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蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー  作者: みーしゃ
第一部 王立宮廷大学を目指そう!

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72. 堕ちるイカルス

 ついに、第三試合・準決勝が決着します。

 どうぞよろしくお願いいたします。

――絶対に飛んでくる! ならば……賭けるしかないっ!


 カテリーナは、自らの『思い込み』が原因でヨアニスに一本を奪われた後、一つの策が閃いていた。

 三本目の開始直後に防具の小手を外したのは、単にスピードを上げるためだけではなかった。

 肘や手首の可動域を最大限に広げ――刺突剣(レイピア)を投げ槍としても使えるようにしていたのだった。


 ヨアニスは再び太陽を背負い、助走から跳躍へと移る!


「――いっけぇええっ!」


 カテリーナの叫びと同時に、刺突剣(レイピア)が閃光となって空中を(はし)った!


――ヒュンッ!!


 狙いすましたカテリーナの刺突剣(レイピア)は、一直線にヨアニスの胸元へ飛んでいく。

 放物線を描き始めた飛翔中の彼には、避ける手立てがなかった。


「なっ、避けられ……」


――ズシンッ!


 鋼鉄と肉体が衝突した重音が、試合場に伝わっていく。

 レイピアという剣は誤解を招きがちだが、しなったりするような軽い剣ではない。

 その重さは普通の剣とさほど変わらず、基部は肉厚で丈夫にできており、刃を研げば骨すら断ち切るほどの威力を持っている剣なのだ。


 放物線を描いていたヨアニスの身体が、まるで翼を失ったイカルスのように、無力に墜ちていく。


――ドシン! カランカラン……。


 ヨアニスの身体は、カテリーナの剣と共に地面へ叩きつけらた。


「うぐっ……」


 軽装のヨアニスは、胸への直撃と地面への落下により、大きなダメージを負っていた。

 重たい金属を胸でまともに受けた衝撃から、呼吸が止まり一瞬意識を失いかけるほどだった。


――ぐ……まだだ! 1ポイントを失っただけだ。……まずは剣を!


 幸運なことに地面に落ちたカテリーナの剣は、手を伸ばせばすぐに届きそうな位置にあった。

 しかし、ヨアニスは這いつくばったまま、立ち上がることができなかった。

 それでも震える腕で、何とか地を掻きながら進み、その剣を掴み取る。


――とりあえず、これですぐには負けはない。……相手はどこだ?


 そう思った瞬間だった。

 ヨアニスの頭上に、黒い影が覆う。


 顔を上げると、そこにはカテリーナが立っていた。

 その腕はヨアニスの首の横へと伸び――

 そしてその手には、ヨアニスのナイフが握られていた。


――!!!


「一本! それまでっ!」


 審判の大きな声が響きわたった。

 その直後、スタジアム全体が割れるような大歓声に包まれた。


 国王が立ち上がって拍手を始める。

 それにつられるかのように、貴賓席にいる貴族たちも立ち上がって拍手を始めた。


 身分も戦い方も、全てがまったく異なっていた二人だったが、お互いに魅せ続けた極技の応酬に、観客たちはすっかり心を奪われ、立場や身分を超えて二人に対して惜しみない拍手を贈り続けるのだった。


 ヨアニスはその場に座り込み、息を吐いた。


「……あーあ。負けちゃったか。いやぁ……まさか、剣を投げてくるとはね……」

「あなたに一本取られた時、思い込みはダメだと反省したんです。でも同時に閃いたんです。この思い込みって、あなたにも使えるんじゃないかって」


「えっ、どんな風に?」

「まず一つ目は小手を外した理由です。あなたはスピードを上げるためだと思い込んだのではありませんか?」


「確かに!」

「そして二つ目は、私は剣を投げたりしないという思い込みです」


「……これは見事にやられたよ。僕は投げ続けていたっていうのにね」

「そして最後……私があなたのナイフを拾って接近戦に持ち込んでくるはずがないという思い込み……というか、想定外の戦い方です。――まあ、要するに意表を突いたってことです!」


「……ふっ……ははっ、はははははッ!!」


 ヨアニスは一瞬目を丸くし――思わず吹き出してしまった。

 悔しさよりも、相手の見事さが胸にすとんと落ち、むしろ清々しい気分だった。


「……君は本当にすごい人だよ。僕なんかの想像の遥か上をいってる。完敗だ! おめでとう、ルクサリス殿」


「ありがとうございます。私のことは『カテリーナ』でいいですよ。お互い大学に入れば同級生になるんですから」


「……そうか。ありがとう、カテリーナ。

 ……じゃあさ、合格したら、僕が大学での友達の第一号になってもいいかな?」


「ええ! 喜んで!」


 カテリーナは手を差し出し、ヨアニスはその手を取って立ち上がった。


「僕にはまだ三位決定戦が残っている。必ず勝って……少しでも君に相応しい男になるよ!」

「はい、がんばってくださいね!」


 ヨアニスの顔が赤く染まっていく。

 思い切って自らの好意を告白したつもりだったが、当のカテリーナはニコッと微笑んだだけで、その好意にはまったく気づいていなかった。


 ヨアニスはその顔を隠すように一礼すると、後ろ向きのまま手を振りながら去っていった。


――勝っても負けても、友達のままなのに……。うーん、律儀な人なのかな?


 こうして準決勝は紙一重の攻防の末、カテリーナの勝利で幕を閉じた。

 そしてこの勝利は、『思い込みを外す』という、カテリーナ自身の心の成長にも繋がる、価値のある勝利となっていた。


 小説を書くのが初めてです。

 どんな内容でもよいので、感想をいただけると執筆の励みにもなりますし、本当に嬉しいです。

 どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

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