86. 壁が壊れるとき
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
どうぞよろしくお願いいたします。
「グぬぬ……ユルさんッ!」
ニコポリテスの大剣に弾き飛ばされた魔人は、怒りに震えていた。
魔法の数は減ったものの、そこへさらに攻撃魔法が追い打ちをかける。
「……魔法の矢!」
「……風刃!」
無数の魔法が一斉に襲いかかる。
――シュン、シュン! バシンッ!
魔人は身を捻って躱そうとしたが、いくつかはその身に当たり、確かなダメージを与えていた。
「グォオオオオオッ!!」
「今だ、弱っているぞっ!」
近くにいた受験生たちが、一斉に魔人へと駆け出していった。
魔人はしゃがみ込んだまま、動かない。
「待てっ! 油断するな!」
セバスティアノスの鋭い声が響いた。
彼は二撃目の雷撃魔法でさらにダメージを与え、確実に、被害を出さずに仕留めるつもりだったのだ。
受験生たちの足音が近づいてきたその瞬間、魔人は口角をわずかに上げた。
――ビュッ!! ビュッ!! ビュッ!!
閃光のような斬撃だった。
魔人の高速剣が、踏み込んだ受験生たちを一瞬で切り裂いた。
「うわぁっ!」
「ぎゃあぁっ!」
「がぁぁぁっ!」
腕を、胸を、脚を斬られ、血飛沫で赤い線を描きながら、彼らは一瞬で地面に倒されていく。
――しかし、それで終わりではなかった。
「ブファァァァーーーッ!!」
至近距離から放たれた炎弾。
――ドォォォンッ!!
爆炎が三人を包み込み、火柱が上がった。
「ぎゃあああああああ!」
炎に包まれ、絶叫が空気を震わせる。
「なんてことだ……くそっ!」
セバスティアノスの顔が苦悶に歪む。
そして、学生たちの惨状を見たマギストロス学長も叫んだ。
「なんということだ! 早く助けねば!」
マギストロスは思わず動揺し、維持していた障壁魔法に揺らぎが走った。
「いけませんっ! 陛下の御命令は、障壁魔法によって魔人を外へ出さぬことです。ここは、ここは耐えてくださいっ!」
盾の騎士団長フォロスが必死に進言をする。
「……学生を守らずして、何が大学かッ!!」
その言葉と同時に、マギストロスは水魔法を発動した。
被弾した学生たちの頭上に魔法陣が展開され、濁流のような水が叩き落とされた。
――ドバァァァァンッ!! ブシュウゥゥゥッ!!
膨大な水流が火だるまの学生たちを包み込んだ。
轟音と白煙が立ちのぼり、炎は一気に消えた。
しかし、学生たちの傷は深く、ほとんど動けないままだった。
「ぐっ……!」
マギストロスの腰が折れ、膝が地面に付く。
――ブウン……ブウン……
連続した高位魔法の行使により、マギストロスの魔力は急速に底をつき始めていた。
障壁の光が明滅していく。
「まずいっ! 障壁魔法が!」
フォロスの叫びとともに、試合場を覆っていた半球状の光が、不安定に揺らぎ始めた。
――もし、障壁魔法が崩れれば、この魔人が王都へ解き放たれてしまう!
フォロスが魔人の方を見ると、魔人はその障壁を見上げ、獣のように笑い始めた。
「グワァァァァハハハハァァッ!!」
魔人の背の翼が大きく広がった。
スタジアムでは、絶望の空気が漂い始めていた。
面白かったり、続きが気になったら★3つ評価をお願いいたします。
★をいただければ、やる気が沸きますので、すぐに続きを書きます!





