終わらないのはお片づけ
あるゴミだらけの部屋がある。
彼はそこの支配者だ。どこに何がおいてあるのかも把握しており、足の踏み場も無さそうな床を難なく通り抜ける。彼はこの部屋で十分だった。
だが彼に転機が訪れる。家に友人がやってくるのだ。居間に通せば大丈夫、そう思うがもし部屋を見られたら、と考えると少しだけ片付けとこうという気になった。
そこから彼とこの部屋との勝負が始まる。
長い年月により層と化したゴミ。そしてところどころに仕掛けられたトラップ。彼が予想以上に苦しめられることは想像に難くない。だが彼は着々と倒して行く。
まず彼はゴミ袋を用意し、空き缶やペットボトルそしてお菓子やパンの空き袋などを詰めていく。そこに分別という文字はない。
そしてゴミ袋がいっぱいになると次の袋を用意しこれを延々と繰り返す。まずはいらないゴミが片付いた。今までは序盤の敵だ。これに負けることはありえない。戦いたくはないがいざ始まったのなら簡単に倒すことが出来る。軽い景気づけだ。
そして次に挑むのは中盤の敵だ。「懐かしいマンガ」は魅了の状態異常を引き起こし作業を中断させ、「虫の死骸」は的確にダメージを与えてくる。さすが中盤。ゴリ押しじゃなく補助技を使うだけの能力がある。
だがこちらにも補助技はある。「アラーム」だ。十分だけセットし魅了を的確に解除していく。そして最強奥儀「掃除機」を発動させる。轟音と共に消え去る「虫の死骸」さらに落ちている細かなゴミも吸っていく。
掃除機による蹂躙が終わった後、残ったのは「まとめられた本」と「服」だけとなった。
だが大量の虫を倒しレベルがあがった彼の敵ではない。
対汚物洗浄兵器「洗濯機」に「服」をすべて突っ込み、スタートボタンを押す。
水に揉まれ洗剤により汚れを落とされ見違えるようにきれいになっていく。それを確認し彼は「まとめられた本」に手を伸ばす。一箇所にまとめられた本を魅了されないようにしながら収納兵器「本棚」にしまっていく。「まとめられた本」は何巻も続いていることがあり「懐かしいマンガ」よりも魅了の時間が長い。だが床に置かれ手に取ると本領を発揮する本は、力を失っていく。そして彼が最後の一冊をしまうと共に封印が完了した。
それと同時に「洗濯機」の終了の合図が流れてくる。だが彼の攻撃は終わらない。追撃「乾燥機」により「服」に熱、遠心力の二つのダメージを与えていく。
そして「乾燥機」が終わると同時に更なる追撃により敵を恐怖のどん底へと突き落とす。
高温圧殺兵器「アイロン」だ。しわくちゃになりもう虫の息の「服」に止めを刺す。
そうして一枚一枚丁寧にプレスした後、畳んでタンスにしまい封印を施す。
そうして残る敵は「ゴミを詰めた袋」だけ。だかこいつは侮れない。特定の条件でしか倒せないからだ。まず分別。その次に指定色の袋に封印。そして最後に指定された曜日に指定の場所に持っていく。その四つの条件がないと倒せない。だが彼はもう疲れている。そして判断を誤った。
友達が来るのはもう少し先、なら封印されてるこいつらを置いておいてもいいだろう。
床にゴミはない。本も本棚だ。服も畳んである。だが一角を陣取るゴミ袋。
一週間後彼は友達を居間に通し、部屋に入れることはなかった。
彼の部屋はゴミ袋の上にゴミが乗っかりそこから流れる滝のようにゴミがあふれ出ていた。
それから彼が一週間おきに繰り返すお片づけ。終わったことは一度もない。
この短編で時間を有意義に使えたと思われたのならとてもうれしく思います。見てくれてありがとうございました。