裏に呼び出した。
一体何をする気だろう?