第0話
街で人々が喚き、走り逃げる。
「キ、憑依暴走だっ!!」
「いや!死にたくない!」
「誰か助けてくれ!」
その中で、人間一人では持ち上げ切れないトラックを軽々と空中に持ち上げ、黒い影を纏った少女が笑っていた。
未知の精神体である悪霊に憑依され、人間では考えらない力で、破壊を行う行動を人々は憑依暴走と名付け、恐れていた。
人々が逃げ惑う街のビルの上で、一人の少女が対人ライフルのスコープを覗き込み呟く。
「サポーター恵より隊長へ」
「どうした?恵」
「今回、核となっている人は、少女のようですが、何時もの通りに狙撃してもよろしいでしょうか?」
「許可する。憑依暴走を止めるためだ。」
「了解しました。彼女の足を止めます。」
「よろしく頼む。」
少女の指が、そのトリガーを引いた。
「さて、俺も仕事するかな。」
先ほど隊長と呼ばれた者が、飄々とした声で銀色に輝く刀を手に取り駆け出す。
その瞬間、憑依暴走していた少女の体が力が抜けたかのようによろめく。
「すぐ解放してやるから、大人しくしてろよ!」
一閃と呼ぶに相応しい剣撃で、少女が纏っていた影の部分のみを切り裂く。
「ぎゃぁーー!」
少女の口から、この世と思えない声が発せられた。
それと同時に、影は霧散し、少女の持ち上げていたトラックが落下を始めた。
「ちっ!間に合え!」
隊長は、少女を保護すべく体に飛び付く。
トラックの落下音が周辺に響く。
「た、隊長大丈夫ですか!?」
恵は慌てて通信を入れ、隊長の安否を確認しようと試み、
「ーーっ!?」
絶句した。
読んで頂き、ありがとうございます!超素人ですが、頑張って行きたいと思います。