15. 進路を考える
(そうよ文官よ! 文官のお仕事よ! お父さまがそうだったじゃない!)
カテリーナの父、ネフィリオスは、騎士としての実力はイマイチだったが、文官としての仕事ぶりは評価されており、それもあって、母、アナスタシアの目に留まったのだ。
(お父さまは騎士の資格を得て、最初は王家の家臣になられたのよね。
文官になるためには、まずは、騎士や魔導師の資格が必要だったはず・・・)
カリスティア王国では、上級官吏になるためには、爵位が必要不可欠になっていた。
なぜなら、職務上とはいえ、貴族に命令できる者は、同じ貴族でなければならないという不文律があったためだ。
そのために、騎士や魔導師の資格を得た称号として、勲爵士というものがある。
騎士か魔導師として叙任されれば、勲爵士という爵位が与えられ、最下級ではあるものの、貴族の一員となる。
つまり、平民でも騎士や魔導師の資格さえ取れれば、一代限りではあるものの、爵位を得て上級官吏になる資格が得られるのだ。
また、貴族出身で爵位を持っている者でも、男性は騎士か魔導師として叙任されないと、カリスティア王国内では恥とされていた。
ただ、爵位を受け継いだだけでは、他人を指揮する資格がなく、一人前の成人としては、認められなかったのである。
そのために、勲爵士の称号は、文官を目指す者にとっても、事実上、必要不可欠なものとなっていた。
カテリーナは自宅の図書室に行き、法律や規定について書かれている本や書類を集めた。
そして、これらをテーブルに広げ、本のページをめくり始めた。
「えーと・・・、勲爵士に叙任されるためには・・・・・」
「3種類の方法があるみたいね。1つ目は王による叙任。功績のあった方に、王様から特別に叙任される場合があるみたい。まず、これは除外ね」
「次は・・・見習い騎士ね。騎士や魔導師の弟子となり、2年程度住み込みで仕えながら、騎士や魔導師の何たるかを学ぶ。そして、その推挙により、王から叙任を受ける・・・か」
「うわぁ〜これは、正直大変そう。また、古風な方法だから、今は弟子入りの方法を選ぶ人は少ないみたい・・・」
「最後は・・・学校ね。騎士養成学校、魔導師養成学校、または、国内の大学のいずれかを卒業し、騎士または魔導師としての力量を認められた者・・・・・これね!」
「・・・でも、どの学校が良いのかしら?」
カテリーナは本棚に向かい、今度はそれぞれの学校について記載されている本などを探し、再び調べ始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二時間程過ぎ、カテリーナは進路について、さまざまな事を知ることができた。
・養成学校と大学では、教える内容にかなりの違いがあり、もし文官を目指すなら、大学へ進んだ方が絶対に良いということ。
・ただし大学は3つしかなく、定員もあり、大学ごとに異なる選抜試験があるということ。
・その中でも、カリスティア王立宮廷大学は、騎士実技試験、魔術実技試験のほか、筆記試験の科目が多く、神学、騎士学、魔法学、言語学、数学、地理学、歴史学の中から5科目を選択して受けられるということ。
「・・・恐らく私は、魔術実技試験は0点ね。騎士実技試験も厳しいかも。あとは、筆記試験で点数を稼ぐしかないわね。
そうなると、ケイアポリス大学とアレクセイア大学は、筆記試験の科目が2科目しかないから、挽回が難しいわ・・・」
「いや、それよりも・・・・・私も、お母さま、お父さま、お兄さまが学んできた大学に行って、いろいろことを学んでみたい!」
カテリーナは、本を通じて生まれた知識欲や好奇心から、純粋に「学びたい」という気持ちが、心の中に溢れてくるのを感じていた。
(明日、お兄様が帰って来られるから、早速、相談してみましょう!)
カテリーナは、家を出ると決断したその日の内に、新たな目標に対し、すでにワクワクした気持ちの方が上回るようになっていた。
小説を書くのが初めてです。
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m(_ _)m