第1話 怪物
マーセが目を覚ましたら、ここはあの大自然の世界だった。
「よう、気がついたか。」
不思議な生き物はマーセに言った。
「あなたが助けてくれたのね…ありがとう。まぁやり方は少し雑だった気がするけどね。」
マーセは少し嫌味も混じえてありがとうを伝えた。
「素直に言えばいいのによぉ、だけどさすがにお前が気絶したのはオレも悪いか。ほら、パンも一応持ってきたぞ、食えよ。」
生き物はマーセに焼きたてのパンを渡した。
「ありがとう、久しぶりのご飯…だけどやっぱり美味しいとは思えない…」
「なんでだ?このパン焼きたてでめっちゃ美味しそうだぞ?」
生き物はマーセに尋ねた。
「それは、盗んだものだし…あんたも悪いことして食べるご飯は美味しくないのは想像できるでしょ?」
「うーん、あいにくオレは人間が食うようなもんは食わねぇんだよな。」
「へぇー、不思議な生き物ね、そういえばまだ名前聞いてなかったわね、なんて言うの?」
「実は…思い出せねぇんだ…オレが覚えてるのはこのオアシスにある世界の存在くらいなんだ…」
生き物は下を向きながら悲しそうに言った。
「じゃあ私が付けてあげるよ、ずっと生き物って言い続けるのもあれだし。」
「いいのか?じゃあカッケェ名前付けてくれよ。」
生き物は嬉しそうにマーセを見つめる。
「うーん、ケルベスはどう?」
生き物はその名前を繰り返し言った。
「すげぇカッケェじゃん!その名前気に入った!」
「アハッ!気に入ってくれて良かった。」
マーセも嬉しそうにケルベスを見つめた。
「あとあなた、鉄を飲み込んでバイクに変身してたけど、どういうことなの?」
「あれか?オレは取り込んだ魔力によって色んな力を使えるんだよ、例えば金属だったら身体を色んな形に変えられたり、手紙だったら書いた人の情報とかを読み込んだり、他にも色々できるぜ?」
ケルベスの説明にマーセは疑問を浮かべた。
「そもそも魔力ってこの世界にあるの?」
マーセは昔に絵本で魔法使いという空想上の職業を見たことがあり、同時に魔力という存在を知った。しかしこれは絵本の中だけの物だと思っていた。
「お前、魔力が見えないのか?この世の万物には魔力が込められている。物によって微量な魔力だったり、大量の魔力だったり様々だ。」
「見えないのかって、そもそも人間みんな魔力なんて見えないわよ。」
「そうなのか、人間って不思議だな。」
ケルベスは驚いた表情で言った。
「あ、そういやお前の名前も聞かないとな、せっかく名前も付けてもらったんだし。」
ケルベスは尋ねた。
「私はマーセ、マーセ=ブリタニアよ。」
その時、ケルベスは少し驚いた表情になった。
「マーセ…ブリタニア…いい名前だな!」
「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇ。それよりお前、こんな盗んでばっかの生活は嫌だろ?オレにいい考えがあるんだよ。」
ケルベスはマーセに言った。
「そりゃあ嫌に決まってるでしょ。んで、いい考えって?」
「見た感じ、お前がいる世界は戦争が絶えないんだってな?なら俺たちで傭兵になろうぜ。」
ケルベスの提案でマーセの顔は曇った。
「……」
マーセは1年前の影響で戦争がトラウマになっているようだ。
「すまねぇ…何か嫌な記憶を思い出させちまったようだな…」
「ううん、私がいつまでもあの過去に囚われいるのが悪いし、1年前に生きてた親友が私にこう言ったの。恐怖から逃げていたらずっと恐怖のままだ。だけど一歩踏み出せばこれはもう恐怖では無くて勇気なんじゃないか?って。だから私は恐怖に勝たなければいけない、この話乗ったわ。」
フリードが言ってくれたあの言葉を胸に、マーセはケルベスの提案に賛成した。
「だけどそう簡単に傭兵になれるの?私戦闘スキルなんて一切ないわよ?」
18歳の少女に戦闘スキルなんてあるわけが無い、それはケルベスも分かっていた。
「さっき魔力を取り込んだら色んな力を使えるって言っただろ?金属を飲み込んだらオレは銃とかにもなれるんだよ、しかもここから放たれる弾丸は俺の意思があるから百発百中だぜ?」
こういいながらケルベスは銃に変身した。
「今回は比較的デカ目の鉄を飲み込んだから1ヶ月くらいは変身できるな。」
「ふーん、いいじゃない。」
顔には出さないが少しだけ興奮しているマーセであった。




