14. 目標が人を創る
「魔法を使えない貴族なんて、恥でしかありませんわ」
「そうだ! ご先祖様に申し訳ないと思わないのか!」
義妹たちの言葉が引き金となり、私はこの家を出ていくことを決めた。
(でも、感情に囚われて、家を出ることだけを優先させてはダメ。
本の知識によれば、まずは、自分自身の分析からよね・・・)
たくさんの本を読んだことで、カテリーナの中に、考える力が身に付き始めていた。
(まずは、自分の未来を、どのようにしたいかを、ハッキリさせることからね。
お義母さまに言われるまま、他人に流されるまま生きていくのだけはダメだわ)
「私はこうなりたい」と思えることや、「私が本当に幸せだと感じるもの」を見つけることが、大切だということを、カテリーナは学んでいた。
(それではまず、お義母さまのいう、上流貴族との婚姻の未来からね。
私は魔力をほぼ持っていないから、有力な貴族の正妻になることは、ほぼ無理でしょうね。
良くて、第二、第三夫人というところかしら・・・・・・・あっ!)
「・・・・・・アハハハハ!!!」
カテリーナは、思わず声に出して笑ってしまった。
(・・・バカね私は。何で上流貴族との結婚というものに囚われていたのかしら。
そもそも、そんな結婚なんて、私は全くしたくなかったわ!)
「こうあるべき!」
「これこそが幸せ!」
カテリーナは、幸せの価値観が、他人によって決められていたことに、ようやく気付いたのだ。
そしてそれは、義母の呪縛を緩めていくものだった。
(それでは、結婚をしないのであれば、将来何の仕事をするのかを決めないと。
まずは、神殿務めについて。これも、魔力が無いから、神官や巫女の役目は果たせないわね。
まあ、下働きならできるけど、その仕事をしたいとも思わないかな・・・)
最初に読んだ本の影響により、カテリーナは女神に対する敬虔な信仰心を持っていた。
そのため、毎日の祈祷も欠かしてはいなかった。
しかし同時に、現実的な側面として、神官や巫女の仕事には、魔力が必要になるということも理解していた。
(それでは、何かの女性向けの技術を身につける仕事ね。
うーん、侯爵家の娘が職人の道を目指すとなると、ルクサリス家、つまりお兄様の面目をつぶしてしまうことになりそうだわ。
また、お義母さまはもちろん、お父さままで反対するでしょうね。
それに、私自身が、今のところ職人さんのお仕事には興味がないかも・・・)
(次は、王家の侍女とかかしら。
侯爵家の娘だから資格はあるのだけれど、補助魔法を使ったり、王子さまや王女さまの魔法教育も含まれるから、こちらも難しいかも・・・)
「・・・うーん」
なかなか、自分の思い描く未来が見つからず、悩み続けるカテリーナだった。
(あらためて考えると、アナスタシアお母さまは、本当に凄いわ!
能力も凄かったけれど、結婚相手も、お母さま自身で決めたのだから。
そんなお母さまに選ばれたお父さまも、意外と凄いのかしら・・・)
「あっ!!!」
カテリーナは、ごく身近に、自分の指標となる人がいたことに気が付いた。
(なんで、気が付かなかったのだろう!
きっと、男性や女性という、固定観念に囚われすぎていたんだわ。
アナスタシアお母さまだって、最初は騎士だったじゃない!
私が目指すべきで、私がやりたいことでもある、その仕事は・・・)
自分で決めた目標が、新しいカテリーナを創り始めた。
小説を書くのが初めてです。
感想をいただけると、本当にありがたいです。
m(_ _)m