第3話
~アマテラス研究所~
「結論から言うのであれば、彼女は、憑依体質だ。」
研究所長の棚橋春風は言った。
「本当ですか?」
俺は、顔をしかめながら尋ねた。
春風は、メガネの位置を戻しながら述べる。
「本当だ。しかも他の憑依体質より、さらに悪霊耐性が低く、より憑依されやすいと言う特殊性もある。今まで憑依されなかったのが、奇跡だな。」
悪霊耐性低いと言う事は、本来人間が纏っている気のようなものが、少ないと言う事だ。
「では、彼女は、特別観察対象者と言うことになりますね。」
「そう言う事になるな。一応彼女には、説明はしているし、防衛力を高めるために、銀弾や銀刀に使われている耐性銀のネックレスも渡した。」
「ですが、それだけでは、不十分なのではないでしょうか」
「そうだな。何人か護衛のようなものが必要になってくるだろう。」
ちょうどその時に、二人の部屋に一人の妙齢な女性が入ってきた。
「今回の件ご苦労だった。」
入室して来たのは、アマテラス司令の草薙弥生だった。
「いえ、今回の悪霊は、特殊な能力を持たない比較的楽な任務でしたので。」
俺は、敬礼を行いながら、述べる。
「いや、それを差し引いても、ヤタガラスの活躍は、十分に称賛に値するものだ。」
「ありがとうございます。」
「敬礼は、もういい。休め。」
巽は、敬礼をやめると弥生に顔を向けた。
弥生が口を開いた。
「ところでなのだか、今、私の手元に、ちょっと悪いニュースと大分悪いニュースの二つがあるのだが、どっちから聞きたい?」
俺は、額に汗を浮かべながら言う。
「両方聞かないと言う選択でいきたいのですが?」
「それは無理だ。」
「それでは、大分悪いニュースからお願いします。」
「うむ。これは、かなり悪い事なのだが、特級悪霊が出現した。」
「特級悪霊ですかっ!?」
悪霊には、その能力に応じて、下級、上級、特級と別れており、上級以上は、固有の特殊能力を有するものが振り分けられる。その中で、特級悪霊は、人間を核にする事なく、出現できる完全
なる異質である。
「昨晩、調査班が確認したものだ。」
弥生から、資料を受け取る。
「資料の中に、人間の言葉を喋ったとある点と、サイコキネシスによる攻撃も認めらた。しかも、核となる人間がいない状態でだ。よって我々、アマテラスは、特級悪霊と認定した。」
「調査班に被害はありましたか?」
「腕の骨を折った隊員がいたが、幸いにも死者は、出ていない。」
「それは、不幸中の幸いですね。その後、特級悪霊はどうなったのでしょうか?」
「特級悪霊は、姿を消した。今は追跡班が行方を探している。」
俺はその言葉に頷くと司令に言った。
「今度出現したら、すぐに連絡を下さい。奴らは、俺の敵ですので」
「そう言えば、君のご両親は特級悪霊の被害で亡くなられたのだったな。だが、復讐にかられて無茶だけはするなよ。」
「了解です。」
口では、そう答えたが、巽の手は固く握られていた。
「さて、もう1つのニュースなのだが、君に早乙女雪美の護衛をやってもらいたい。」
「はっ、はい!?自分がありますか。」
「そうだ。なぜなら、君の部隊のみが彼女と一番歳が近く、彼女の通う学校に潜入しやすいからだ。」
こうして、俺は、雪美の護衛役となったのだった。