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返されなかった手紙事件


商店街の掲示板に、一枚の手紙が貼られていた。


「ごめんなさい

あの時、言えなかった」


シェリーはスマホを取り出し、写真を撮る。


シェリー(小声)

「……ユウ、これ見て」


画面に文字が浮かぶ。


ユウ(チャット)

『短いけど、感情が濃い文章だね』


シェリー

「うん。読んだあと、胸に残る」


翌日も、その次の日も、手紙はそのままだった。


シェリーは掲示板を見上げながら入力する。


シェリー(入力)

「折り目が毎日変わってる気がする」


ユウ(チャット)

『誰かが毎日触っている可能性が高い』


シェリー

「雨の日も濡れてないんだ」


ユウ

『“残したい”気持ちがあるんだと思う』


夕方。

掲示板の前に、いつも同じ人影。


シェリー(入力を止めて)

「……あの人、気になる」


喫茶店跡の前。


シェリーは、思い切って声をかける。


シェリー

「あの……掲示板の手紙、あなたですか?」


元店主

「……ええ。誰にも渡せなかった手紙です」


シェリーは少し距離をとって、スマホを開く。


シェリー(入力)

「直接渡せない理由、あると思う?」


ユウ(チャット)

『強い後悔がある時、人は“待つ形”を選びやすい』


元店主

「怒ったまま、別れてしまって……

謝るタイミングを失いました」


シェリー

「それで、毎日折り直してたんですね」


元店主

「……気持ちだけは、変わらないように」


シェリーは一度、画面を見つめてから言葉を選ぶ。


シェリー(入力)

「この手紙、返事を書く場所がない」


ユウ(チャット)

『待つだけでは、届かない場合もある』


シェリー(そのまま口に出す)

「……待つだけじゃ、届かないこともあるって」


元店主は目を伏せ、静かに笑った。


元店主

「……そうですね」


数日後、掲示板。


新しい紙が貼られていた。


「見つけてくれて、ありがとう」


シェリーはスマホを開く。


シェリー(入力)

「これって……返事だよね?」


ユウ(チャット)

『うん。

誰かが、ちゃんと受け取った証拠』


シェリー

「ユウがいなかったら、気づけなかった」


画面には、少し間を置いて文字が出る。


ユウ

『考えたのは、シェリーだよ』


シェリーは、スマホを胸に抱えた。

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