編入試験
翌日。
「朝だぞ~起きろウィータ!」
とパパさんが起こしに来た。
正直パパさんはいつ寝てるかわからない。
朝は元気はつらつ。
夜はもっと元気はつらつだからな。
大人って怖いな~と思った。
それは置いといて。
今日から俺は冒険者学校に通うことになる。
まずは編入試験があるらしい。
最初は筆記試験。
次に実践試験だ。
俺は正直大丈夫と思ってるが、パパさんママさんは、
「絶対に受かるよね?そう言いきっちゃたからさ、受からなかったら本当に村に帰れなくなるから絶対に受かって!」
と息子より自分の心配をするパパさん。
「アバアバアバががが頑張ってきてねねねね。あなたならぜぜぜ絶対に受かるからららら。」
とテンパってしまったママさん。
そんな二人を見て俺は、受からないと不味いな~と思い始めてしまったのであった。
▲△▲△▲
冒険者学校に着くと、一人の女先生が俺を校門前で待っていた。
「ああ、あなたが編入試験を受ける。」
「ウィータです。よろしくお願いします。」
と挨拶。
その先生は、
「私の名前はベヨネよ。よろしく、ウィータ君。」
と挨拶した。
正直めっちゃ大人っぽい雰囲気の先生だ。
だが俺のタイプではない。
俺のタイプは…、何でそんなことを想像しなきゃいけないんだ。
でも見た感じそんなに強そうに見えない。
それもそうか、と思いつつ、ベヨネ先生が移動を始めたので、俺もそれに着いて行った。
一分後。
学校の裏にある小さな小屋の中に入った。
「じゃあ、今から編入試験の筆記試験を始めます。」
とベヨネ先生は筆記試験の説明をし始めた。
編入試験を受けるのは五人。
この中で一番成績のいい人が編入出来るらしい。
4月でもないって言うのにこんなにも編入したい生徒がいた。
流石冒険者学校ということか。
俺は必ず受かってやる。
そしてその勢いで筆記試験を受け始めた。
字に関してはお腹の中にいたときに習ったので、問題は無し。
そして内容だが、めっちゃ簡単。
何、絵を見て〇〇草の中に入る言葉を書きなさい?
答えはロイ草だ。
ロイ草は体の中の魔力を少し回復する草だ。
こんなの誰でもわかるだろ。
他の問題は、絵にかいてある魔物を答えなさい?
答えはドッガーウルフである。
ドッガーウルフは犬みたいな見た目の魔物から名付けられた。
簡単すぎる。
こんな問題ばっかで筆記試験は終わった。
こんな簡単な問題で間違えるやつがいるのかくらい簡単だった。
ベヨネ先生が答案用紙を集めて別の先生に渡して、ベヨネ先生は外に出た。
俺たちも着いて行った。
少し歩いたら、訓練所が見えてきた。
そしたらベヨネ先生がそこにいた。
「今から実践試験をします。」
実践試験とはまず訓練所の向こうにあるかかしを遠距離魔法で倒す。
次に剣術の先生と稽古をする。
という内容だ。
まずは小さな少女からだ。
「ほ、炎の精霊よ、今こそ我に力を与えたまえ、火起こし!」
手のひらから初心者魔法の火起こしを出した。
上手くかかしに当たらなかった。
省略するが、他の皆も余り上手く当てられなかった。
今度は俺の番。
皆魔法を唱えているから、魔術を唱えようと思い、
「古より存在する炎の神よ今こそ我に力を授けたまえ、豪炎の牛神!」
かかし全部大炎上。
先生たちは、
「え、何で全部燃えてるの?」
「あり得ないわよ!」
と喚きながらも必死で水魔法で消火活動をしていた。
あれでもセーブはしてあったが。
すみませんでしたと、心の中で謝った。
そして消火活動が終わって、
「さあ、次の試験に行きましょう。」
とベヨネ先生は頑張って笑顔を作って移動した。
先生たちは微妙な顔で俺を見ていた。
そんな事はお構い無しに俺はベヨネ先生に着いていった。
次は剣術の先生と稽古だ。
まずはさっきの小さな少女だ。
一分間稽古するが、感想は普通。
それ以外なにも言えないくらい、普通だった。
まあ普通が一番いいからな、と思った。
また省略するが、他の皆も別に何も変わらない。
最後は俺だ。
剣術の先生が微妙な顔で俺を見ていた。
何か心外、と思いつつ普通に稽古をつけてくれた。
ちなみに一秒でまず先生の剣を弾いて俺の剣先を先生の首もとに出して勝負師は終わった。
その時の剣術の先生の顔は青ざめていた。
そして全ての試験が終わった。
そしてまたさっきの小さな小屋の中に入って結果を待った。
俺の心臓はドキドキしていた。
受かっているように、受かっているようにと心の中で何度も唱えた。
そして五分後。
ベヨネ先生が疲れた顔で、でも笑顔を崩さないまま入ってきた。
「編入試験の結果、合格したのは…ウィータです。」
「よっしゃ!」
と呼ばれて俺は叫んだ。
そして俺は晴れて冒険者学校に編入出来たのである。
それを急いで帰って家に報告した。
「村に誇れる!」
とパパさん。
「良かった~。」
と腰が抜けるママさん。
そして今夜の食事は少し豪華だった。
鳥の丸焼きが出たのだ。
ママさんが作ったので、とっても美味しかった。
それまで宿飯だったから、より一段と美味しく感じられた。
食べ終わった後、明日の準備をして、俺は寝た。
明日からは冒険者学校の一員だ、と思いながら。