64. 小さな円
第二試合が決着します。
どうぞよろしくお願いいたします。
――キン、キン、キン!
カテリーナの小手を狙った攻撃が続いていた。
「我慢比べか……。ならば、守りに徹するまで!」
ニコポリテスは防御に集中し、カテリーナの予想外の動きに釣られて隙を作らぬよう、ただひたすら剣を受け続けていた。
「まずいな。防御に徹して全く動かない……。カテリーナは何かに気付いたようだが……」
アレクシオスがぽつりと呟く。
スタジアムの観客席では、無駄な攻撃を繰り返すカテリーナと、守り続けるニコポリテスの試合に、苛立ちが広がり始めていた。
「まだ、それを続けるのかよ!」
「でかい方も少しは攻撃しろ!」
「審判! 試合を動かせーっ!」
観客席の空気を感じ取り、審判もそろそろ範囲を狭めるべきかと迷い始めていた。
――あと、もう少しっ!
カテリーナの小手への攻撃が続く。
――キン、キン、カキン!
剣が小手を打つ音が、わずかに変わり始めた。
「ん? なんだ……?」
ニコポリテスもその変化に気付いたが、崩されぬよう守りに徹する意識が勝り、体勢を変えようとはしなかった。
――キン、カキン、カキン!
小手にぶつかる金属音が、明らかに変わり始めていた。
「こ、これはっ……!」
「もう少しっ!」
カテリーナの連撃がさらに速度を増す。
ニコポリテスは意図に気付き、剣を受ける角度を変えようとしたが、カテリーナはその先も読んでいた。
相手の動いた先も正確に捉え、鋭く突き続ける。
――カキン、カキン、ガキン!
「しまった!」
ひときわ大きな金属音が響いた直後、カテリーナの剣がニコポリテスの右肘部分を正確に突いた。
「ぐぅーっ!」
ニコポリテスは剣を落とし、右肘を押さえながら片膝をつき、頭を垂れた。
「一本!」
スタジアムでは、事情を飲み込めない観客が多く、歓声よりもどよめきの方が大きかった。
そのため、すぐに司会が説明に入った。
「観客席の皆さま! 今のルクサリス選手の一本が分からなかった方も多いと思いますので、解説させていただきます!」
観客席から「おおー!」という声が上がる。
「ルクサリス選手は、ニコポリテス選手の小手と腕の鎧のつなぎ目――リベット部分に打ち込みを続け、止め金具を壊し、空いた隙間に突きを入れて一本を取りました! これにより二本先取のカテリーナ・ルクサリス殿の勝利です!」
可憐な少女が鋼鉄の巨人を倒したということで、スタジアムは興奮の渦に包まれ、割れんばかりの歓声と拍手が響き渡った。
「……完敗だ。これほど速く、正確に突ける剣は見たことがない。まさか、この鎧にもこんな弱点があったとはな」
「以前、鎧の製造方法や着け方を本で読んだことがあるんです。肘のような可動部分は蛇腹で守られていますが、軸の部分は小さな円でできた金属なので、弱いと思ったんです」
「ふふ……知識でも完敗のようだ。お見事だ、カテリーナ・ルクサリス殿」
「ありがとうございます!」
観客の大歓声の中、ニコポリテスが騎士としての礼を取り、カテリーナと握手を交わす。
その瞬間、スタジアムは二人を称えるさらに大きな拍手と大歓声に包まれたのだった。
観客席のアレクシオスも立ち上がり、声を上げた!
「素晴らしい戦いだったよ、カテリーナ! …………愛しているよ!」
普段なら決して口に出せない言葉だった。
アレクシオスは、大歓声の中に隠れるように、自らの想いを吐露するのだった。
小説を書くのが初めてです。
どんな内容でもよいので、感想をいただけると執筆の励みにもなりますし、本当に嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m





