76. 赤面
決勝戦で二本目が決まりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
――一閃。
カテリーナの先が、完璧に決まった。
セバスティアノスが剣をわずかに振り上げた、その瞬間。
カテリーナの剣先は、雷光のように走り、右腕の装甲の無い部分を正確に捉えていた。
セバスティアノスの腕が大きく弾かれ、剣を握ったままそのまま止まる。
互いに静止した二人の姿は、誰の目にも明白だった。
「一本っ!」
その宣告がなされた直後――。
――ワァァァァァァァァァッ!!
まるで爆発したかのように、スタジアム全体を揺るがす大歓声が巻き起こった。
国王は内心では甥であるセバスティアノスを応援していたが、公平さを示すと同時に、名門ルクサリス家への配慮もあり、立ち上がって盛大な拍手を送り続けるのだった。
「よーーーしっ!! やったぞカテリーナ!!」
アレクシオスは両拳を突き上げ、全身で喜びを表していた。
一方――
「……完敗だ、カテリーナ殿」
セバスティアノスは、静かに剣を下ろした。
その表情に悔恨はなく、人に敬意を示す晴れやかな顔になっていた。
「正直に言おう。私などとはレベルが違う遥かな剣の高みへと、君は進んでいる」
その表情に悔恨の色はなく、敗者でありながらも相手を称えるような、晴れやかな顔だった。
「大学では……私に、剣を教えてはもらえないだろうか?」
「……えっ?」
次の瞬間、その後の影響を理解したカテリーナが叫んだ。
「えぇぇぇぇぇぇーーーっ!? わ、わたしなんか、とてもそんなレベルじゃ……!!」
「おや? さっきまで歴戦の勇者の顔をしていたのに、ずいぶんと可愛い顔をするんだな」
「……そ、そんなことありません!」
カテリーナは恥ずかしそうに答える。
「はは……どうやら、こちらのほうが『本当の君』らしい」
「そ、それに……あ、そうだ! 剣の騎士団長さんみたいな、もっとすごい方に教わった方が絶対にいいですよ!」
慌てて言い繕うカテリーナに、セバスティアノスは楽しそうな笑顔で答える。
「マルキアノス・ファレグス子爵、だね」
その名を聞いた瞬間、カテリーナの体がピクリと動いた。
「それにしても――少し気になる噂を耳にしてね」
「……え?」
「実技試験で、ファレグス子爵が自ら教官役を務め、しかも受験生が勝ってしまったらしいんだ」
――あっ! マズい! 余計なことを言っちゃった!?
「……もしかして、君はあの『双剣のマルキアノス』に勝ったのではないか?」
カテリーナの全身から冷や汗が噴き出した。
そして、思わず視線を逸らしながら答える。
「……な、何のことでしょう?」
「ぷっ……ふははははは! 君は本当に分かりやすいな」
「!!!」
「ますます気に入ったよ。大学では、ぜひ仲良くしてほしい」
「は、はは……それは光栄です、セバスティアノスさま」
「『セブ』でいいよ」
「……え?」
「将来の妻とは、対等な関係でいたいからね」
――ブフッ!!
カテリーナは思わず咳込んでしまった。
「えっ、えっ!? い、今、何と?」
「『セブ』でいいと言ったんだ」
「い、いえ、その後です!」
「『将来の妻』の話かい?」
「は、はひ。……そ、それはどういう意味でしょう?」
「言葉通りだよ」
「あ、あの、私は魔力がほとんど無くてですね、その……」
「知っている。貴族の間では有名だからね」
「では……」
「全く問題ない」
「えっ?」
「子供も5人くらい作れば、誰かが僕の魔力を受け継ぐだろうしね」
――ブファッ!!
カテリーナは再び咳込んでしまった
「正直、女性からのアプローチや、縁談の話にはうんざりしているんだ」
「え、えぇ……セバスティアノスさまは、おモテになると思います……」
「ふふ、だから『セブ』でいいよ。
僕はね、家同士で決められた結婚ではなく、自分で生涯の伴侶を決めたいんだ!」
「そ、そうなんですね……」
「僕は……剣が強い女性が好みなんだ!」
「えぇぇぇぇっ!?」
「実際、そう言って何人も断っているんだ」
「そ、そんな理由で……」
「だからこそ君は最適なんだ! 家柄も問題ないし、反対なんかさせはしないさ!」
「ま、待ってください! わ、私の、き、気持ちも……!」
セバスティアノスは一歩下がり、跪づいて深く一礼をした。
「失礼した、カテリーナ・ルクサリス殿。貴女が私を選んでくれるよう、大学では自分を磨くことを誓います」
「えっ、ちょ、ちょっと……こ、こんなところで、そんなに畏まらないでくださいっ!」
「分かった。……では、カティ、これからもよろしく!」
「ぇ…………」
――えぇぇぇーーーーーーーーっ!?
どうして、どうしてこうなったの?
困惑するカテリーナの顔は、耳までも真っ赤に染まっていた。
小説を書くのが初めてです。
どんな内容でもよいので、感想をいただけると執筆の励みにもなりますし、本当に嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m





