65. 少女対少年
第三試合、準決勝が始まります。
どうぞよろしくお願いいたします。
カテリーナは部屋で休みながら、二戦目の試合を思い返していた。
――ストレート勝ちではあったけど、ほんの少しでも相手の戦い方が違っていたら、負けていたかもしれない……。
ぎりぎりの勝利だったため、そう考えずにはいられなかった。
――そういえば一本目の時、かなり痛がっていたみたいだけれど、どこが痛かったのかしら?
そんな少しピントの外れた思考をしていたとき、次の試合準備の連絡が入った。
「準決勝かぁ。今度の相手はどんな人だろう。やっぱり大きな人なのかな?」
装備を整えながら自然と独り言が漏れるが、不思議と緊張はまったく無かった。
部屋を出て係員の誘導に従い、スタジアムのゲートへ抜ける。
すると、変わらぬ大歓声がカテリーナを迎えた。
「巨人殺しのお嬢様! かっこいいぞ!」
「あと二つで優勝だぞ!」
「聖女さま万歳!」
三度目にもなると、カテリーナも大歓声に手を振る余裕が出ていた。
第三回戦は準決勝になるため、勝てば決勝進出の大一番となる。
勝ち残った人数が少なくなり、別ブロックの試合もすでに終わっているため、今回は直接試合場へと進む。
すると、向こう側から歩いてくる小柄な少年の姿が目に入った。
身長はもしかするとカテリーナよりも低いかも知れない。しかも装備は軽装どころか、普通の私服のようだった。
――え!? 剣も持っていない!
困惑しながら近づくと、やはり腰にも背にも武器らしきものは見えず、私服姿の普通の少年にしか見えなかった。
驚きを隠せないまま相手を観察していると、司会者の大きな声が響き渡った。
「では、第二ブロック準決勝戦! まず青のコーナー──カリスティアヌーポリス出身、ヨアニス・イアニス殿!」
観客席からは「がんばれ、平民の星ーっ!」と熱い声援が飛んだ。
ヨアニスは大きく手を振ったあと、バク転を二回決めて逆立ちを行う。そして片手立ちから足でポーズを決め、観客を大いに沸かせるのだった。
「続きまして白のコーナー──ルクサリス侯爵家の長女、カテリーナ・ルクサリス殿!」
その直後、スタジアム中に大歓声が巻き起こった。
前の試合で鋼鉄の巨人が少女に倒されるという光景を目の当たりにしたことで、カテリーナの人気はさらに高まっていたのだった。
カテリーナも手を振って応えたが、対戦相手の戦い方が全く読めず、頭の中ではひたすら思考を巡らせていた。
「くそっ! なんでカテリーナの相手に、普通の騎士が当たらないんだ!」
アレクシオスは観客席で、彼女の不運を嘆いていた。
司会がアナウンスを始めると、設置された魔道具によりスタジアム中にその声が響き渡る。
「続きまして再度ルール説明です! 今大会では、投てきした武器の有効打は1ポイントとなり、それが三回に達したときに一本となります! また、ポイントは一本ごとにリセットされ引き継がれません」
カテリーナは思わず目を見開いた。投てき用の武器を相手にする訓練をしていなかったからだ。
――投てき? 武器はどこ?……あぁ、あのたくさん縫い付けられたポケットの中ね。
細いナイフのようなものを投げてくるのかしら。
相手への観察と司会の言葉から、カテリーナはその武器の正体を冷静に推察できていた。
一方、アレクシオスは少し動揺していた。
「初見で、投げナイフ使いと当たるなんて……。しかも、カテリーナの装備では相性が悪すぎる!」
彼はヨアニスの勝ち上がり方を見ていたため、その恐ろしさを知っていた。
「それが騎士の戦い方かよっ!」
観客席からはヤジも飛ぶ。
投げナイフでの戦い方は騎士の戦い方とは程遠く、逆に平民出身の者だからこそできる戦い方でもあった。
「それでは、お二人に意気込みを伺いましょう。まずはヨアニス選手から!」
その声かけと同時に、会場は静まり返っていく。
「どうぞよろしく。まあ、お祭りでもあるんだし、楽しくやろうよ。……いや、いたしましょうだったかな? 大貴族さん」
観客席がざわめき、応援と非難の声が入り混じる。
貴族に挑む平民を痛快に思う者もいれば、無礼と感じる者もいた。
「おおっと、ヨアニス選手、まさかのお祭り宣言! これにどう応えるのか? ではカテリーナ選手、どうぞ!」
司会は少し煽るような言葉を混ぜることで、準決勝を盛り上げようとするのだった。
「はい! 私もこのお祭りを楽しみたいと思います!」
「これは、カテリーナ選手、見事に返しました! さてさてどんな戦いが見られるのか、私も非常に楽しみです!」
その直後、スタジアムは大歓声に包まれた。
両者は礼を交わし、カテリーナは剣を構える。
しかしヨアニスは、手を頭の後ろで組んだままだった。
――何を仕掛けてくるのかしら?
カテリーナの次の相手は、普通の姿の少年だった。
警戒と緊張が走る中、大きな声が響き渡る。
「始め!」
審判の合図とともに、少女対少年の準決勝が幕を開けた。
小説を書くのが初めてです。
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どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m





