81. 決断の瞬間(とき)
第一章のクライマックスです。
どうぞよろしくお願いいたします。
――ガシィィーーーンッ!!
鼓膜を突くような衝撃音が炸裂した。
それは金属同士がぶつかって弾けたような高い音ではなく、金属で金属を受け止めたような、鈍く重い音だった。
咄嗟に剣を構えたカテリーナの前に、全身を分厚い甲冑で包んだ大柄な騎士が、地面を踏みしめるように立っていた。
その騎士は魔人の攻撃を受けて押されはしたものの、カテリーナに届かぬよう、大盾で正面から確実に魔人の剣を止めていた。
「えっ!? ドゥーカス……さん?」
「ニコでぇぇ……構わないッ!!」
そう言い切ると同時に、その大柄な騎士は大剣を横一文字に振り振り抜く。
――ビュウンッ!
空気を引き裂く轟音をたて、横薙ぎの一閃が魔人の身体へ襲いかかる。
魔人の剣を大盾で受け止め、その死角から放った一撃だったが、魔人は持ち前の身体能力で咄嗟に後方へ跳び退いた。
カウンターの一振りは空を切ったが、とりあえずカテリーナの危機は救われた。
魔人の強烈な一撃を受け止め、大剣を振るい、カテリーナの前に立ち続ける男――
それは、受験生選抜トーナメント第二試合でカテリーナに敗れた鉄壁の巨人、ニコポリテス・ドゥーカスだった。
「ニ、ニコさん、ありがとうございます!」
「……間に合って良かった。大切な人を失うわけにはいかない!」
「……え?」
その言葉の意味を考える間もなく、魔人の猛攻が始まった。
――ガキンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ!
ニコポリテスは盾と分厚い金属装甲を巧みに使いながら、身体そのものを“壁”にしてカテリーナを守り続ける。
「……この魔人は、ここにいる者たちで斃すしかない!」
ニコポリテスの言葉を受け、カテリーナが即座に動いた。
カテリーナは、持ち前のスピードを生かし、ニコポリテスが攻撃を受け止め、弾き、押し返した一瞬の隙間から、鋭い突きの連撃を繰り出していく。
――シュッ、シュッ、シュッ、シュッ!
カテリーナの剣は的確に急所を狙ったため、魔人は牽制され、思わず動きを鈍らせた。
「ウォォォォォ――リャァァァ!!」
再びニコポリテスの大剣が、すべてを薙ぎ払うような勢いで横に振るわれた。
――ビュウゥーーンッ!
遠心力が乗った重い大剣を剣で受ければ、骨ごと砕かれかねない。
その危機を察した魔人は、大きく後方へ跳び、再び攻撃の範囲外へと距離を取った。
「……その剣は、試合用の安全剣だろう?」
ニコポリテスが、短く息を切らしながら言う。
「ここは僕に任せて、今の内に君は逃げるんだ!」
「あっ……!」
カテリーナは、自分の剣の先端を見た。
直前まで決勝戦を戦っていたため、今手にしているのは、先端が丸められた練習用・試合用の安全剣だった。
鉄製の刺突剣であるため、本気で突けば相応のダメージは与えられるが、魔人相手では決定打にならないだろう。
――そうだった! 私は練習用の剣しか持ってきていない!
でも、私が逃げたら、ニコは一人でこの化け物を止められるの……?
答えは、分かりきっていた。
――でも、このままじゃ……どうすればいいの!?
ゆっくりと魔人の膝が曲がり、太ももの筋肉が盛り上がっていく。
次の瞬間に備えるかのように、身体の重心が低く沈んだ。
「次の攻撃が来るぞ! 早くっ!」
ニコポリテスが叫んだ。
逃げるか。
踏みとどまるか。
それとも――。
カテリーナに、決断の瞬間が迫っていた。
小説を書くのが初めてです。
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