62. 鉄壁のドゥーカス
前回のタイトルと今回のタイトルを入れ替えております。
今回は新しいお話です。混乱させてしまい申し訳ございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
カテリーナはまず相手の剣の間合いを確かめるため、素早い動きで牽制する動きを見せた。
その瞬間だった。
――ビュゥッ!
カテリーナが咄嗟に頭を下げたすぐその上を、ニコポリテスの長剣が通り過ぎた。
カテリーナはすぐに距離を取り、ニコポリテスも再び剣と盾を構えなおす。
――危なかった!
兜も付けない軽装のカテリーナにとって、遠心力の乗った一振りは、大怪我どころか命を落としてもおかしくないほど危険なものだった。
その直後、ニコポリテスが静かな声で語りかける。
「……ルクサリス殿。今の剣を見たら分かるだろう。貴女の戦い方のスタイルでは、不利だし、あまりにも危険だ。今からでも、どうか辞退をお願いできないだろうか?」
もっともな提案だった。
しかもその声には威圧も嫌味もなく、ただ純粋に相手の身を案じる誠実さが伝わってくる言葉だった。
「ご心配いただき、ありがとうございます。私はむしろ、本気で戦って頂けることに嬉しさを感じております。どうか全力でお相手ください」
カテリーナは毅然と返答した。
その後、しばらく両者は沈黙したまま動かなかった。
最初に動いたのは、カテリーナだった。
――相手は重装備だから、そう簡単には動けないはず。スピードで揺さぶって隙を作り出す……!
カテリーナは長剣が届かない位置を保ちながら軽快に動き回り、相手の周囲を左回りに回る。
ニコポリテスは盾を構えたまま、その位置をほとんど変えずに、ただ構えの向きだけをカテリーナに合わせ続ける。
――防御を鉄壁にして、体力を温存する戦い方か……。どうやって攻略する?
カテリーナが距離を取りながら考え込んでいると、審判から鋭い声が飛んだ。
「君たちに警告しておく! そのまま消極的な試合を続けるなら、闘技場の円を狭めることになる!」
闘技場の下には、複数の円が描かれている。
お互いに距離を取ったまま試合が進まない場合には、審判の裁量で段階的にその円を狭められていく。
「まずい! カテリーナが不利になる!」
アレクシオスは客席から思わず身を乗り出し、焦りの声を上げた。
――まずいわ。距離が取れないと、スピードと刺突の両方が活かせなくなる……。仕掛けるしかない!
覚悟を決めたカテリーナは、突きの連撃を放ち始めた。
――キン、カン、キン、カン
ニコポリテスは大盾と全身鎧を活かし、カテリーナの凄まじい連撃を完璧に受け切る。
――当然だけど、小手打ちは認められないわね……!
審判がダメージを与えた攻撃と判断しない限り、一本にはならない。
鋼鉄のガントレットを装備したニコポリテスには、腕の表面を叩いてもほとんど効果がない。
――それでは、これはどう?
カテリーナは一瞬、後ろに下がる素振りを見せてから、一気に踏み込み、相手の顔を狙って剣を突き出した。
――キーンッ!
剣先は確かにヘルメットの下部を捉えていた。
しかしその部分は菱形に飛び出した形状をしており、ニコポリテスはわずかに頭を傾けることで、カテリーナの鋭い突きをうまく逸らしていた。
その直後、大剣がカテリーナをめがけて、斜めに振り下ろされる。
――ガキンッ!
剣は石畳にめり込み、石片が弾け飛んだ。
カテリーナは持ち前の反射神経により、紙一重で回避を成功させ、即座に反撃へ移ろうとしたが、ニコポリテスもすぐに盾を滑り込ませ、その隙を無くした。
ニコポリテスはパワーだけでなく、防御の技量も一級品だった。
――重騎士だから隙ができると思ったのに……まさに鉄壁だわ。
再び距離を取ると、ニコポリテスは同じ構えのまま、一歩も動かずに待ち構える。
しばらく膠着状態が続いたため、カテリーナがちらりと審判を見ると……手を上げかけている姿が見えた。
――これは賭けね……相手が大きいからこそできる、あの隙を突くしかない!
カテリーナは息を吸い、意を決して踏み込んだ。
小説を書くのが初めてです。
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