4. ルクサリス家の落ちこぼれ
私は魔神大戦で活躍した先祖を持つ、名家ルクサリス侯爵家の娘として生まれた。
しかし、魔力をほとんど持っていなかったため、私は「高貴なる血統の責務」を果たすことができない。
そのため、カリスティア王国の貴族の間では、私は完全に落ちこぼれとして評価されている。
周囲からは、「ルクサリス家の落ちこぼれ」という、不名誉なあだ名で呼ばれることもあった。
立派な母や兄と違い、全く異なる落ちこぼれの私。
体内の魔力量が最重視されるカリスティア王国の貴族社会において、遺伝的に優れた子供を作れないと分かっている私を、娶りたいと思う奇特な人は、ほぼいないだろう。
そのため、間もなく15歳になる私のもとに、貴族からの縁談話は皆無だった。
義妹たちは、口癖のようにその点を突いてくる。
「魔法を使えない貴族なんて、恥でしかありませんわ」
「そうだ! ご先祖様に申し訳ないと思わないのか!」
義妹たちからの辛辣な言葉を受け、しばしの黙考のあと、カテリーナは口を開いた。
「そうですね、私もそう思っております。そのために、私にできる事を、精一杯やっていくつもりです。」
「逆にそれが迷惑だと言っているのです! 館を破壊し、お義兄さまの貴重な時間を奪っているあなたに、いったい何が出来るというのですか?」
(あー、そういうことね・・・)
妹たちが、事あるごとに絡んでくる本当の理由は、ここにあるのだ。
私の毎日の祈りに対してや、私が落ちこぼれていることではなく、私が兄に迷惑をかけていることを非難しているのだ。
(・・・本当は、私も少しは遠慮して欲しいのよ)
そう言われて、兄との数々の思い出が、カテリーナの頭をよぎる。
「帰ってきたぞ、カテリーナ! どこにいる?」
「こちらです。お兄さま、お帰りなさいまし」
「おお、カテリーナ、実は今回の魔物討伐で、このような事があったんだ・・・」
「カテリーナ、ただいま! ・・・いつ見てもお前は可愛いいなっ♡」
「カテリーナ、カテリーナ、お前の美しく神々しい瞳を見るために、帰ってきたよ!」
「カテリーナ、いま帰ったぞ! あぁ、3日もお前の顔を見れなかったなんて、これほど不幸なことはない!」
(ギギギッ!)
このようなやりとりの度に、義妹と義弟の顔が歪んでいくのが見える。
(この二人の目には、私がお兄さまを誑かしているように映っているんだろうな・・・)
義妹と義弟は、まるでカテリーナを呪い殺そうとしてるのかと錯覚させるほど、物凄い目つきで睨みつけていた。
(でも、そうではないんだよね・・・)
実は兄の方から、やたらと私に構ってくるのだ。
異常なくらい優しいというか、過保護というか・・・
・・・それも、私が小さい頃にやらかした事が、一番の原因なのだろう。