表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/45

2. 魔神大戦

今回は、魔法が発展し、重視されるようになったきっかけの事件です。

どうぞよろしくお願いいたします。

 なぜ、義弟のキリロスが「ご先祖様に申し訳ないと思わないのか!」とまで言い放ったのか。


――それは約250年前に遡る。


 かつて、人々が滅亡の危機にさらされた、魔族との大戦争があった。

 ある人間の男が、魔族を使役し、魔族の力で自らの欲望を果たそうと思いついたのだ。

 その男は、召喚魔法と使役魔法を巧みに使い、弱くて小さな魔物を使役していた。


 最初は、他人への嫌がらせや、盗みを働く程度の悪事だった。

 その男は、安全に、誰にも気付かれず、自らの能力以上の事を行わないように、慎重に気を配って行っていた。

 しかし、悪事を重ね、それが上手くいく度に、少しずつ気は緩んでいく。


 そのようなとき、闇に属する女神に目を付けられてしまった。

「……この男、我が目的に相応しい!」


 その女神は、少しずつその男の心に働きかけていった。

「お前はこの程度で満足してよいのか」

「お前にはそれが出来る」

「お前にこそ、その力が相応しい」


 男は自尊心をくすぐられ、徐々に野心を膨らませていった。

「より、強い力で!」

「より、支配できる力で!」

「より、何もかも手に入る力で!」


 男の心は少しずつ変化していき、当初の安全・確実な考え方から、無謀な挑戦へと変わっていった。

 そしてついにある日、その男は、自らが制御できる力以上の魔族を、呼び出してしまった。

 呼び出された魔族は一介の魔族などではなく、かつて神々に封じられていた、高位の魔神だった。


「あぁ……あぁぁ…………」


 その魔神は非常に大きく、恐ろしい姿をしており、強大な魔力を帯びていることは、一目で明らかだった。


 男が必死で行い続けた使役魔法は、魔神に難なく打ち破られた。

 男は心から後悔したが、完全に手遅れだった。

 魔神はその男をひょいとつまむと、顔のそばに運んで、語りかけた。


「……貴様が、私の封印を解いたのか?」


 それは人間の言葉であったが、身体の芯から恐怖を感じさせるような、異質な声だった。


「は、はひぃ!」

「……礼を言おう。しかし、貴様は下賤な身も弁えずに、魔神たる我を使役しようとしたということだな?」

「い、命だけは、命だけはお助け下さい」


 魔神は表情を変えずに答えた。


「……よかろう。命だけは助けよう。お前を死なない姿に変え、我の下僕として、一生仕えさせてやろう」

「!!!」

「死にたくても死なせないぞ。使役の罪は、使役にて報いを受け続けるのだ」


 男は醜い人形の姿に変えられてしまった。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 



 その後、復活した魔神は、多くの配下を呼び寄せていった。

 魔神はかつての神々との戦いから、学習をしていた。

 自らを過信せず、より確実に勝利を収める。

 そのためには、誰にも気付かれぬように魔力を抑え、まずは配下を増やしていく。

 そして、その質と量が整ったときに、地上に蔓延っている憎らしい神々の僕たる人間どもを一掃する。


「ある日突然、人間どもはその報いを受けるのだ!」


 魔神が復活してからも、しばらくは平穏な日々は続いていた。

 しかし、人々は何の前触れもなく、大挙して押し寄せた魔族から、奇襲を受けることになった。

 同じ日に、多くの国や街が一斉に襲撃を受けた。

 その日は、それまでで最も多くの人間が殺された日となった。


 それは後に「災厄の日」と呼ばれた。


 おびただしい数の人々が殺されていき、生き残った人たちも、ただ絶望するしか無かった。

 毎日が死の連続で、人間の生存圏が脅かされていく中、ついに強靭な魔族たちに対抗できる人々が現れた。


 彼らは、希望ト・フォース()灯火ティス・エルピドスと呼ばれた。

 彼らは神々の声に耳を傾け、神々の力を借り、神々から新たな魔法を授けられた人々だった。


 彼らは、魔法を駆使して反撃し、魔族たちを一人また一人と倒していった。

 そして、ついに魔神をたおすことに成功した。


 人々は、再び自分たちの世界を取り戻したのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