第2話
巽は、輸送車の中に広がる沈黙に、冷や汗を流した。
まだ、恵が凍るような白い目で、巽を凝視していたからだ。
「なぁ今回のは、本当に不可抗力だったんだって」
俺は先ほどの弁明と同じことを言う。
「先ほどの行為は、本当に不可抗力だったのかもしれません。ただ、通信であった誰かより大きかったって言うのは、一体誰のことですか?」
ヤバい地雷踏んでた!
「それは~その~」
チャキッ
「なんで、無言で銃構えてんすか!?恵さん!?」
「いえ、なんとなく。」
「恵のことじゃないって!だって恵は、美人なんだからさ」
俺がその台詞を言った途端、恵の顔が赤くなった。
(よし!地雷回避成功だ!)
そんな、アホらしいやり取りをしてる中、
「あの~お取り込みの最中に、すいません。」
早乙女さんが話しかけてきた。
「うん、何かな?」
俺は、ここ一番の笑顔で早乙女さんに振り返った。
「私をアマテラスでしたっけ?そこに連れて行って、何をするんですか?」
(あぁそう言えば言ってなかったな)
「実はね、アマテラスの研究所では、憑依暴走を起こした人のデータを取って、憑依されやすい人かどうかの確認を行っているんだよ。」
「憑依されやすい人?」
「そう、めったにいないらしいんだけど、たまに憑依体質って言うものを持っている人がいるらしいんだ。まぁその確認に軽い検査してもらうんだ。」
「はぁそうなんですか。」
「ごめんね。ちゃんと説明してなくて。」
「いえ、それは良いんですけど、私一人暮らしで、家の鍵を閉めたか不安なんです。」
「えっ!?そこ不安になる!?もっと、どういう検査とか痛くないかとか気にしないんだ!」
「えぇ勿論じゃないですか。もし泥棒さんが入って、私のお気に入りの下着とか盗られたら嫌ですもん。」
「しかも下着泥棒の話しかよ!」
「下着泥棒も、泥棒さんです。」
「あははは、まぁそうだろうね。はぁ~」
巽は、やたら疲れた顔で窓の外を見た。
「さぁて、もうすぐアマテラスの研究所に着くからね。」
巽は気を取り直し、少女に声をかけたのだった。