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めちゃめちゃ愉快な人助け!   作者: 愉快 夢
3/3

キチガイ

「な、なぁ……あそこ、人浮かんでねぇか?」


「なに言ってんの? こっちの世界じゃそんな人いるわけ……?」


確かに、俺たち二人の目には空に浮かんだ男が見えた。


すると、その男は青い石のようなものを取り出しておおきく息を吸ってこう叫んだ。


「クソったれがぁー!!!」


青い石はこちらに向かって勢いよく投げられ、俺たちは反射的に目をつむって身構える。


ーー。


一瞬、辺りは闇に包まれた。


(うぅ……ったく、一体何がどうなって……あれ、おばさん……?)


ふと目を開くとさっきまでそこに居たおばさんがいない。


どうやら気を失っていたようだ。


「ゆ、ユカたん……?」


同じく気を失っていたリンが目を覚ます。


「リン、無事か?」


「うん。私は大丈夫」


ーー。


「ーーで、君は誰?」


そこは基本なにもなく、ただ一人、高級感のあるイスに座っている同い年ぐらいで、右手に長く鋭いやりを持つ青年がおり、憎しみと怒り、嫉妬で体が震えていた。


「よくも……よくも僕からお姉ちゃんをうばってくれたな……!」


(は? なに言ってんだこいつ……)


「貴様だけは許さん! まずは一発殴らせろ!」


急な展開に頭が全く着いていかない。


「意味わかんねぇんし、何を言って……ぐほぉ!」


マジで青年の右ストレートが決まり、俺は約5メートルほど飛ばされた。


(い……! たぁくない。あれ? 痛くないぞ……)


青年は満足そうに額の汗を拭う。


「はぁ…気持ちよかった! さて、今はあんなやつ放っていて……。」


青年はリンに向き直りーー。


「お姉ーちゃん……! 久しぶり!」


そう言って青年はリンに飛び付いて、不気味な笑顔を浮かべながら顔をこすりつけていた。


「え、えへへ……お姉ちゃんだ……お姉ちゃんの匂いがする……くんか……くんか……」


リンは青年の顔をまじまじと見つめ、何か思い出したかのように驚きの声をあげる。


「エ、エレン!? ってことはここは……」


「うん。bewoldだよ。お姉ちゃんは久しぶりなんだよね……」


「な、なんで私たちbewoldにいるのよ」


「いいから、いいから! とりあえず匂いを嗅がせてよ。10年間……寂しかったんだよ……?」


青年は突然涙を流しだし、泣きながらも10年間の寂しさからか、必死に匂いを嗅いでいる。


(bewold? てかなんなんだあの変態は……!)


「おいリン、誰だその痛い変態は」


リンは一度俺と目を合わせてから、戸惑い、動揺しだした。


(も、もしかしてユカたん……嫉妬……してくれているの……?)


そして何かを決心したように、青年に向き直りーー。


「ちょっとしつこい! いい加減離れて!」


リンが青年を強引に引き離すと、青年は深く悲しげにうつむいた。


「え、えーとー……紹介するわ。この子はエレン~~私の実の弟なの」


俺はいきなりの事に、一瞬頭の中が真っ白になる。


「……は? そもそもリンに身内なんていないはずじゃ……?」


「あ、あははは……」


リンは目をそらして苦笑いをする。そして俺が話しについていけず困惑しているとーー。


「とりあえず落ち着けくそうんこが! 今説明してやるから」


さっきまで落ち込んで、取り付かれたように小さく『お姉ちゃん』と呟いていた青年エレンが、立ち直ってそうそう暴言を吐いてきた。


「くそうんこ!? くそもうんこもあんま意味変わんない気がするが……」


かくして、エレンの一時間にも及ぶ説明が始まったのだ。ところどころくそうんこというワードがでてきたが気にせずスルーする。




「い、一応納得した。」


説明がくそうんこ並みに下手なエレンに代わり、分かりやすく俺が説明しよう。


すでに皆さんお気づきだろうがここは異世界であり、bewoldビーワールドって言うらしい。様々な種族が存在し、その中でも11人しかいない神という種族に雷の神エレン、そして驚いたことに、リンもその神様の一人なんだと。俺の超充実するはずだった高校生ライフを、シスコンエレンのシスコン事情によって無理やりこっちに連れていかれた訳だが、こっからが本題。どうすれば元の世界に戻れるかーー。どうやらあの青い石が異世界転送石と言われ、世界名を直接書きいれ、五秒後に半径1メートル圏内なら誰でも、何人でも石に世界名を書いた人物の想像した場所に転送させるという代物だ。超貴重品で一部の神様しか持っていないらしい。ちなみに異世界を鑑賞するだけなら、観察窓というもので見ることができるそうだ。現状ここまでの説明を1時間かけて、エレンから受けた。


「はいはい、もうとにかくどうすれば元の世界に戻れるか教えてくださいよ!」


するとエレンは胸を張り、人差し指をたてながら意地悪な笑みを浮かべてこう言った。


「人助けをすること! あーちなみに人助けと言っても、人とは限らない。先ほど説明した通りこのbewoldにはいろんな人種がいるからな。貴様のその指輪の宝石が光に染まるまで人助けをすること。そうすれば、何でも一つ願いを叶えやろう。その時未使用異世界転送石を欲しいと願えば与えてやる」


「無茶苦茶だな。まあ、それしか方法がないならしゃーないか……」


「そうそう。貴様は黙って人助けしてくれればいいのさ……!」


「あれ? でもお前ってリンと俺を引き離したいんじゃなかったのか?」


「今はリンが貴様と遊ぶのも許してやるよ。どうせお姉ちゃんと結婚するのはこの僕だからな!」


(こいつマジきもいな……まさか結婚まで考えてるとは) 


「こっちの世界では姉弟でも結婚できるのか?」

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