24. 褒められて伸びる
主人公に対する教育の違いが、結果の違いも生み出しています。
生徒を笑うのではなく、生徒と共に笑える教育者が増えるとよいですね。
「2つ目はね、柔軟性なんだ」
「え、身体の柔らかさのことですか?」
「そう。身体の柔らかさだよ。柔軟性があると、この突きの戦い方がとても有利になるんだ」
「どのようにでしょうか?」
「カテリーナが目指す突きでの戦い方は、敵の攻撃は受けずに躱すのが基本なんだ。その際に柔軟性があると、カウンターで相手を倒しやすくなるんだよ」
「詳しく教えてください!」
アレクシオスは、ゆっくりと剣を振り下ろしたときに、カテリーナに躱す動きを教えながら、ここぞというタイミングで剣を出すように指示した。
「そうだ! そこで体幹を崩さずに、相手の急所を突くんだ!」
――シュッ!
アレクシオスの喉元に、カテリーナの剣先が止まった。
「素晴らしいよ、カテリーナ! これで君の勝ちだ!」
「お、お兄さま……。私、何か掴んだような気がします!」
「あとは相手のさまざまな攻撃に対応できる、こちらのバリエーションを増やしていこう! それを身体に覚え込ませていくんだ」
実技の対戦に特化した、相手を崩していく攻撃の組み立て方や、相手の攻撃に対するカウンター攻撃など、カテリーナの剣技は日に日に上達していった。
特にカテリーナの鍛えた体幹と柔軟性から繰り出される攻撃は、とても対応しづらいものになっていた。
また、相手の攻撃をカテリーナが躱すと、相手は予想外の態勢から反撃を受けてしまうため、迂闊に攻撃ができない状態にまでなっていた。
――タンッ!
カテリーナは、突きの連撃でアレクシオスに剣を振らせなくさせ、ほんの少しバランスが崩れた隙を見逃さず、瞬時に間合いを詰めて剣を伸ばし、首元で剣先を止めた。
「素晴らしい攻撃の組み立て方だったよ! いろいろな崩し方を考えて試してみて!」
――シュッ!
カテリーナは、アレクシオスの剣を仰け反るように躱しつつ、倒れることなく腕の関節部分で剣先を止める。
「いいね! 躱すのと同時のカウンター攻撃! このようなを攻撃をいつでも出せるようにしていこう!」
――ピタッ!
カテリーナが踏み込んだ瞬間、アレクシオスも合わせるように横から剣を振ったが、瞬時にカテリーナはそのまま股を前後に開ききって地面に足をつけ、下から突き上げる剣で、アレクシオスの胴の急所に剣先を当てた。
「いい! 凄くいい! この低い姿勢から剣が出てくるなんて、普通の相手は予想できないよ。おそらく呆然とするだろうね!」
教育者と教育方法の違いが、明らかに結果の違いを生み出していた。
義母カリスタの淑女教育は、厳しさのみで、まさに圧力そのものだった。
カテリーナは常に萎縮し、普通であれば、しないはずの失敗を繰り返していた。
逆に、アレクシオスの教育は、厳しさや大変さはあったものの、カテリーナの夢の実現のため、目標や基準が明確で、結果を出せば必ず褒めてくれた。
そのため、褒められるたびにカテリーナは嬉しくなり、自信もついてきて、ますます熱心に練習に打ち込むようになった。
そして、カテリーナ自身も、自らの剣に対する手ごたえを感じ始めていた。