第3話 中川市と結婚
今回は中川市ほとんど関係ありません。
そのまま自分の部屋へと戻った俺は、安住さんの返事を確認するだけしてそのまま寝てしまった。
翌日。
俺は自分の布団の近くに置いてある時計で時間を確認する。時刻は6時半をちょうど刺したところであった。
もう少し寝ることができたのだが、起きることとした。
「はあ~」
思いっ切り両手を伸ばして間抜けな声を出す。間抜けな声を出した俺はそのまま自分の部屋のカーテンを思いっ切り開けて外からのまぶしい日差しを浴びる。
「うっ、まぶしい」
まぶしい日差しを受けた俺は次に着替えを始めようとしたところで気が付く。
「そういえば、今日って用事あったっけ?」
壁に貼ってあるカレンダーを見る。今日の日付のところは真っ白であった。手帳を取り出してみる。手帳にも今日の日付のところは真っ白であった。つまり、今日は何も予定がなかった。今日は休みだといっても特にやるようなこともなかったし、今日は久しぶりにリフレッシュとして自分の部屋にでも籠っていようか。そう考えた俺は適当な服を選びさっさと着替えるととりあえず食事をするために下へと降りて行った。
そして、10分後。
食事をさっさと食べ終えて、再び自分の部屋へと戻ってきた。さっさと食べ終えた食事はブルベリージェムを塗っただけの食パン1枚であった。俺はさっさく自分の部屋に帰るとテレビの電源を付けた。現在の時刻は6時43分であった。いつも通り、7時のニュースを見るためとりあえずはチャンネルを適当に回して時間を過ごしようやく7時になろうとした場所でいつものニュース番組にチャンネルへと切り替えた。
おはようございます。○月×日ニュース・セブンアワーの時間となりました。では、まず最初のニュースといきます。
全国的に今日から明日にかけては寒気が日本を覆う関係で気温は激しく低下します。ですので、外出の際には温かい格好をすることをお勧めします。また、北日本ではすでに雪が降っているところもあり各地の積雪量はご覧のとおりです……。
まず、最初は雪のニュースであった。そう言えば、予報によるとうちの周辺も雪が降るというのが明日の予報になっていたなと思い出す。だが、どうせこの地域は例年降ると言いながらも降った例がないのでどうでもいいやとすぐに忘れた。
続いて国会です。政府平和党は昨日成立しました自転車社会構築法に続きまして他の法律につきましても協力をしていきたいとの考えです。
昨日の記者会見で川崎総理大臣はこれは与野党が全面的に協力できた良い例だ。今後とも与野党で国益、さらには国民生活のために協力を続けていきたいものだ。と述べました。また、各党の国会対策委員長の面々も協力を出しまないという方向性のため予算案や一部重要法案以外は政局とはならないという見通しです。
続きまして佐藤副総理兼国土交通大臣の辞任についてです。
昨日成立しました自転車社会構築法を見届けた佐藤俊彦副総理兼国土交通大臣は就任記者会見の際に話していました成立の暁には辞任しますとの言葉の通り辞任を発表しました。川崎総理大臣は辞表を受理する方向です。記者団の質問につきまして佐藤大臣は次のように答えました。
私は再び戻ってきます。まずは1つ目のことをやり終えました。ただ、次にやりたいことは決まっていません。ですので、一度宣言通りにやめさせてもらい次は別の形で自転車についてのことを法律案を練っていきたと思います。
ブチン
番組の途中だが俺はテレビを切った。
佐藤副総理兼国土交通大臣か。俺は彼の事はよく知らない。だけれども、彼は有言実行であるというのはネットでの評判であった。きちんと記者会見の時の自身のセリフを守って辞任。普通の政治家ならば延命をしようとするものだ。そこまで潔い人はいないだろう。ただ、あっさり辞任することへの批判もある。だが、俺にはこういう人が市長であったのならばよかったのになと俺は思った。
