70. 光り輝く雨
第三試合、準決勝戦三本目です。
どうぞよろしくお願いいたします。
――私の考えが間違っていなれば……準備もいるし、何回もはできないはず! ここは行くしかない!
カテリーナは再び猛烈な連撃で前に出始めた。
足音さえ置き去りにするような速度――そのスピードと勢いに、観客も息を呑んだ。
――シュッ、シュッ!
「そんなに積極的だと、また知らない間にポイントを失うかもよっ」
ヨアニスは余裕を装って笑いながら話したが、内心は焦りつつあった。
だが表情は崩さず、カテリーナの閃光のような突きをギリギリで躱し続ける。
――まずい! この突きの嵐……少しでも気を抜いたら一瞬で終わる!
カテリーナの突きと、ヨアニスから放たれたナイフが交差する。
――シュッ、キンッ!
「……足元からのナイフは、そう何度も投げられないでしょう?」
カテリーナが核心を突いた言葉を発した。
「……何のことかな?」
「ナイフと同化するような色の服装なのに、足首から下だけはなぜか黒……。
靴にナイフを仕込んで、太陽の影に隠れるように投げましたね!」
――シュッ、シュッ、キンッ!
その会話は、凄いスピードで剣を繰り出せる者と、それを躱せる者の間でのみ成立する会話だった。
ヨアニスの眉がピクリと動く。
「……ふ、さすがに二回目だし、ばれちゃったか」
「あなたがナイフを拾っているとき、1つだけ金属の反射が無いナイフがありました。あれがそうですよね?」
――シュッ、キンッ、キンッ!
ヨアニスは驚くと同時に、妙な感動すら覚えていた。
――観察して、分析して、その答えにたどり着く。強いだけでなくて頭もいい。……本当に凄いよ!
「君みたいな素敵な人、大好きだよ!」
その言葉に、カテリーナは一瞬、胸がくすぐられたように感じた。
しかし、真剣勝負の試合でお互いに後が無い状態。
カテリーナの気持ちは戦いへと集中し、攻撃の手を緩めるようなことはなかった。
――ナイフは無尽蔵じゃない! それに、あの軽やかな動きから、靴の中には何本もナイフを隠せない……押し続ければ必ず勝てる!
「……ふふっ、僕のナイフが尽きるのを待っているね?」
「!!」
図星を突かれ、カテリーナは思わず心臓がキュッとなった。
しかし、それを悟られまいと、突きの連撃を重ねる。
「……でもね、ナイフの重さが減ってきた分、いいこともあるんだよっ!」
ヨアニスは追い込まれる流れを断ち切るかのように、バックステップからバク転へ移行し、一瞬で距離を空けた。
――次の瞬間、逆に風を切り裂くような勢いで前へ走り――跳んだ!
軽やかに、まるで羽ばたくかのように、高く、高く舞い上がった。
――高い! 今までとは全然違う軌道!
カテリーナは反射的に剣を構え直し、空中からのナイフを撃墜するために意識を集中させた。
「下がれ、カテリーナ!」
観客席では、危機を感じたアレクシオスが大きな叫び声を上げた。
ヨアニスの小柄な体は、余計な重さが抜けたことで、翼を得たかのように軽くなっていた。
そして、その身体が太陽の中に隠れると、黒く塗りつぶされた影が、何かの造影を作るかのように美しく変化していく。
その芸術的な黒い形の中から、光を反射する何かが、一瞬、雨粒のように輝いた。
その直後――。
――キンッ! カン! カン! カン! バチン!
カテリーナの優れた反射神経により、影の中から飛来したナイフの内の一つは撃墜できた。
そして、残りの三本は外れて地面をたたき、最後の一本――それが、腹部を直撃した!
「青、1ポイント! 合計2ポイント!」
――しまった! これが最大の切り札だったんだ!
カテリーナは0ポイント。それに対しヨアニスは2ポイント。
あと1ポイント取られたら、一本となり、ヨアニスの勝利で終わる。
カテリーナは追い込まれ、最大の危機を迎えていた。
小説を書くのが初めてです。
どんな内容でもよいので、感想をいただけると執筆の励みにもなりますし、本当に嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m





