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蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー  作者: みーしゃ
第一部 王立宮廷大学を目指そう!

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68. 刃先が届く距離

 第三試合、準決勝戦二本目です。

 ちなみに「このときを、待ってた!」のセリフは、……そう、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語」からでございます。だから掴むのです!

 ……どうぞよろしくお願いいたします。

――シュッ


 カテリーナの鋭い突きが、ヨアニスの目前で空を切った。


 先に仕掛けたのはカテリーナだった。

 作戦は単純明快――相手に2ポイント取られても、こちらが先に一本を奪えば勝ち。

 ならば最初から全力で攻めるだけだ。


「おっと、いきなり積極的すぎない?」


 ヨアニスは軽装と身のこなしを活かし、カテリーナが近付いた分以上に距離を広げる。

 カテリーナも相当なスピードの持ち主だったが、剣と小手の重さでわずかヨアニスより劣っていた。


――シュッ!

――タン、タン!


 踏み込むカテリーナに対し、距離を取るヨアニス。

 先ほどの死闘とは打って変わり、攻撃が交わらない単調な展開が続く。

 カテリーナとの距離が近くなれば、ヨアニスは牽制のナイフを投げ、また離れる――その繰り返しだった。


――どういうつもり? 私が疲れるのを待っているのかしら? このままじゃ……


 退屈な試合に、観客席からはブーイングが起こり始めていた。


「逃げてばかりじゃなくて、まともに戦えーっ!」

「準決勝なんだぞ! こんなつまらない試合を見せるなー!」


――好きに言うがいいさ。結果さえ出せば何も言えなくなる。


 ヨアニスは観客を無視し、ひたすら回避に徹していた。


――シュッ!

――タン、タン、タン!


 観客席の空気を感じ取った審判も、状況を見かねて警告を入れた。


「両者に警告する! 消極的な展開が続くのであれば、試合場を第一の円まで縮小する!」


 国王陛下も上覧している一大イベントで、観客の不満を放置したままにはできなかった。

 良い試合になるようにコントロールしていくことも、審判の重要な役割なのだ。


――それでも、展開は変わらなかった。


 カテリーナは追い続けたが、ヨアニスは牽制のナイフを投げながら、広い試合場を最大限に使って距離を保ち続けた。


「待て! 消極的な試合と判断し、試合場を第一の円の範囲内まで縮小する!」


 ついに審判が動いた。

 宣言と同時に、観客席は興奮と期待からさまざまな声が飛んでいた。


「これでようやく試合が動くぞ!」

「もう逃げられないぞヨアニス!」

「がんばれー!」

「期待しているぞーお嬢さま!」

「平民の意地を見せてやれー!」


 貴族も平民も関係なく、カリスティア王国では誰もが騎士や魔導師に尊敬の念を抱く。

 たとえそれが受験生であったとして、観客の声援には敬意と期待が混じっているのだった。


――きっと狙い通り……のはず。でも、何を狙っているのかしら?

 ……いや、惑わされてはダメ! 相手にポイントを取られても、私は一本で決める!


 カテリーナは迷わないように戦いの方針を決めた。

 審判から試合のエリアに関する注意事項が伝えられた後、二人は定位置に着いた。


 カテリーナは剣を構えたが、ヨアニスは相変わらず素手のままだった。

 観客が息を呑む中、試合が再開される。


「始めっ!」


 カテリーナは審判の声と同時に、爆発したかのように前に出た。

 ヨアニスも後方へ大きく跳び上がり、空中で身体をひねりながらナイフを投げ放つ。

 ナイフの狙いはカテリーナの手前。距離を取るための投擲だった。


――来たッ!


 カテリーナは迷わずにさらに踏み込んだ。

 右肩にナイフが当たった痛みが走るが、気にならない。


――この1ポイントは構わない! あと1つ取られても、私の突きの方が先に届く!


 着地したヨアニスの胸をめがけて、鋭い突きが一直線に迫る。


「まずい、カテリーナ!」


 観客席からアレクシオスが叫んだが、歓声に呑まれ当然その声はカテリーナの元には届かない。


――ヨアニスの手に次のナイフが……えっ、ない!?


「このときを、待ってた!」


 カテリーナの伸びてきた剣先を、ヨアニスが右手で掴んだ。

 剣先の軌道を逸らしながら、勢いのついたカテリーナをそのまま引き込み、自らは身体を逆時計回りに回転させる。


 綺麗に躱され横に流された形になったカテリーナと、背中合わせになったヨアニスが並ぶ。

 そして、回転している身体から、左手が後ろ向きのままカテリーナの方へと伸びていった。


――背中合わせの体勢のまま、二人の動きは止まった。


 カテリーナはややバランスを崩してはいるものの、綺麗な突きの姿勢のままだった。

 一方のヨアニスは、いつの間にか隠し持っていたナイフが左手で握られており、カテリーナの喉元へピタリと添えられていた。


 その様子を確認した審判が、静寂を切り裂き大きな声を上げた。


「……い、一本!」


 次の瞬間、爆発するような大歓声がスタジアムを揺らした。


「……どうして?」


 カテリーナは喉元のナイフを見つめながら、青ざめた表情で語りかけた。


「君は、僕のナイフは投げるものだって思い込んでいただろう?

 でも、接近戦に持ち込めば、僕も握ったナイフで一本を狙えるってことさ」


 ――本日のトーナメントの試合で、カテリーナが初めて一本を取られた瞬間だった。


 小説を書くのが初めてです。

 どんな内容でもよいので、感想をいただけると執筆の励みにもなりますし、本当に嬉しいです。

 どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

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