80. 国王の指示
第一章のクライマックスです。
どうぞよろしくお願いいたします。
「あぶない! 助けに行かねばっ!」
宮廷大学受験生選抜トーナメントの運営者席から、宮廷大学学長セヴェリアン・マギストロスが、試合会場中央へ駆け出そうとした、その瞬間だった。
「……マギストロスさまー! 陛下ぁ、陛下からのご命令ですっ!」
近衛騎士団の伝令が、息を切らしながら駆け寄ってきた。
全速力で走ってきたのだろう。その荒い呼吸が、事態の緊急性を物語っていた。
「はぁ……はぁ……。障壁魔法を発動し、魔人をスタジアム外へ出さぬように、とのご命令です!」
「なに……!? それでは、受験生たちが危険に晒されてしまうではないかっ!」
マギストロスは、思わず怒気を含んだ声を上げた。
「あの殺戮能力を持つ魔人を外へ逃せば、祭で賑わう国民に甚大な被害が出てしまいます。心苦しいですが、騎士団の騎士たちが到着するまで、持ちこたえてほしい――そう仰せです!」
「……くっ!」
国王の意図を理解したマギストロスは、苦悶の表情を浮かべながらも、小さく頷いた。
そして即座に魔法の詠唱を開始する。
マギストロスが詠唱を始めると同時に、空気が震え始めた。
試合会場を地面から包み込むように、半円球状の障壁魔法が張り巡らされていく。
「なっ……!? カテリーナたちごと、魔人を封じ込める気か!?」
治癒魔法に集中していたアレクシオスだったが、自分がいる観客席より内側に展開されていく障壁魔法に気づき、思わず声を上げた。
魔人もまた異変を察知し、閉じ込められるのを避けようと空へと跳び上がる。
――しかし、わずかに遅かった。
障壁がほぼ完成されており、魔人は頂点付近で頭部を強かに打ちつけた。
「グァオオオオオオオオオッ!!!!!」
魔人が怒りの咆哮をあげた。
上空から周囲を見渡した魔人は、障壁魔法を行使しているマギストロスの存在に気づいた。
その直後、空中から猛烈な勢いで降下し、マギストロス目掛けて剣を振り下ろした。
――ガキィィンッ!!
間一髪だった。
振り下ろされた魔人の剣を、巨大な盾が正面から弾き返す。
「この盾は、神聖魔法を幾重にも施された、古より伝わる伝説の盾だ! 貴様ごときの攻撃など、通りはしないっ!」
盾を構えている重騎士――その男は盾の騎士団団長、オレスティス・フォロスだった。
盾の騎士団は、王都の防衛や治安維持を担う騎士団である。
団員の大半が国民の避難誘導や、混乱の秩序回復の役目を果たしている中、フォロスは現場を部下たちに任せ、自らは魔人の対処のために、スタジアムへ駆けつけてきたのだった。
魔人は怒りを露わにし、狂ったように剣を振るい続けた。
――キンッ! キンッ! キンッ! キンッ! キンッ!
火花が散り、衝撃波が走る。
だがフォロスは微動だにしなかった。
フォロスの魔力が盾に流し込まれると、盾は球状に白い光を放ち続け、半径一メートル程度の範囲は、剣や魔法の攻撃を完全に防ぐ力を持っていた。
「……学生たちも、守ってやることはできないだろうか?」
魔人の激しい攻撃が続く中、マギストロスは、自身の身よりも学生たちを案じていた。
「……私も陛下のご命令を承っています。心苦しいですが、マギストロスさまは障壁魔法の維持に集中なさってください。
魔人を閉じ込めているあなたを守るのことが、私の任務です!」
その言葉を受け、マギストロスは目を強く閉じ、障壁魔法に意識を集中させた。
魔人は、二人への攻撃が無意味だと悟ると、再び試合場へと視線を移した。
「グァオオオオオオオオオッ!!!!!」
咆哮とともに、魔人は地を蹴り、一直線にカテリーナの元へ突進した。
「危なーーいっ!!」
盾の騎士団長フォロスの叫びが、スタジアムに響き渡った。
小説を書くのが初めてです。
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