生きる理由
幼い頃から、暴力に支配されてきた。
それがどう関与したのかはわからないけど、直感的にそれを原因と捉えている。
僕の趣味は異常な量の『生き物殺し』だった。
人に目が行かなかったのは、僕の中では奇跡とも言っていいかもしれない。祖父母の愛を知っていたから、僕は人に辛うじてとどまっていたのだ。
感覚というものに疎かったことから生まれた僕の知的好奇心を、周りは天才だと思い込んだ。二歳後半にして、絵本の文字を既に読めるようになり、空想の世界に足を運んだ。三歳にして、英語に興味を持ち、さらに1998年当初の200もの世界国旗を覚え、常に物事の舞台裏を観察するのが好きだった。それが、後に親が必要以上の欲を僕に対して持ってしまった原因でもあるのだけど。
別に、IQは高くない。120以下の一般域だ。ただ、知りたかった。それだけのことだった。
僕にとって怖いのは、辛うじて人の死、それと物理法則を無視した超常的な力……幽霊だった。
一人遊びが好きだった。二つのぬいぐるみを振り回して戦わせるのが、特に。
だけど、一番面白かったのは、何もなかった。
もう、生まれて19年。
相変わらず、喜びという感情は僕にはわからない。
暗闇に揺蕩う意識の中で、どれだけ走ればそれがどの程度なのか、どれだけの空白がどれだけの広さなのか、ひたすら考えるけどもわからない。生きているのか、死んでいるのかさえも曖昧だ。何が努力で何が怠けか、先ずはそこから知りたい。
空っぽだ。
だから、目の前のルールに取り敢えず従って生きてきた。
ルールに沿っていれば、何でもしてやった。
何かを壊すか、何かの魂を奪うことは、空っぽの僕に潤しい幻覚を思い起こさせたくれた。
それは喜びでもなく楽しさでもなく何でもない。ただの魂。
容れ物の僕は、彷徨うだけ。
知ってしまった、サッカーとか幾つかの愛の素晴らしさに引きずられた怒りを癒すために、生きている。
僕は、一人で部屋にいる時は、虚空を掴む仕草をすることが癖になっている。
空気という物質を透き通り、生きている僕。
それを感じるたびに、なんとも言えないもどかしさと怒りと憎しみが僕を電撃の様に貫くが、それは苦しくもなんとも無いように思える。果たしてこれは、苦しみなのだろうか。
それを知りたくて、さらに虚空を掴もうとする。
そこにあるのは、憎しみだけだ。
努力を半端に知ってしまった僕は、それでも手を伸ばし続けてしまう。
生きることを、投げ出すことができないのだ。