さて、テレビを見終えた俺は今日は特にやることはないしどうしようかと考えた。まあ、考えたところで何をしようか何て思い浮かばなかったのが落ちであったが……。仕方なく、俺は昼寝でもしようと思ったがあいにく昼寝ができない体質なので気晴らしに外に出て家の周りでも散歩しようと思った。
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それからしばらく家の周りを歩いた。俺の家の周りは家が何軒か立ち並んでおり、近くにある通りを南側に進んでいくとザ・田舎的な風景である田んぼや畑で見渡す限り埋め尽くされている。この地域は再開発から免れて地元の農業組合が最後まで自然を大事にしようと残した場所であり俺自身もこの風景や空気は嫌いではなかった。ビニールハウスも何軒か立っており中ではかなり年配の方が農業に従事している。他にもこの辺で農作業をしているのは年配の方々だ。農業の高齢化は心配される。ただ、そんなことを考えても俺の専門分野ではない。後々には詳しくなりたいと思っているが今は素人同然だ。それに、この人たちの生活のためにも健全な市政は望まれる。だからこそ、あの市長を落選させてやる。やめさせてやる。俺は1人勝手に決意を新たにしていたのだった。
それから、再び歩き出して今度は近くの問屋町といわれる商業エリアに行った。この問屋町といわれるエリアでは有名ファストフード店ワックドナルドをはじめとした飲食店、中規模ショッピングセンターなどとこの中川市の旧域の中でもかなり栄えている地域だ。ただ、その繁栄も阿久川が市長になってからかなり鈍くなっている。こないだ、ここに作ることが決定したお店の1つの計画は中止になり、それは親入村の方に作られることとなった。完全に市長の陰謀だ。普通の人ならばそれは言いがかりだろというだろうがあの阿久川だ。暴力団を雇うぐらいであるからこれぐらいのことやるに違いない。自分の地元を繁栄させるのに手段を選ばない男だ。
「まったく、最悪だぜ。よく阿久川は逮捕されないものだ」
俺はぼやく。あんなに犯罪をやっているのになぜ捕まえることをしないんだ。俺は警察に対する信頼というものが限りなくゼロになっていた。ただ、警察はきちんとした証拠がないと捕まえることができないので、証拠を隠し続ける阿久川が完全に悪い。警察への信頼は落ちているものの、証拠をどうにかして見つけてもらいたい。
「せめて、せめて週刊誌にこのことを載せられたらな」
俺は再びぼやく。
さかのぼって昨日のこと。あの週刊誌に載せるという俺が提案したことを記したメールの返事が安住さんから帰ってきていた。その答えは残念ながら……ノーだった。安住さんはその理由をきちんと説明してくれた。
大川氏へ
君の週刊誌に載せるという提案であるが僕としては反対したいと思う。いや、反対というよりも無謀だということだ。まず、週刊誌というのは有名人つまりはアイドルや政治家、ここでいう政治家というのは主に国会議員のことだがそういう世間の注目になるようなものしか載せない。週刊誌も売り上げのために面白おかしく人の人生を棒に振るような内容を書くのであるから誰が、こんな地方の1都市のごたごたを載せられて楽しめるのだろうか、いやいない。これは成功しないと思うんだ。それに成功したところで阿久川は何か僕たちに報復でもするだろう。ここはおとなしくチャンスを待とうじゃないか。
安住 敬
これがその返事の中身であった。確かに安住さんの言うとおりだ。地方都市の話を載せたところで週刊誌の売り上げにはならない。こんなものを載せるぐらいであったら国会での大きなスキャンダルでも載せるだろう。俺はそこまで知恵が回っていなかった。流石は安住さんというべきだろう。俺は安住さんにありがとうございますという感謝の言葉を返信した。
