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脱皮

 抜け殻を見た。僕だった。今までは何をしていたのか、そりゃあ、もちろん覚えているが、覚えているが。何を一体こんなに苦しんでいたのだろう――と思った。

 今はすっきりしている。とてもスッキリしている。きっと子供から大人へなる過程の、葛藤だとか、そんなのだったんだろう。うん。人間の成長に一番大事なあれだ。誰もが通る道のそれ。

 なるほど、こうしてやっと僕は大人になったのか。人はこうして大人になれるのか。実に爽快な気分だ。何もかも自由。悩む必要なない。大抵の問題は、蛹期の時代ときに解決した。芋虫から蝶になる、あのドロドロした液体の中で経験した。うん、だから大丈夫。今更悩むことなどあるものか。

 

 街は明るく、広く、どこまでも開けている。よくあるチラシのイラストにあるみたいな、綺麗で身近にある、健やかで健康的な街だ。明るい背筋の伸びた女性がハツラツと歩き、子供を連れた親子が、微笑み合いながら手を繋いで買い物に出かける。もちろん家族三人、父子母でだ。犬の散歩をする女性。スーツ姿の男性。ベンチに座り仲良さげに寄り添う老夫婦。どこまで言ってもカラフルなイラストの様な街並みが続いている。

 そんな気がした。


 私は普通になった。やっと普通に馴染んだ。普通になれた。きっと、皆が理想としている生活を目指せるレベルまで上り詰めた。権利を手に入れた。採用が決まった。ここから私はもっと普通になれる。オシャレな雑誌にあるみたいな「キラキラの毎日」がきっと待っている。


今までの正体がわかった! 僕は「なりかけ」だったんだ! 大人になりかけ、蝶々のなりかけ、「本当の自分」のなりかけ。これが、僕なんだ! 今の自分が、本当の僕なんだ!

そうやって、青春みたいな空を仰いで、くらくらしそうな太陽光の下で、やり直しに駆けだした。過去に向って笑顔を向けながら。


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