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似合わない

 私はなんて小さな奴なのだろう。自分ばかりが不幸だと思って、思い込んで。人の所為にばっかりして。悪口よりもっとたちの悪い、全く上手くない皮肉もどきで相手を攻撃する。

 もっと見直せよ。もっと解れよ。もっと理解しろよ。自分の小悪性を。自分の下等さを。自分の劣悪を。もっと自覚しろ。

 

 そして一人になれ。もっと籠れ。

 いや、最低限の社会生活はしろ。人間の皮を被りたいなら当然だ。普通を振る舞え。普通を纏え。普通を繕え。それで、いつもは一人で居ろ。独りだ。

 良く言われる言葉で言うと、「誰にも心を開くな」だ。誰にも相談するな。不安も不満も、苦しみも悲しみも、痛みも(あれば)嘆きも、憂いも、虚ろも、全部全部、他人には見せるな。

 よくある、可愛いふわふわした悩みなら良いだろう。そう言うのは少しは見せないと普通は装えない。だけど、本当の今の気持ちは見せない。何を考えているのかわからない、この状態も教えない。何があったかも言わない。 私は装うだけ。表面だけでも、人間に見えるように。

 だから私には近付かないでくれ。私にはその様な関係は似合わない。向いていない。相応しくない。勿体ない。いつか罰か当たるんじゃないかとビクビクしている。

 私は人間じゃないから、人間らしい恋愛なんて要らないんだよ。どうにも、自分のパズルのピースに当て嵌めてみても、違和感があるんだ。憧れる――憧れていたけど、もう、自分にはやっぱり似合わないってわかったから。上手く言えないけど、似合わないとしか言えないんだ。猿が人間のフリをして、洋服を着てるみたいだろ? いや、猿だって洋服は着るから、もっと別の。猿だって、生殖行動や本能はあるのだし。人間との恋愛とは違うだろうが。じゃあ、私はもっと生物ですらない何かだろうな。生物のように、生存願望も生殖本能も感じない。

 そうだな、おもちゃのロボットだ。今の高性能なロボットじゃなくて、安物のおもちゃのロボットが無理矢理人間の服を着ている。それも勿体ないな。そんな手間の掛かった製品なんかじゃない。人間になれなかった、何か。そんな成り損ない。

 

 そんな癖して、いや、そんな成り損ないだからか。他の人間が羨ましくなる。特に、自分と近いと思っていた人間が。

 人間は変わる。誰もが変わっていく。そもそもが、その人の本当の姿を見ていなかっただけかもしれない。近いと勝手に思い込んでいた。一時でも、仲が良かった。それだけ、ただそれだけ。それだけの人なのだけど、思い出は美化される訳で。私の数少ない楽しい思い出を共有した(と思われる)人物だから。その人が変わってしまったのを、その人が実に人間らしく、愛情に富んだ女性らしく生きているのを、成り損ないで出来損ないの私は嫉妬するのです。快く思わないのです。

 なんて卑怯な人間でしょう。なんて汚い人間でしょう。間違えた。人間ではないのでしたね。自分を不幸だとか言って酔っている前に、もっと自覚しろ。ただ、自分は汚いモノなのだという事を。

 だから、離れて下さい。

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