第6話
~美空市街中~
ツインテールをひるがえし、一人の少女が、黒いもやと戦っていた。
「うーん、やっぱり下級悪霊だと手応えないな。」
戦いの最中、そんな軽口をたたく。
彼女に向かい、車が飛んでくる。少女は、飛んできた車をステップで逃れながら、下級悪霊に肉薄した。
「これで終わりっと♪」
黒いもやは、双刀の銀刀に切り裂かれ霧散したのだった。
少女は、仲間に連絡を入れる。
「こちら、三代咲希、下級悪霊の撃退に成功。憑依暴走者の保護お願いします。」
通信機ごしに男の声が響く。
「了解、輸送車を回す。お疲れ様。」
「いえいえ、この程度でしたら、問題ないですよ。」
咲希は明るい声で返したのだった。
~アマテラス本部~
俺は、咲希が任務から帰って来たのを確認すると咲希を呼び出した。
「御苦労様。今日の任務はどうだった?」
「めちゃ簡単なものでしたよ!」
咲希が明るい声で答える。
「あまり、油断をするなよ咲希。場合によっては、下級悪霊でも十分な脅威に成ることもある。」
巽は、咲希に対して苦言を呈した。
「油断なんかしませんよ。今日だって、全力でやりましたもん。」
「そうか、ならいい。ところで咲希に頼みたい事がある。」
咲希と目をあわせながら、俺は言う。
「俺と恵が護衛している少女の護衛に、君も参加してもらたい。」
「隊長と恵先輩が護衛してる人って、確か憑依体質の方でしたよね。」
「そうだ。厄介な事に、この件には特級悪霊が絡んでくる可能性がある。だから、そのための護衛の増加が急務であり、そこで司令から、君も護衛に加えるよう命令があった。どうだやれそうか。」
「悪霊を倒す事ができるのでしたら、何でもしますよ!」
「そうか、なら一緒に、わだつみ学園に通ってもらおう。」
「きゃほー!夢の女子高生だ!本部での勉強に退屈してたから、ちょうど良いタイミングですね。」
咲希は、目を輝かせ二つ返事で、了承した。
大丈夫かな?こいつで、変な行動しなければ良いんだけどと俺は思った。
「では、来週にお前をわだつみ学園に編入させるから、よろしく頼むな。」
目の前で、変な踊りを踊っている咲希を見て、幸先が不安になる巽であった。
~美空市郊外廃墟ビル~
そこで、暗いもやと話をする青年の姿があった。
「どう?女王は見つかったかい?」
黒いもやは、人の形を取ると首を横に振った。
「そうか。やっぱりそう簡単にはみつからないな。」
青年は、手に顎を乗せ、考える。
「よし、もう少し悪霊を放ってみるかな。」
青年の手から、暗いもやが発生する。
「お前達、必ず女王を見つけ出せ。彼女の力こそ、我らの世界と、この世界を結ぶものだからね。」
悪霊たちは、一斉に飛び立ったのだった。
「さて、僕は邪魔者達を倒しに行こうっと。」
青年は、歪んだ笑顔を顔に浮かべる。
「まずは、僕の事をこそこそかぎまわってる奴等からかな。」
そう言うと青年の姿は、夜の闇と同化した。