66. 見えないナイフ
第三試合、準決勝戦です。
どうぞよろしくお願いいたします。
カテリーナは剣を構えたまま、ヨアニスの動きを探った。だが当のヨアニスは、両手を頭の後ろで組んだまま、薄く笑って微動だにしない。
――私の出方を待ってる? いえ、これは……罠ね。
カテリーナは剣を構えたまま動かず、相手の動きを待った。
「あれー、大貴族のお嬢さんは慎重なんだねぇ。じゃあ、僕の方から行くよ!」
――来るっ!
身構えた瞬間、ヨアニスは足先で地面を蹴った。
その身体がしなり、まるで軌道を描くように軽やかな回転へとつながった。
「えっ……何!?」
カテリーナは予想外の動きに思わず目を見張った。ヨアニスは、ダンスを始めたのだ。
ヨアニスの動きは優雅で、カテリーナも一瞬剣を下げそうになるほど、魅入られるような美しいダンスだった。
「油断するな、カテリーナ!!」
アレクシオスは思わず立ち上がり観客席から叫んだが、歓声にかき消されて彼女の耳までは届かなかった。
ヨアニスのダンスは、その美しさの中に激しさもあり、緩急のついた動きが攻撃の予兆を完全に覆い隠していた。
カテリーナはハッと気付き、意識を引き締め剣を構え直す。
――きっと、予想外のタイミングでナイフを投げてくる!
しかし、ダンスは続き、ナイフは飛んでこなかった。
――仕掛けるべき? いや、未知の相手ほど慎重に見極めるべき……お兄さまの教えよ!
カテリーナは距離を保ち、相手の動きに集中を続ける。
すると、ヨアニスがスピンに入った。
――ナイフを飛ばすなら、不意を突くタイミングのはず……このスピンの最中?
一気に回転速度が上がり、服のデザインが横縞模様のように見え始める。
そして、ヨアニスの腕が一瞬だけ僅かに動き、その横縞模様とちょうど重なるように鋭い閃きが走った
――来てるっ!
カテリーナは咄嗟に剣を傾け、飛んできたナイフを弾き飛ばした。
――キンッ! バシッ!
「うっ!」
ナイフを弾いた直後、カテリーナの左足の脛に強烈な衝撃が走った。
「1ポイント!」
審判の声が響いた。
「やられたっ!」
アレクシオスは興奮し身を乗り出したまま、助言ができないもどかしさに、開いた手に拳をバチンと当てるのだった。
――すごい! 手から放たれたナイフに意識を向けさせ、本命はもう1つのナイフだったんだわ。
でも、どうやって投げたのかしら……?
カテリーナは恐怖よりも、未知の戦い方に胸が高鳴っていた。
――フフッ……気付いていないみたいだ。腕を意識させるだけでいい……これなら、もう一回いけそうだ!
ヨアニスは踊りながら、不敵な笑みを浮かべていた。
だがカテリーナも、攻撃の形が見えたことで打開策を組み立て始めていた。
――遠心力を利用した投げナイフ……なら、狙いを絞らせないように動き続ければいい!
カテリーナは左右のステップを織り交ぜ、不規則な動きで距離を詰めはじめた。
「来たね! 待っていたよ、お嬢さん!」
カテリーナが間合いを詰めた瞬間、ヨアニスは流れるような動きで連続でバク天を行い一気に距離を取った。
「あぶない!!」
アレクシオスの声が観客席から響き渡る。
ヨアニスはバク天の三回転目で、身体をひねりながら高く跳躍した――次の瞬間。
腕以外の場所からすでに放たれていた一投目のナイフに続き、逆さまになった空中から三本のナイフが同時に放たれた。
それは、カテリーナの逃げ道を塞ぐ、完璧なタイミングだった。
小説を書くのが初めてです。
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