「確かに安住さんの言うとおりだが……このままどうすれば良いのだろう」
俺はそろそろ家に帰ろうと思い、家の方角に向かって歩き始めた。ついでに何かいい案が思い浮かばないか考えながら歩くこととした。くねくね歩きながら家に帰る時間をちょこっとだけ伸ばしながら。
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それから数分後。
俺は家に戻ってきた。家の前の道路の前で立ち止まっている。結局、良い案が思い浮かぶなんてことはなく家に戻ってきてしまった。
まあ、そんなに簡単に良い案が思い浮かんだら今までの努力は何だったのかと言いたくなるから当然か。
俺はポジティブな解釈をして自分の家の玄関の扉に手をかけて開けた。
「ただいま」
一応、この年になっても「ただいま」などは言っている。挨拶は大切だからな。っていうよりも、親がうるさい。反論するとやはり結婚云々言われるので諦めて挨拶をしている。
「お帰りなさい」
「ああ」
俺は「ただいま」の返事が返ってきたのでそれに頷いてそのまま自分の部屋に行くため階段を上ろうとしたが、途中で立ち止まる。
あれ? と思ったからだ。今の「お帰りなさい」の声は女性の声であったがお袋の声ではなかったのだ。じゃあ、誰かと思いその声がした方向にいる人を見る。
「あ、愛!?」
そこにいたのは俺の幼馴染の愛であった。
なぜ、俺の家にいるのかという疑問がすぐさま横切る。ただ、その疑問を言う前にリビングの方からお袋の呼ぶ声が聞こえる。仕方なく、リビングの方へと歩いていく。早く自分の部屋に戻りたかったのに……
「こんにちは五郎君」
リビングに行くとお袋以外にもう1人お袋と同じ年ぐらいの女性がいた。俺はその女性に挨拶されたのでこちらも挨拶をする。
「こんにちは優子おばさん」
彼女は俺の家の隣に住んでいる優子おばさんだ。つまりは、愛のお母さんだということだ。愛のお母さんだということもあり顔の輪郭や面影は愛と似ている。家が隣だということや愛と俺が同い年ということもあり俺達の家と家は昔から親しい付き合いをしている。なので、俺の家にいるというのは別段おかしいというわけはない。
「それじゃあ、俺は少し部屋に用があるのでこれで失礼します」
俺はリビングから逃げるように自分の部屋に戻るとするがそれをお袋に止められる。
「待ちなさい五郎。今日は大事な話があるの」
「大事な話?」
俺はその言葉を繰り返して言う。大事な話って何だ? 俺にはどういう話か考えることができなかった。より、正確に言うとほかに考えることがいっぱいありすぎて思考が回転していなかったのが正しい。
「そうよ、大事な話。では、愛ちゃんよろしく」
お袋はそう言うとおとなしく優子おばさんの隣に座っていた愛が席を立った。隣にいる優子おばさんはなぜだか優しい笑みを漏らしている。これから何が起こるんだ? どうやらこの状況を知らないのは俺1人のようだ。
「ねぇ、五郎。もう詩織おばさんやお母さんには伝えてあるのだけどね、1つ言いたいことがあるの」
お袋にも伝えたこと? 一体何なんだ。俺は黙って次の言葉を待つ。ただ、ここまでの話の流れから何も感じない俺でもない。ある程度だが次に出てくる言葉は予想していた。
「結婚しましょう」
結婚。その言葉は俺とは縁がないものだと思っていた。俺は阿久川をやめさせるためだけに働いていたのだからそんな甘い言葉なんかに惑わされるつもりはなかった。ただ、いつかは結婚しないといけないと思っていたし独身で通すのも嫌だった。1人が好きだという人もいるが俺はそこまでメンタルは強くない。俺はその言葉に返事をしなければならない。愛のことが好きなのは俺自身も認めている。そして、好きな相手が結婚しようと言っているならとても幸せなことだ。だから、俺の返事は決まっていた。
「ああ、結婚しよう」
