表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/46

5. 火水害屋敷破壊事件

 主人公が小さい頃にやらかした事件です。

 この事件をきっかけに、主人公の心が変わっていってしまいます。


 私は小さな頃、ある事件を起こしている。


 カリスティア王国では、貴族の家に生まれた子供は、体内の魔力が安定する3歳頃までに、ほぼ全員が魔力の測定を受ける。

 私にその頃の記憶はあまりないのだが、両親が私に魔法を使わせないようにしている事だけは、すぐに分かった。

 それは、他の貴族の子供たちとの会話からも明らかだった。


「……カテリーナは、何で魔法を使おうとしないの?」


「カテリーナちゃん、そのカップにお水の魔法を使っ……。いや、カテリーナちゃんは何もしなくていいのよ」


「マクリナ、カテリーナさんの前では魔法を使ったり、魔法の話をしてはダメよ」


「……俺は知ってるぞ。お前には魔力がほとんどないことを。やーい、やーい、オド無しー!!」


 私が傷つく度に、母は私を抱きしめ、優しい口調で話してくれた。

「カテリーナ、あなたは今は魔法を使わなくても良いの。あなたには、あなたにしかできない、大切な役目がきっとあるはずだから」


 母はいつも私に優しかった。

 その美しく優しい眼差しは、私の記憶にも鮮明に残り続けている。

 皆と違って魔法が使えなくても、母がいるだけで、私は満足だった。


 しかし、私が3歳の頃、母がいなくなった。

 私は成長するにつれ、今度は魔法というものに、強い関心を抱くようになった。


「危ないから」

「身体に良くないから」

「あなたには向いていないから」


 持っている魔力オドを使い過ぎれば、極度の疲労状態になるし、さらにそれを過ぎて使えば、気を失ったり、生命力そのものを削ってしまうといわれている。

 そのため、魔法を禁じられていた私だったが、それでも魔法を使ってみたいという思いだけは、日に日に強くなっていった。


 そして、私は8歳の誕生日を迎えた日、誰にも気付かれないように皆が寝静まったあと、気を失っても良いように、自分の部屋で着火の魔法を試みた。

 その結果、やはり気を失ってしまったのだが、目が覚めると、そこには衝撃の光景が広がっていた。


「えっ?」


 兄が私を抱きかかえながら、屋敷の半分がごうごうと燃え盛っているているのが見えたのだ。

 周りを見渡すと、義妹は義弟を抱きかかえている義母のもとで泣きじゃくり、使用人たちは、火事での対応で、疲れきった顔をしていた。

 私の目覚めに気づくと、兄はすぐさま声を上げた。


「おお、カテリーナが目を覚ましたっ! みんな、聞いてくれ。カテリーナの部屋から火が出たにも関わらず、やけど一つしていない。これはまさに、カテリーナが神々の寵愛と加護に溢れている証だぞ!」


 そのときの使用人たちの唖然あぜんとした表情は、今でもはっきりと目に焼き付いている。


 そして火事から3ヶ月後、大失敗から学んだ私は、もう同じ失敗を繰り返してはならないと、新たな決意をしたのだった。


――火がいけなかったんだ! 水なら屋敷が燃える事は無いから、水の魔法を試せば良かったんだ!


 館は火事により修復中だったため、残った反対側の3階に、私の新しい部屋があった。

 その部屋で同じく皆が寝静まったあと、今度は水を出す魔法を試したのだった。

 その結果、やはり気を失ってしまったのだが、目を覚ますと、以前と同じような景色がそこにはあった。


「はっ?」


「カテリーナが目を覚ましたぞっ! 皆、聞いてくれ。カテリーナの部屋からは止まることの無い水が溢れ続けていた! これは、神の加護を得た神聖魔法に他ならない! やはりカテリーナは、神々の寵愛を受けているんだ!」


 恐らく当時の使用人たちは、「いったいこの人は何を言っているんだ?」と思った事だろう。

 完全に問題点がズレているし、何よりも、私をしかるのではなく、めたのだから。


「ああそうだ! これは屋敷を建て替えよ、という神々の啓示かも知れないなっ!」


 再度、皆が唖然あぜんとした顔をしていたのを覚えている。

 こうして、火災と水害という、一見両立し得ないような災害に遇った私たちの屋敷は、新たな屋敷へと建て替えられることになった。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 新しい屋敷が完成し、自分の部屋に入居する際、メイド長が鬼のような形相で発した言葉が、今でも私の心に突き刺さっている。


「お嬢さま。平民の私ですら魔力オドが4程度はございます。お嬢さまには残念ながら魔力オドがほとんど無く、魔法の才能は全くございません。この新しい屋敷では、絶対に絶対に絶対に、魔法だけは使わないようにしてくださいねっ!」


――ショックだった。

 私の興味があること、やってみたいことが全て否定されてしまったのだ。


 それからの私は、何をやってもダメなんだ。才能が無いから、何をやっても無駄なんだと、思うようになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