第7話
~わだつみ学園~
俺は、学校に着くなり、奇妙な雰囲気に包まれた。
(なんだ、これは?)
言いようもない感覚に背筋が寒くなる。
「どうしたんですか~難しい顔をして」
よっぽど、顔をしかめていたのであろう。雪美さんが心配そうな顔で尋ねてきたので、俺は、中間テストが嫌なんだとおどけて見せた。それに対する雪美さんの返答は、
「そうですか~。楽しいじゃないですかテストって。」と言う一般人とはかけ離れた回答であった。
そして、俺は、違和感を感じつつも、雪美さんと何気ない話しを始めた。
「そう言えば、一年生にとっても可愛い子が転入してきたそうですよ~。知ってましたか~。」
「あぁよく知ってるよ。」
「わぁそうなんですか~。もし良かったら、今度、紹介して下さいね~。」
「一応、君に関する事だから、今日、明日中にも紹介しようと思ってたよ。」
そんな話をしている中
「せ~ん~ぱ~い!!」
底抜けに明るい声で咲希が話掛けて来た。
「お前、相変わらず、うるさいな!」
「良いじゃないですか!これが咲希ちゃんの持ち味なんですから!」
咲希は、巽に抱き付いてくる。
それと同時に女の子らしい柔らかな感触に巽は、ドキッとした。
「鼻の下が延びてますよ!巽」
いつから、そこに居たのかは、わからないが、恵が絶対零度の眼差しを送ってくるのが、わかった。
「鼻の下なんて伸ばしてない。ただちょっと嬉しかっただけだ。」
俺は本音混じり気味に恵に言う。
「まぁその事は、後でお説教するとして。」
「説教されんの!?どうして!?」
「ちょっとこちらに来てください。」
「ちょ!?無視っすか!恵さん!」
「あ~もう!咲希並みにうるさいですよ。」
「それは、心外だ!」
「ちょっと先輩は、それは言い過ぎです。」
咲希の反論に俺と恵は声を合わせて言う。
「「お前(咲希)は、うるさい(です)」」
雪美さんの横で、涙ぐみ四つん這いになった咲希を雪美さんが、慰めているのを後目に、俺は恵に近づいた。
「どうした何かあったか?」
俺が声をかけると恵は、真剣な表情をして言う。
「今日は、やけに学校の雰囲気が違うと思いませんか?」
恵も俺と同様に感じており、やはり気のせいではなかったようだ。
「恵もか。俺も今朝学校に着いてから感じていた。しかもこの嫌な感じは、悪霊と戦う前に似ている気がする。」
「やはり、そうですか。私もそのような気がしていました。」
「俺はこのまま少し調査に入ろうと思う。まぁ朝礼をサボってしまうのは心苦しいがな。」
「私も一緒に行きましょうか?」
恵の提案に俺は、首を振る。
「いや、大丈夫だ。それよりも、もしもに備えて、雪美さんの近くに居てくれ。」
「了解しました。何かありましたら、通信して下さい。」
恵に言葉に頷くと、雪美さん達の方に顔を向けて言う。
「ごめん!ちょっと体調が悪いみたいだから、保健室行ってくる。それとそこに居るのが、例の転校生だから、雪美さん適当にしゃべっててくれ。」
「適当!?先輩酷い!ちゃんと紹介して下さいよ!」
俺は、ひらひらと手を振りながら教室を後にしたのだった。
俺は、銀刀の変わりに、銀製の短刀隠し持ち、辺りを警戒しながら、歩く。
(やっぱりこの感じ、悪霊と戦う時と同じだな。)
廊下を歩きながら、考える。そして、段々とその神経が研ぎ澄まされていく。
(これは、本格的に悪霊が入り込んでるいるな。)
そう考えている時、体育館の裏に、二つの黒いもやを発見した。
(嫌な予感は当たるってか!)
俺は、小声で通信を入れる。
「恵、悪霊を発見した。これから、討伐にあたる。雪美さんの護衛は任せた。」
「了解しました。一応咲希を派遣しましょうか。」
「いや、憑依前だから大丈夫だ。」
俺は、恵との通信を切り、体育館裏へと走って行くのだった。