85. 粒ぞろい
更新が遅くなってしまい、申し訳ありません。
どうぞよろしくお願いいたします。
「はいッ!!」
フォロスの叫びに応えた声の中に、カテリーナの声もあった。
そしてその右手には、実戦用の刺突剣が握られていた。
柄を通して伝わってくる、神聖魔法による強力な身体強化の感覚――
それは兄が託してくれた想いでもあった……。
――ほんの一分前。
「みんな、私が戻るまで無事でいてっ!」
風を切りながら、カテリーナは必死に走り続けていた。
「お嬢さまぁーーー!」
入場口付近から、聞き覚えのある衛士の声が響いてきた。
「えっ!?」
「お、お嬢さま……ハァ、ハァ……アレクシオスさまから……剣を……剣を、預かって参りました!」
全力で走り続けてきたのだろう。
衛士の言葉は荒い呼吸で途切れ途切れだった。
「ありがとう! お兄さまが!?」
「はい。異変を察してすぐ、私に指示を。
それと……この剣には付与魔法を施してあると」
「付与魔法?」
「はい。魔力を使わずに、身体強化が発動するタイプの付与魔法とのことです」
カテリーナは目を見開いた。
「いつの間にそんな魔法を?」
「宿屋です。お嬢さまの優勝祝いに準備しておくと……」
カテリーナは、胸が熱くなった。
受け取った剣を胸に抱き寄せ、いつも自分のことを気にかけてくれている兄に、あらためて深く感謝をするのだった。
――お兄さま、本当にありがとう!
「あ、届けてくれてありがとう! ごめん、仲間が危ないの。すぐに戻るねっ!」
「はいっ! 私もお供いたします!」
そして駆け戻ったところで、ちょうどフォロスの言葉を聞いて返事をしたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ブファァァーーッ!!」
魔人は複数の炎弾を同時に発射した。
受験生と戻ってきた一部の騎士たちは、即座に散開した。
そして――
「この剣と共に切り裂く風よ、起これッ! 風刃!」
「……火球!」
「……魔法の矢!」
若い騎士の卵たちは、移動しながら一斉に魔力を解き放った。
空中で魔人の炎弾と魔法が交差していく。
「フンッ!」
放たれた複数の魔法は包囲するように殺到していったが、魔人は凄まじいスピードで飛びながら魔法をなんなく躱していく。
その一方で、騎士たちは大きなダメージを受けていた。
――ドォンッ!
――バーンッ!
炎弾の直撃は何とか避けられたものの、着地の際の爆風を受けて吹き飛ばされた者――
着弾後の爆ぜた炎に巻き込まれ、転げまわっている者――
「……水魔法!」
――ブシュウゥゥゥッ!!
水の奔流が炎を呑み込み、白煙が立ち込める。
消火役と攻撃役。
現場の状況に即応し、若き騎士たちの間では、自然と役割分担が生まれ始めていた。
「くっ、上手くやってくれてはいるが、このままでは長くは持たない……」
フォロスが思わずポツリと呟いた――その瞬間だった。
――バチバチバチィィンッ!!
「グォォォオオッ!!」
空気を裂く轟音と共に、魔人の身体へ雷光が炸裂した。
よろめいた魔人が高度を失い、地面に墜ちていく。
「フンッ、魔法が使えるなら負けはしないっ! 雷撃魔法の速さからは逃れられぬぞ!」
雷撃魔法を得意とする、セバスティアノスの一撃だった。
魔人は辛うじて墜落は免れたものの、ついに地面へと降り立った。
「!? ……グフゥッ!」
魔人の口から、今度は炎弾ではなく、赤黒い血が吐き出された。
「ヌゥッ……こレハッ……!?」
「ははーん、やっと効いてきたね。さすがの魔人さまにも、毒は通じるみたいだね!」
魔人が声の方へと顔を向けた。
そこには、肩をすくめて薄ら笑いをするヨアニスが立っていた。
そして袖口からは、次のナイフが滑り落ちる。
「僕らの世界じゃね、ナイフに毒を塗るのは当たり前なんだよ。生き残るためにねッ!」
再びナイフが放たれた。
魔人はぎりぎりのところで身を捻り、投げナイフを回避する。
その一瞬の隙だった――
「ウォォーーリャーーッ!」
――ビュウンッ!
ニコポリテスの大剣が唸りを上げて魔人へと迫った。
――ガキーーンッ!
魔人は咄嗟に剣で受けることで、何とか致命打は免れたものの、その衝撃により身体ごと吹き飛ばされた。
――バタン、ゴロン、ゴロン、バタンッ!
「おおっ見事な連係じゃ! 今年の受験生たちは粒ぞろいじゃな」
マギストロス学長が感嘆した。
「ええ、大いに期待できますね! 今すぐ我が団にスカウトしたいほどです!」
「ふふ、それは困る。まずは大学で、しっかりと学んでもらわねばな!」
「はは、そうですね!」
フォロスの口元が、少しだけ緩んだ。
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