俺はOKと答えた。愛はその言葉を聞いて満足そうだった。近くで見守っている母親ズも満足そうだった。そもそも、先に母親に説明するとか逃げ場がないじゃないか。もし、俺が断ったらどうしたんだよと言いたくなる。
ってか、断るような環境がすでになくなっていた。愛の作戦勝ちのような気がする。
「「おめでとう」」
母親ズがお祝いしてくれる。いや、あんたら何様だよ。珍しくお袋に怒る俺であった。
「ただ」
俺は付け加えて言った。
うれしくて涙を流している愛や満足そうな母親ズも俺が次に何を言うのか分からないという顔をしていた。
「お付き合いもなしに結婚するのはどうかと思う」
俺は言った。いきなり結婚というのはどうかと思う。もう少しお付き合いでもしてから結婚でもいいのじゃないかと提案する。しかし、3人は俺の提案に対して笑った。おいっ、何がおかしいんだよ。
「五郎君って意外と乙女チックね」
「なっ」
優子おばさんから意外な評価を受ける。俺は恥ずかしくて顔が一気に熱くなる。はたから見れば真っ赤になっているのだろう。
「そうよ、実は五郎少女漫画がす──」
「ちょ、ちょっとお袋何を言っている!」
お袋が俺の秘密をばらそうとするので止める。
そ、そりゃあ、俺だって少女漫画の1つや2つぐらい読んだりするし、俺の部屋の本棚の青年漫画の棚の後ろ側にこっそり処女漫画を隠したりはしているけど、どうしてお袋がそのことを知っているんだよ。
俺の言葉に対して、愛が笑いながら目には涙がたまりながら言う。
「大丈夫よ五郎。私たちの関係は長いから付き合う必要はないでしょ。それにデートなら昨日したから」
「確かに関係は長いけ……って、あれデートだったのか!」
衝撃の事実。昨日の買い物が何かデートっぽいと思っていたら本当にデートであったのか。そういえば、愛がものすごくうれしそうだったと思ったし、服装もいつも以上にこっていたと思ったらこういうことだったのか。
ってことは、俺が出かけていることを完全に狙っていたのか。どうしてあそこに俺がいることが分かった。俺の行先を知っているのはもしや……
「……お袋まさか」
「そのとおりよ。昨日の五郎の行先なら私が教えておいたわ。楽しい時間そのおかげで過ごせたでしょ」
俺はそこまで考えていたならいいやと思った。それに愛と付き合いたいというのは単なる俺の願望であるだけだ。いきなり結婚しても付き合いとは変わらないだろう。
「くぅー、ああ分かった、わかったよ。結婚しよう」
俺は認めて答えた。周りの3人は笑っていた。俺は完全にグルだったなと思いテーブルの上に置いてあったお茶を一口で飲んだ。
「じゃあ、五郎。結婚式は来週だからよろしく」
「げほげほっ」
その言葉を聞いてむせてしまった。
そう言って愛と優子おばさんは帰って行った。
結婚式は来週か。うん、来週、来週!? 早くないか。ってか、そういうものって1か月以上前から準備をしておくようなものじゃないのか。
「おい、来週ってどういうことだ」
俺は愛に向かって叫ぶが玄関の扉が閉まる音だけが響いた。完全に、逃げやがった。くそう、全部愛のペースかよ。
ちなみにあとで聞いた話であるが、愛と俺の結婚の話は3か月前に決まっていたことであり結婚式の準備はすでに1か月も前に終わっていたらしい。俺が断るはずがないとお袋が勝手に了承をしていたみたいだ。もしも、俺が断ったときはどうしていたんだよ。相変わらず行動に呆れるお袋であった。
「……部屋に戻る」
にこにこしているお袋にそう言うと俺は部屋に戻った。
何だかんだ文句を言いながらも心の底うれしかった。俺はその日自分では認めるつもりはないがルンルンしていたとお袋もオヤジも言っていた。
そして、満足な一日を終えて眠った。その日の後半だけは阿久川のことをまったく考えなかった。
翌日にあんなことになるまでは…………
感想お待ちしております。
明日も同じ時刻に更新します。